第5話 相性や雰囲気は大切①

 持ち運びしやすい小さめのショルダーバッグに収納魔法を付与して、結構いっぱい入る収納バッグを作った。マジックバッグってやつかな。

 そこに昨日作成した体力回復ポーションのパンケーキ(バター乗せ)味をとりあえず十本入れて街へと来た。

 ポーションはほぼ水分だし、小さいとはいえ一本ずつ瓶に入っているから、普通に持ってきたらかさばるし重い。収納魔法が出来て助かった。自慢じゃないけど、僕は体力は元々あまりない。うん、ほんと自慢じゃないね。


 ちなみに監視の人はいるのかいないのかいつも謎だけど、今日は普通に家の外にいた。騎士の格好をしたおじいちゃんだ。

 たぶんだけど、僕が監視の人いないなあと思っている時でも、どこかからは見られているのかなとは思う。でも気配を消しているのか、気になるほどではない。

 今日のおじいちゃん騎士さんが担当してくれるのはこれで三回目かな。

 ちゃんと可視化することで、監視いるよ〜っていうアピールも兼ねているのかもしれない。けどおじいちゃん騎士さん自体はとても穏やかなごく普通のおじいちゃんなので、今やにこにことお互いに手を振り合うほどである。

 平和だなあ。


 ともかく、今日街へと繰り出しているのはポーションを売っているお店に僕の作ったポーションを買い取ってもらう為だ。

 出来るだけ一ヶ所ですべて買い取ってもらいたいし、なんなら長くお付き合いしてほしいから、何店舗か巡って歩いて最も雰囲気の良さそうなところに入る。


「こんにちは」

 そのお店は僕の家のようにこぢんまりしていて、外は年季が入っていてそこそこボロボロだった。けれど掃除は丁寧にされているように見えて、中に入ってみた。

「こんにちは」

 すると、若い女の子の声で挨拶が返ってきた。鈴の音が鳴るかのように可憐な、という喩えがまさにぴったりでは?というくらいの、凛としながらも可愛らしい声だった。

 中も綺麗に清掃されていて、物もきちんと整頓されている。

 うん、古き良きといった感じだ。

 従業員は先ほど挨拶を返してくれた女の子一人だけのようだ。

 その女の子は、流石異世界、と言わんばかりの銀色……白金かな?そういう色合いの髪をしていて、目を惹かれる。髪の手入れはあまり気を遣っているわけではないらしく、二つの三つ編みにした髪はぴょんぴょんとところどころはねていて、ぼさぼさ感がなんだか可愛い。

 瓶底みたいな分厚い眼鏡をかけて、本を読んでいる。

 営業する気ゼロ。素敵だなあ。


 狭い店内をゆっくり散策しても、声を掛けてくることもなければ、訝しげな視線を向けてくることもまったくなく、彼女は読書に夢中のようだった。

 なので、思う存分見て回り、鑑定をしながら気になる薬草や品質の良い薬草を買って帰ろうと手に取る。

 どの薬草も丁寧に管理されていて、極端に品質の悪いものは置いていないし、薬草の入手難度や品質に応じて適正に価格がつけられている。

 うん、良いなこのお店。

 薬草を買うのも、作ったポーションを売るのも、ここが良い。


「すみません」

 店内を充分に見て回り満足したので、薬草の購入とポーションの買い取りをお願いしようと、未だ本に夢中な彼女に声を掛ける。

「キリの良いところまで待って」

「あ、はい」




 ——三十分掛かった。

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