第3話 そうだ、ポーションを作ろう③

 リビング備え付けキッチンで軽く食事を作って食べた後、作業部屋に戻ってきたら、なぜか騒がしい。

 この家には僕しかいないはずなのに、ドアの向こう、作業部屋の中から声がする。

 とりあえず警戒しながら、ドアを開けてみる。

 ……と、こした後、そのまま冷ましていたポーションの辺りに何かが群がっている。

 こう、手のひらサイズの二頭身の人間?に羽根が生えているみたいな……。それがざっくり十人、十匹?くらいいる。

「ええと、夢かな」

 いや、でもここ異世界だった。こういう生物もいるのか。

 僕が呟くと、十人全員、ばっと一斉にこちらを向いた。怖い。


「愛し子さま!」

「愛し子さまだ!」

「よい香りがするのです」

「かぐわしい香り」

「やばいのです」

「たべたい」

「たべたーい!」


 わらわらと寄ってきて、口々にそう話す。

「君たちは、精霊さん?」


「そうなのです」

「そうなのー」

「ですです」

「たべたーい」


 どうやら精霊らしい。あと、よく見ると個体差があるようだ。大きさこそみんな同じくらいだが、顔立ちや色合いが違ったりする。大体は似た感じだけど。

 よくわからないけど、固有スキルに『精霊の愛し子』っていうのがあるのは確かだから、まあ、こうなっているんだろうなあ。

「このポーションが飲みたいの?」

 一応、確認してみる。


「たべたい」

「たべたーい!」

「よろしいの?よろしいの?」

「お腹ぺこぺこさんなの」

「良き香りです」

「たべたいよー」


 どうやらそうらしい。ただ、どう見てもポーションは飲み物だけど、精霊と人間では感覚が違うのだろう。

「これは体力回復ポーションなんだけど、まだ味見も鑑定もしていないんだ。ちょっと待ってね」

 大丈夫ではと思うけど、体に入れるものだ。きちんと鑑定しておかないと、良くない。

 というわけでよし、鑑定鑑定。




体力回復ポーション

品質 C

普通に体力が回復するポーション

パンケーキ(バター乗せ)味




「…………ん?」

 パンケーキ(バター乗せ)味……?

 ちょっとだけ器に入れて、試飲してみる。

 ポーションを飲んだはずなのに、ふかっふかのパンケーキだった。しかもちゃんと、ほのかにバターも香る。

 どう見ても飲み物のはずなのに、本当にパンケーキを食べているかのようだった。ちなみに満腹感も、パンケーキを食べている時くらいのような感じもする。というか食感もおかしいと思う。最早このふかふか感は味の問題ではない気がしてならない。

 もう一口飲んでみても、同じだった。

「…………。え、と、……どうぞ、精霊さん」

 困惑はしているけど、とりあえず僕が試飲している間も目をキラキラさせてたべたいたべたいと言っていたし、精霊さんそれぞれに取り分けてあげる。


「うーん、ほのかにあまーい!」

「おいしい!」

「ふっかふか〜」

「うまうま」

「まさにしこうのあじ……!」


「……そうだね。ふっかふかだあ……」

 たぶんこれ、普通のポーションじゃないね。味はともかく、食感もおかしいしね。

 でもおいしい。そしてメレンゲふかふか仕上がりである。


 ちなみに同じ材料でもう一回作ってみたら、同じパンケーキ(バター乗せ)味が出来た。

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