第4話 そうだ、ポーションを作ろう④
「ねえ愛し子さま〜」
「ん?あ、そうだ、壱弦でいいよ。なんか仰々しいし」
「イヅルー」
「わーいイヅル!」
「もっとあまいのたべたーい!」
「あまいのー」
「まだ足りんのです」
「もっともっとー」
精霊さんたちはテンション高く、僕のまわりをくるくるパタパタ飛びながら話す。
完成したのは謎ポーションだったけど、喜んでもらえたのは嬉しい。
「甘いもの?うーん、でも家に砂糖とかまだないしなあ。買いに……」
「さっきみたいにつくってー」
「ポーションに念じるー」
「これあげる!」
「これでつくってー」
そう言って精霊さんが差し出したのは、薬草だった。
リクマ草
品質 B
魔力回復ポーションによく使われる
山奥に自生しているがすぐに品質が劣化する為、品質の良いものは珍しい
そのまま食べても僅かに魔力は回復する
少し甘く、魔力を注いで煮詰めてもその甘味は損なわれない
「あまいの希望です!」
「あまいのたのむよー」
「ちょっといいやつだよ!」
「そうだね、品質Bだ……」
お店ではリクマ草はD、E、F品質のものしか取り扱いはなかったから、Eの品質のものを買ってきていた。
折角貰ったものだし、まずはこの品質Bのもので精霊さんの希望どおりに作ってみよう。なんとなくだけど、品質の良いポーションの方が味の仕上がりも良さそうじゃないかな。勘だけど。
「いちごのショートケーキくらいいけるかな?」
「ほう!」
「いちごの!」
「ショートケーキ!」
「なんだそれは」
「はやくつくってー」
「所望」
「はよはよ」
「たのしみ」
どうやら精霊さんはそれで良いらしいので、いちごのショートケーキのことを考えながらポーション作りを開始する。
「いちごのショートケーキは、ふかふかのスポンジの間に生クリームといちごが入っていて、まわりや上も綺麗に生クリームで飾り付けられてるおいしいケーキなんだ」
「ほうほう!」
「なんと」
「それでそれで?」
「一番上に乗っているいちごを最初に食べるか最後に食べるか、それとも真ん中で食べるのか……」
「なんと」
「なやましい」
「さいしょがいい」
「さいごがいーい」
「実になやみどころである」
「まあ、人それぞれの好みなんだよね」
いちごのショートケーキについて説明している間に、あっさりポーションは完成した。出来上がったポーションをこすと、待ちきれないらしい妖精さんはいそいそと魔法でポーションの粗熱を取った。
「はあ」
「ほうじゅんな香り」
「あまやかな香り」
「どきどきします」
香りは完全に、いちごのショートケーキだった。
中身は……
魔力回復ポーション
品質 B
だいぶ魔力が回復するポーション
いちごのショートケーキ味(いちごのタイミングは任意)
……僕はポーションさんの気遣いにびっくりだよ。
器に移して試飲すると、やっぱりその通りの味で、精霊さんたちも大絶賛だった。
「イヅル、これびんに入れてもらってもいーい?」
「せいれいおうさまにもあげたいの」
「また薬草もってくるからー」
「せ、精霊王様に……あげるのか……。うん、とりあえず瓶に詰めるから待ってね。魔力ポーションの方は材料の薬草を貰ってるし、全部持っていっていいよ」
「いいの?」
「ありがとうー」
「こんどお礼する」
「お礼の薬草もってくる!」
精霊さんはいっぱい持って帰れることがよほど嬉しいのか、ぴょんぴょん跳ねまわるように飛んでいて可愛らしい。
「ありがとう。でも薬草は買えるし、そんなにいっぱいはいらないからね」
お礼が過剰になりそうな予感がちょっとして、先手を打っておく。いらない、って言ったらかえってすごいものを持ってきそうな気もしたし。
ちなみに精霊さんに物理的な重さみたいなのは関係ないみたいで、本当大量のポーションを軽々持って帰った。ものすごく力持ち。
「はあ……」
とりあえずポーションは作れた。作れたけど、これは売れるんだろうか。まあおいしいし、自分でも飲むけど。
なんというか、思っていたポーションとは少し違う。カ○リーメイトみたいだなあ。
今日は疲れたから、体力ポーションを街に持って行くのは明日にしよう。
そんなこんなでばたばたしながら、僕の異世界ポーション作り生活一日目は、スローライフとは言いがたい感じで終わった。
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