第2話 そうだ、ポーションを作ろう②
辺境の街は、結構大きな街だった。流石は国境を守る砦。
身分証もなく、隣国から来た怪しさ満点の僕だったけど、当面の監視付きで街に入ることは許された。懐が大きいなあ。それに、街の中心部からだいぶ外れた国境とは反対側のところに、ボロボロだったけど一軒家を安く購入出来た。街外れだろうがボロボロだろうが、一人で住める家があることは良いことだ。
それに外はあまり表立っては直せないから少し綺麗に掃除するくらいだけど、中は魔法で自由にやりたい放題出来る。実に快適。
流石、全魔法∞はその表記どおり、大体のことは思ったまま出来た。
お陰で一週間もすれば、家の中は非の打ち所がない仕上がりである。
こぢんまりとした家だけど、リビングキッチンに寝室、トイレ、浴室、あとはポーションを作る為の作業部屋。ちなみにまだ手は付けていないけど庭もある。
最高かな。
お金が貯まったらちょっと良いベッドにしたり、本棚を作って本を買ったりとまだやりたいことは色々あるけど、まずは。
「ポーションを作ろう」
そう、ついに。
騎士さんから貰ったお金は、生活環境を整えてほぼ底をついた。というか、安価とは言え一軒家を買えるくらいお金をくれた騎士さんにはもう本当感謝しかない。
そしてこれから食べるご飯代や生活費は、自分で稼がねばだ。
ポーションの作り方は、しっかり聞いてある。錬金術∞だし、たぶんいけるだろう。
なんといっても、薬草を魔力を注ぎながら煮詰めて、こして、完成だ。
お手軽三分クッキングすぎる。
とはいえ、誰にでも作れるものじゃない。
薬草の種類や質で効能や効果も変動するし、注ぐ魔力の量や質によってもやはり効果は変わる。僕みたいにおかしい魔力量の人はそういないから、一人が一回に作れる数には限度があるのだ。
「えーと、まずは体力ポーションから」
本当は自分で鑑定しながら自生する薬草を採取した方が質の良いものが作れるだろうけど、めんどくさいし、まずはお試しだ。街で買った薬草で作ってみる。
体力回復ポーションの作成で使う薬草は色々あるが、最も安価で一般的なものはこれだ。
あ、ちなみに心の中で「鑑定!」って思うだけで、鑑定は出来る。無詠唱∞だからだろう。
ラチカ草
品質 D
体力回復ポーションによく使われる薬草
街道や家の周りにもよく自生している為、丈夫で安価
そのまま食べても僅かに体力は回復するが、とても苦い
魔力を注いで加熱することで、少しまろやかになる
「まずはこのラチカ草をよく洗って、一度乾燥させる」
魔法で洗浄した後、からっからに乾燥させる。
本来なら乾燥には日数が掛かったり、専用の器具が必要だが、流石全魔法∞だ。ありがたいことに、すぐに終わる。
ちなみに生のまま煮詰めてもポーションは出来るようだ。けど一度乾燥させた方が成分がより抽出される。干物と一緒だね。
「で、煮詰めると」
魔法で出した水にラチカ草を入れて、火をかけながら魔力を注ぐ。
どのくらい注げばいいのか謎だけど、魔力は10000あるからあまり気にせず適当にやってみる。
しかしこのラチカ草。少しまろやかにって、どのくらいだろう。魔力を注げば注ぐほど甘くなったりするんだろうか。
自分が飲む時にも苦いポーションは嫌だし、おいしい方がいい。
そうだなあ……甘くまではならなくても、せめてパンケーキくらいには。
香ばしい焼き色のついたふかふかのパンケーキ。もちろん、メレンゲを立ててふわっふわに焼き上げたやつだ。僕はその上にバターを乗せて食べるのが好きだ。
パンケーキはホットケーキとは違ってそんなに甘くはなく、バターのまろやかな味わいがふかふかのパンケーキに浸透して……
ぐうう。
鳴ったのは僕の腹の虫だ。
「あっ煮詰まってる」
あとはこれをこして、冷めたら瓶に詰めて完成だ。
魔法で冷ましてもいいけどお腹も空いたし、冷めるのを待つ間にご飯を食べよう。
それからこのポーションが完成したあかつきには、パンケーキの材料を街で買ってこようと思った。
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