獣の王様

ねむりねずみ@まひろ

♀1♂5

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■キャラクターの性別は、絶対ではありませんが、世界観を壊すような無理な変更はやめてください


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『キャラクター』


27・猫:15~16程度の見た目をした少女

獅子・??:森の奥で隠れるように住んでいる、前国王

狐:食肉養殖場の所長、プライドが高く、暴力的。元騎士。

豹王:気性の荒い若き王。何かにつけ、獅子と比べられご立腹

熊・猫2:王に使える従者。己の信念を貫く男

兎:獅子と共に森の奥地に住む、獅子を尊敬し付き従っている



『コピペ用キャスト表』


「獣の王様」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934513570/episodes/1177354054934513580


27・猫:

獅子・??:

狐:

豹王:

熊・猫2:

兎:





以下台本

――――――――――――――――


【城の近くにある、養殖施設。チクチクと体を刺す痛みに、目が覚める。どこからが猫の鳴き声が聞こえた気かする…】



27M「……」


27M「…ここは、どこ?」


狐「…7番」


27M「誰かが…呼んでる…?」


狐「…おい、0327番!」


27「ぁ…パパ…さん?」


狐「はぁ?この高貴な俺様が、お前のパパだ?ふざけるな、このゴミ屑が!!」


27「つっ…げほっ…げほっ…ごぷッ…」


狐「あっ!こいつ、吐きやがった!くそっ、汚ねえな。何て事しやがる!!」


27「ひっ…ごめんなさ…」


狐「このっ!家畜如きが!ふざけた事!しやがって!!」



【手足に枷を嵌められた27を、何度も踏みつける狐】



27「うぐっ…かはっ…」


狐「ちっ、靴が汚れちまった…」


27「っ…ごめん…なさい」


狐「ったく、お前のせいで、出荷時刻を過ぎちまう所だったじゃねえか!!」


27M「出荷…時…刻?」


狐「んー、今日は0315番から0342番までだな…よし、連れて行け」



【鉄格子の扉が開かれゾロゾロと連れて行かれる】



狐「おい、お前!何してんだ、早く出ろ!」


27「…皆、どこに連れていかれるの?」


狐「はぁ?食肉場に決まってんだろうが?」


27「食…肉…場?」


狐「いいか、お前はなぁ、この獣王国じゅうおうこくで養殖された、食料なんだよ!」


27「人間が…食料…何でそんなっ…」


狐「はぁ?人間?何をお高く止まってやがる、人肉ふぜいが!!獣が肉を喰うのは当たり前だろう?肉食獣なんだから。…つーか、何でこいつだけ意識があんだ?……お前、失敗作か?」


27「ひっ…」



【狐が手を伸ばし、27を掴もうとする。枷を嵌められたまま、逃げる27】



27「嫌っ!!」


狐「あっ、てめえ!!待ちやがれ!!」


27「ひっ…!!逃げなきゃ!!逃げなきゃ!!!」


狐「おい、お前等!!何ボケっとしてやがる、あいつを逃がすな!!」


27M「嫌だ…殺されるのは嫌だ!何処か隠れる場所は…あった!あそこだ!!」



【森の茂みに隠れながら息を潜める27】



狐「くそが!食肉の分際で!!見つけたらその場でぶっ殺してやる!!」


27「っう…」


狐「なぁに、食肉の足じゃ、そう遠くに行けるはずがねえ…この辺りに居るはずだ!!おい、お前等!探せ!!」


27M「あああ、どうしよう…どうしよう!見つかったら…殺されちゃう…嫌だ、嫌だよう…」


狐「…ふむ。この辺りが怪しいな…」


27M「っ!!どうしよう、こっちに来る…お願いっ!見つからないでっ!!」


狐「…ここか?」


27「っつ!!」



【27が見つかりそうになった時、豹王と側近の熊が現れる 狐分岐地点】



熊「何を遊んでいるんです?」


狐「誰だ?!つっ!!…これはこれは熊殿…いかがなさいましたか?」


熊「出荷時刻はとうに過ぎたのですが、品物が来ないと、卸業者から苦情がはいりましてねぇ」


狐「くっ…それは、そのっ」


熊「言い訳は結構です、ことの詳細を簡潔に述べてください」


狐「…っ、この熊ふぜいが…」


熊「何か、おっしゃいましたか?」


狐「いえっ…何も…」


27M「っ!…向こうに注意が向いてる…今なら逃げれるっ…」


熊「それで、狐。貴方は何故こんな所で、油を売っているのです?」


狐「……」


熊「答えなさい。」


狐「それは…」


熊「返答によっては、上へ報告させて頂きますが…」


狐「なっ…それは困ります!!」


熊「貴方が困ろうが、こちらには関係の無い事。さあ、どうぞ仰ってください」


狐「…くそったれ」



【しばしの沈黙を破ったのは、キラキラと輝く王冠を被り、深紅のマントを纏った若き王…豹王だった】



豹王「熊よ、話は終わったのか?」


熊「はっ。現在、狐に事情を聞いている所でして…」


豹王「何?まだ終わっていないだと?」


熊「…申し訳ございません」


狐「こっ、これはこれは豹王様、ごきげん麗しゅ…」


豹王「ええい、挨拶などいらん。狐よ、出荷時刻をとうに過ぎておるが、貴様は何をしているのだ?」


狐「はっ!申し訳ございません…」


豹王「…聞こえなかったのか?決められた時刻を過ぎてまで、お前は何をしていた?」


狐「それは…」


豹王「王家の命令を無視してまで、何をしていたのかと聞いておるのだ!!」


狐「っ…申し訳…」


豹王「謝罪などいらん!!」


狐「それが…食肉が…1匹逃げ出しまして…」


豹王「…何?」


狐「も、申し訳ございません!!ただ、何故かその食肉だけ、意識がありまして…そのっ…」


熊「おかしいですね…食肉共は、抵抗せぬよう、皆意識を奪っているはずですが」


狐「私も変だと思い、捕まえようとしたのですが…何ぶん逃げ足が早く…」


豹王「ふむ…先祖返り《イレギュラー》かもしれぬな。」


狐「先祖返り《イレギュラー》?」


豹王「ああ、奴ら食肉共はその昔、人間という種族を名乗り、我ら肉食獣を食料とし、無惨に殺し、食い漁っていた事があると…伝え聞いておる…。のう、熊よ」


熊「はい。この話しは、王家に関わる者しか知らされておりません。古来より王家に受け継がれし文献には、食肉…いえ、は、我々と同じ言語を使い、また食肉…あぁこの場合、草食獣等の育成、そして我らを従えその生命を喰らい、世界の頂点に立っていたと記載されております」


狐「そんな、まさか…食肉如きが世界の頂点に?」


熊「ええ、初代国王である虎王こおう様が命をとして反旗を翻さなければ、未だ世界は、人間に統治されたまま、我らの未来は無かったでしょう。先祖返り《イレギュラー》はそれほど厄介な存在なのです。つまり、今回のように、意識を持つは、我々肉食獣にとって、脅威になりうる可能性があるのです。」


狐「……」


豹王「ときに、狐よ。その食肉が逃げ出したと言っていたな…」


狐「はっ!」


豹王「捕まえたのか?」


狐「……」


豹王「2度は聞かんぞ?捕まえたのか?」


狐「げ、現在捜索中でして…ですが!食肉の足では そう遠くには行けないと…」


豹王「つまり、逃げられたままなのだな?」


狐「っ…も、申し訳ございませんっ」


豹王「今すぐに捕まえろ!但し、先祖返り《イレギュラー》の可能性があるうちは殺すな。必ず生け捕りにしろ!」


狐「か、かしこまりました!」


豹王「見つからなければ、狐よ。お前の命は無いと思え」


狐「そんなっ…豹王様!!」


豹王「熊よ、あとは任せたぞ」


熊「かしこまりました」


狐「豹王様!!どうかお許しください豹王様!!」



【狐を無視し、去る豹王】



狐「くそっ!!どうして俺がこんな目に…」


熊「自業自得かと思われますが?」


狐「ぐっ…俺のせいだとでも?」


熊「少なくとも、食肉を見つけられない現状は、貴方のせいかと」


狐「くっ…見つけりゃいいんだろう!見つけりゃ!」


熊「当たり前です」


狐「………」


熊「食肉は、どちらの方に逃げたのですか?」


狐「森の方かと…」


熊「……そうですか。あの森に。分かりました。それでは貴方は、食肉探しを初めてください。その間、とどこおる出荷作業は、私が代わりに引き継ぎますのでご安心を。ああ、礼の言葉などは結構ですよ?貴方がたの尻拭い…それが私の仕事ですから」


狐「くっ…ありがとう…ございます」


熊「あの方は、冷酷無慈悲なお方。逃げた食肉を見つけなければ、貴方は確実に殺されるでしょうね。そう心に刻んでおきなさい。…では、失礼」


狐「………クソがぁぁぁぁ!!何奴も此奴も舐めやがって!これも全部あの食肉のせいだ!なにが先祖返り《イレギュラー》だ!!…殺してやる。そうだ、既に死んだ事にすりゃいい。見つけた時には死んでたんだ、それなら仕方ないからなぁ。俺様の気分を害したんだ、殺されて当然だろう!ははは!待ってろよ?肉の分際で、俺様に盾突いた事を、あの世で後悔させてやる!絶対に殺してやるからなぁ!!」



【怒りに震える狐 その頃27は森の奥深くまで走っていた】



27「はぁっ…はぁ。だめ…もう走れない…」


27「ここは、どこだろう。ずいぶん奥に来ちゃったけど…」


27「あの人たちは…追って来てない…みたいね」


27「うぅっ…走りすぎた…かな…、頭がクラクラする…」


27「きゃっ…」



【足元にあった木の根に躓き転んでしまう】



27M「ぁあ…だめ…体に力がはいらない…。起きなきゃ…あの人たちが…きちゃ…う…」



【27が意識を失った後、茂みから兎が顔をだす】



兎「んー?こっちから妙な気配がしたんだが…。っ?!誰か倒れてる!おい、大丈夫か?おい!…ん?手足にかせ?それに、この首の数値は…個体識別番号…?じゃあ、こいつは…食肉?」


兎「おーい、起きろ。おーい。…意識は無いみたいだな。さて、どうするか。俺は草食だから食肉は食わないし、獅子様も…食べないだろうなぁ」


兎「うーん、だけど、様子を見て来いって言われてるし。しょうが無い、連れていくか。よっと…うわ軽っ、食肉ってこんなに軽いのか?見たところ、あまり肉も付いてないようだし。肉食獣の奴ら、こんなんでよく腹が膨れるな…あれ?よく見たら傷だらけだ、廃棄された食肉か?」



【27を背負い森の中を進んでいくと家の前にローブで身を隠した男が待っていた】



兎「あ、獅子様!」


獅子「兎、どうだっ…た…。ん?何だそれは…食肉…いや、人間か?」



【抱えていた27を地面に下ろす兎】



兎「…よっと。妙な気配を辿ってみたら、こいつが倒れて居たんです、識別番号があるんで、食肉だとは思うんですけど…」


獅子「なに?!おかしいな…食肉ならば己の意思で動く事は出来ぬはず、こんな森の奥まで来れるわけがない」


兎「そうなんですか?」


獅子「ああ、食肉は自我を持たぬように、改良されているからな。我らと同じように自我があると、処理される際に自らの死を自覚してしまうだろう?昔、死にたくないと、暴れた事例もあったそうだ。それ以来、王家の研究施設で、自我を奪う処置が施されて居たはずなのだが…」


兎「へぇ、でもこいつが暴れた所で、肉食獣には敵わないと思いますけど?」


獅子「いや、人間は強い。個々の力は微々たるものだが、団結した奴らは、虎王様をも凌駕するほど…。我々動物も人間に敵わなかった時代があったのだ…」


兎「…動物が人間に…負ける…」


獅子「ああ、古来より伝わる文献…いや。昔、聞いた事があってな…」


兎「そうなんですか…」


獅子「ここで話していても埒が明かぬ。その者を中に入れよう。傷の手当もせねば…よっと」


兎「そうですね…あ、獅子様、俺が持ちますよ?」


獅子「いや、かまわぬ。兎、お前は湯を沸かしてくれ」


兎「かしこまりました」



【枷を外し、傷の手当をされ、ベッドに横にされる27】



27M「……あれ…なんだろう…暖かい…あぁ…懐かしい…」


兎「お?…気がついたか?」


27「…ん…あれ?ここは…」


獅子「大丈夫か?」


27「え……? ひっ!!!ライオン!!!きゃぁぁ!!」


獅子「っお…」


27「食べないで!!食べないで!!嫌だ、逃げなきゃ…食べられちゃう!!」


獅子「待て!その体でどこに行くと言うんだ!」


27「いやぁあ!離して!!」


獅子「…兎、ここを変われ」


兎「わかりました。もしもーし、俺の声、聞こえてるかー?」


27「やだ…やだぁ…逃げなきゃ…逃げなきゃ…またっ…」


兎「おーいって…ば!!」


27「ひっ!!…っあ…あれ?兎…?」


兎「そう、俺は兎。あんたが森で倒れていた所を、運んで来たんだよ?」


27「…じゃあ、あの狐の仲間じゃないの?」


兎「狐?ああ、養殖施設の管理をしてるあいつか。まあ、仲間では無いかな…」


27「…そう…なの…」


兎「そう、そんでこちらのお方は、獅子様。俺の尊敬する方だよ!」


27「ひっ…」


獅子「落ち着け。我等は、食肉…いや、人間は喰わぬ。安心…は出来ぬだろうが、落ち着いて貰えると助かる」


27「本当に…食べない?」


兎「もちろん!俺は元々草食だし、獅子様は肉食獣だけど、訳あって食肉は食べてないからね。それに、ここは獅子様の家だ。あんたに付けられていた枷も、その傷の手当も、獅子様がするようにって言ってくれたんだよ?」


27「…そうなの?」


獅子「…ああ、もう大丈夫か?」


27「…はい、ごめんなさい。あと…手当…ありがとうございました」


獅子「なに、気にするな」


兎「それで、あんたは何であんな所で倒れてたんだ?」


27「…それはっ…あっ」



【言い淀んでいた27から、ぐーっとお腹がなった】



兎「何だ 今の音!?獅子様離れて!!お前!何かしたのか!?」


27「あのっ…ごめんなさい」


獅子「……腹が減ったのか」


27「…はい」


兎「腹?獅子様、腹が減るとあんな音が出るんですか?」


獅子「人間は、我等と違って、食い溜めが出来ぬからな…」


兎「なるほど!」


獅子「兎、消化に良いスープを持ってきてくれ」


兎「かしこまりました!今、持ってきます!」



【脱兎のごとく走り去る兎】



27「あの…ライオンさん…」


獅子「ライオン…?ああ、私の事か…」


27「ライオンさんは良い人?…なの?」


獅子「私は、自分の思う通りに行動しているだけさ、それが君にとって、良い人なのかは分からないが…」


27「そうなの…でも、見ず知らずの私の事を助けてくれたわ!だからライオンさんは、きっと良い人ね!」


獅子「…そうか」


27「貴方が匿ってくれなければ…私は今頃、あの狐に捕まっていたわ…」


獅子「…君はそこから逃げてきたのかい?」


27「ええ。目が覚めたら、あそこにいたの。…同じような人が沢山いたわ…でも、皆どこを見てるか分からない様な、虚ろな目をしていた。そのうち、番号が呼ばれて、何処かに連れていかれそうになって…。そうよ、処理場って言ってたわ!私、怖くて…隙をついて逃げ出したの!そしたら、狐が追いかけてきて…その後隠れていたら熊も来て…。絶対に見つかる訳にはいかないと、森へと走ったの…」


獅子「そして、森の奥で力尽きた…か。なるほど、熊も居たのだとすれば、十中八九、豹王もいるだろう」


27「豹王?」


獅子「ああ、この国の現国王さ…。」


27「あの…この国って…」


兎「おまたせしました!獅子様、スープをおもちいたしました!」


獅子「あぁ、ありがとう。続きは食べながら聞くとしよう…食べられそうかい?」


27「えぇ、ありがとう、兎さん、ライオンさん」


兎「いや、獅子様の言いつけだからね!気にしないで」


27「ライオンさんの名前は、獅子様というの?」


獅子「様、はいらないと言っているんだけどね」


兎「ダメです!!獅子様は獅子様。これだけは譲れません!」


獅子「ははは、こんな調子だ」


27「ふふふ、仲がいいのね」


獅子「ははは、さあ食べよう」


27「えぇ、いただきます…ん、美味しい」


獅子「ならよかった」


兎「あの、さっきの…なんの呪文だ?いただ…何とかって」


27「ああ、あれ?食事をする前にね、 食材や調理してくれた人へ、感謝を込めて、いただきますって言うのよ」


兎「食材に…感謝?」


27「ええ、食材の生命いのちを頂くんだから、感謝と敬意を込めるの。そして、食べ終わった後には、ご馳走さまっていうのよ」


兎「へぇ、人間って変なの」


獅子「…では、私も。いただきます」


兎「獅子様!?」


獅子「ふむ…悪くは無いな。兎、お前もやってみるといい」


兎「かしこまりました…いた…だきます」


27「ふふ、やっぱり…ライオンさんは優しいのね」


獅子「…獅子と呼んではくれぬか?ライオンさんは…その、なんだかむず痒い」


27「わかったわ、獅子」


獅子「ありがとう…ああ、名前を聞いていなかったな。人間は我々とは違い、個人を識別する為の呼び名があると文献にのっていたが…」


27「私には、名前は…ないわ」


兎「養殖場で育ったなら仕方ないですよ、個体識別番号で管理されてる場所ですし。確か、首に書かれていたのは、0327番だったっけ?」


27「ええ、あの狐はそう呼んでいたわ」


獅子「そうか、呼び名が無いのは不便だな…0327。2…7…では、ニーナと呼んでもいいかい?」


27「…ニーナ、私の名前…嬉しい。ありがとう!」


獅子「っ…!。…そ、そうか、なら良かった」


27「ねえ…獅子達には名前は無いの?」


獅子「ああ、我々動物達は個人を識別する名は持っていない。兎や、獅子と…種族で判別するからな」


27「そうなの…なら、私が名前を付けてもいい?」


獅子「…君が?」


27「私も、あなた達の事名前で呼びたいの…ダメ?」


兎「俺の事もつけてくれるのか?」


27「ええ、そうよ」


兎「へぇ、何だか楽しみだな」


27「ふふふ、頑張るわ!…ねえ、獅子、良いかしら?」


獅子「…ふふ、いいだろう。どんな名を授けてくれるんだい?」


27「ありがとう!…んー…そうね。獅子はそのキラキラ光るたてがみが太陽のようだから…ライオネル。兎さんは、とても博識で優しいから、オズワルド、なんてどうかしら?」


獅子「ライオネル…か。ふむ、いい名だな…」


兎「俺がオズワルド…、ニーナ、ありがとう」


27「こちらこそ、ありがとう。2人が居たから私は今ここに居るわ。私ね、目が覚めてからずっと不安で仕方なかったの…でも、2人に出会えて私は幸せよ」


獅子「そうか、ならよかった。今夜はゆっくりと休むが良い。兎…は まだ食べているな」


兎「…はい、何でしょう?」


獅子「よい。少し席を外す、彼女の事を頼んだぞ」


兎「かしこまりました」


獅子「っと、そうだった…ごちそうさまでした。」


27「…ライオネル」


獅子「これも、なかなか悪くないな」


27「ふふふ」


獅子「それじゃあ、失礼するよ」



【獅子が 何か考え事をしながら出ていく】



兎「えっと、ニーナは凄いね」


27「え?」


兎「ライオネル様は、その、色々あって、今はこんな所で暮らしてるけど、あんな 穏やかに笑ってる所なんて、見た事なかった」


27「そうなの?」


兎「ああ、だから…ありがとな。ライオネル様は、多分、人間が好きなんだと思う」


27「ふふ、私もライオネルの事、素敵な人だと思う…最初はびっくりしてしまったけれど、そんな私にも優しくしてくれて…。お礼を言うのはこちらの方よ!…オズワルドも、ありがとう」


兎「…っ!俺は、ライオネル様につかえてる身だから、気にしないでいい。でも、ありがとう」


27「そう言えば、ライオネルとオズワルドは何故こんな森の奥に住んでいるの?」


兎「ごめん…それは、俺の口からは言えない。」


27「そう、とても大切な事なのね。それなら無理して聞かないわ…気を使ってくれてありがとう」


兎「いいよ、別に。…ごちそうさまでした」


27「ごちそうさまでした」


兎「ニーナ、今日は色々あって疲れてるだろうし、ゆっくり休むといい。ああ、この部屋の物は自由に使っていいよ。それと、ライオネル様と俺は、隣の部屋に居るから、何かあったら呼んで?」


27「わかったわ、ありがとう」


兎「うん、それじゃ…お休み」


27「お休みなさい」



【血の匂いを辿り 狐が森の奥へとやってくる】



狐「……こっちだ、こっちから匂うぞ、あの忌々しい食肉の匂いだ!どこだ…どこにいる…」


狐「ん…こんな森の奥に…小屋? 明かりがついてるな。……?!あれは食肉!!…こんな所にいやがったか、隣にいるのは…ああ、兎の奴か。なるほど、それじゃあここは、逃げ出したあいつらの家か…。丁度いい…まとめて片付けてやる…」


27「何て書いてあるのか解らないけど、沢山の本があるのね。こっちはお城の絵、こっちは…恋愛モノかしら?あら?本棚の奥に、何か落ちてる。ケホケホっ…ずいぶんホコリをかぶっているわ。」



【本の中を覗く】



27「なんて書いてあるのかしら。赤いマントに冠をかぶってる…とても大きな剣も持った…虎かしら?…んー、掠れてよくわからないわね。ふぁ…、今日はもう休みましょう。また明日、ライオネル達にお礼を言わなきゃ…おやすみなさい…」



【寝静まった頃、ニーナの部屋の窓から 侵入する狐】



狐「よっと…警備も何も付けてねーとは、好都合だ……ちっ、食肉の分際で、ベッドに寝るとは…いいご身分だなぁ!」



【寝ているニーナのうでを掴み、ベッドから引きずり下ろす狐】



27「痛っ…なに…?…っ!!狐!!!」


狐「(27の手を背中に回し、口を手で塞ぎながら、)おーっと、大声を出されちゃ困るんだ。いいか?喋るなよ…喋ったら殺す。あーぁ、怒りで今すぐ殺しちまいそうだが、まだだ。俺様の怒りを存分に味あわせてやる、とりあえずここから出ないとなぁ。」



【ニーナを抱えて窓から出ていく狐】



27M「どうしよう…私殺されちゃうの?」


狐「……はっ、兎の野郎も耳が訛ったな。食肉を奪われても気づく様子すらねーとは。まあ、俺にとっちゃ都合がいい。それに、来たとしてもこの隠しナイフで返り討ちにしてやる…。じゃあな、兎…それと獅子様よ」


獅子「…そこまでだ!」


狐「なっ…」


獅子「ニーナを離せ!!」


27M「ライオネル…来ちゃダメ!どうしよう…」


狐「これはこれは、獅子様じゃあ ありませんか、ニーナ?何をおかしな事を仰られているんです?これは、食肉ですよ?」


獅子「いいから、ニーナを離すんだ」


狐「はぁ、話になんねーな。そもそも、この食肉はうちの養殖場から逃げ出したんですよ、わかります?もともと、俺の物だって言ってるんです」


獅子「…狐」


狐「あははは、何ですかそれ?それで凄んだつもりですか?噂には聞いていたが、本当に弱ってるんですね…前国王様?」


27「ライオネルが…前国王?」


狐「は?ライオネル?…ぷっ…あっはっはっは!!なんだそれ、名前か?よりによって人間の真似事かよ。いいか、食肉は肉だ!食い物だ!!食わなきゃ生きていけねーんだよ俺達は!!…食肉が可哀想とでも思ってんのか?ああ、だからか。食肉の意識を奪う制度を発令したのも獅子様だったなぁ!!…そんなんだから、やせ衰えて弱っちまうんだよ!」


27「…え?」


獅子「私は、食肉は喰わぬ」


狐「そうだよな、あんたはそういう人だった。けどなぁ、俺も命が かかってんだ。」


獅子「なぜそこまでして、ニーナを探す?!…ニーナが、先祖返り《イレギュラー》だからか。」


狐「さあな!俺は豹王様の命令に従うだけだ…」


獅子「そうか…ならば、こちらも全力で止める!こい、オズワルド!」


兎「はっ!!」



【後方から隙をつき、狐に飛び蹴りをかましニーナを救出する兎】



狐「なっ?!てめえ、兎!!!」


兎「お前の相手は俺だ」


狐「ふざけやがって…お前も殺してやる!」


兎「ライオネル様!ニーナ!早く逃げて!」


27「そんな…オズワルドは?!」


兎「俺は、ここでこいつを食い止める」


狐「食い止めるだ? 俺に1度も勝てた事のないお前が?あはははは、こりゃ傑作だ」


兎「ニーナ、行って!!」


27「嫌よ、オズワルド!貴方も一緒に…」


獅子「ニーナ急げ!オズワルド、…頼んだぞ」


兎「…任されました」


27「オズワルド?オズワルド!!ライオネル、離してっ!」


獅子「すまない…ニーナ」



【27と獅子離脱】



狐「おいおい…お前、俺の邪魔をする事が、どういう事かわかってんだろうなぁ?」


兎「御託はいいから、さっさとかかってこい」


狐「あはははは!!!かかってこいだぁ?!誰に向かって口聞いてんだ兎野郎!!」


兎「俺はもう、たんなる兎じゃない!俺の名はオズワルドだ!はぁぁあ!!!」



【兎の蹴りをその爪でガードする狐】



狐「なにがオズワルドだ!!お前も人間ごっこか?気色悪ぃ!!…ああ、あの肉のせいか?」


兎「ニーナは、関係ない!」


狐「うるせぇ!関係ないわけねーだろ!食肉にほだされやがって。なにが、先祖返り《イレギュラー》だ、あんなのただの食料じゃねえか!!」


兎「彼女を悪くいうな!!彼女は、ライオネル様が心を許した唯一のお方だ」


狐「あーあーあー、キモっ。気色悪りいんだよ!!お前も!!獅子様も!!」


兎「っ…ここは絶対に通さない」


狐「はっ、1度も俺に勝てなかった奴が、偉そうな口を聞くんじゃねえ!!」


兎「ぐぁっ…」



【狐の爪が、兎の体を切り裂く】



狐「ほーら、負けを認めろ?じゃねーと殺しちまうぞ?」


兎「ここは…通さない!!」


狐「そうかよ、じゃあ死にやが…れ?」


兎「はぁ…はぁ…」


狐「がっ…あがっ…何だ…ぐるじぃ…」


兎「やっと薬が回ってきたか…」


狐「ぎざま…いづのまに… 」


兎「最初にお前に仕掛けた時だ…」


狐「卑怯…だぞっ…」


兎「なんとでも言え。もう、あの頃の俺じゃないんだ」


狐「そう…かよ…がはっ… くそっ…意識がっ」


兎「これで、俺の99敗…1勝だ」


狐「はっ…ほざきやがって…おい、兎」


兎「オズワルドだ…」


狐「うるせぇ。…お前は…兎だ」


兎「…そうか」


狐「…かはっ…もう…目が霞んで…みえ…ねぇ…」


兎「安心しろ…俺が最後まで見届ける」


狐「あはははは!!!あの泣き虫兎が…か…。なんにも変わっちゃいねぇなぁ。やっぱ、お前は…兎だよ。」


兎「そう…だな」


狐「なあ、兎。俺は…どこで…間違えちまったん…だろうなぁ」


兎「この世に、間違いを侵さない奴なんて居ないさ」


狐「言ってくれるねえ。ははは…俺には…もう何にも…残ってやしねえ。富も、名声も…仕えるお方も…何もかも」


兎「そうか」


狐「あーあ…おれも…獅子様と…一緒…に……いた…か…っ…たなぁ」



【己の過去を嘆き 事切れる狐 】



兎「じゃあな…相棒。俺も…出来ることならお前と共にライオネル様をお守りしたかったさ…」


兎「…ライオネル様達は大丈夫だろうか、こうしてはいられない、急がねばっ…っ?」



【走り出そうとしたが、足が前に進まない】



兎「くそっ…血を流し過ぎたか?…足に…力が…はいらない」


兎「こんな所で、倒れる訳にはいかないのに…」


兎「ライオネル様…ニー…ナ…」




【意識を失い倒れ込む兎。一方、山奥へと逃げる2人の周りは、吹雪が舞う】



27「……っ」


獅子「ニーナ、大丈夫かい?これを羽織るといい。靴の代わりに布を巻いてはいるが…人間にはこの寒さは辛いだろう」


27「ありがとう。ねえライオネル、これからどこへ向かうの?」


獅子「豹王が君を狙っているのなら、この国にいるのは危険だ。このまま国境を超えて、他国へ亡命する」


27「…オズワルドは…大丈夫かしら?」


獅子「あいつも、いざと言う時はやる男だ。きっと大丈夫さ…」


27「ねえ、ライオネル。貴方が食肉を食べないって本当?」


獅子「…あぁ。私は、二度と食肉は食べないと…誓ったんだ」


27「…でも、そのせいで体が弱ってるって」


獅子「ニーナ…。食肉扱いを受けている人間も我々動物も、皆等しく同じ命。誰もが幸せになる権利を持っている。少なくともあの頃の私は、そう信じていたんだ」


27「ライオネルが王様だった時の話?」


獅子「ああ、私はただ、その幸せを守りたかっただけ。だが、それだけじゃ国王は務まらなかった。そんな私に、家臣たちも不信感を持っていたんだろう。そこを突かれ、あっという間に王座を奪われてしまったんだ。貴様の言う事は理想論にすぎん、所詮この世は弱肉強食、食うか食われるかの、どちらかだと」


27「…そうだったんだ」


獅子「だから豹王は、先祖返り《イレギュラー》を恐れてる。かの人間達のように、知恵をつけ、力を得た、自分達より強者になりうる存在を…」


27「私が、その先祖返り《イレギュラー》…だと?」


獅子「おそらく。本来食肉は、抵抗できぬよう品種改良を施されているからな…」


27「でも、私は…動けたわ。考えることも…だから豹王は私を恐れたのね…」


獅子「あぁ、だが大丈夫だ。君は私が守る」


27「ライオネル…」



【豹王と熊が現れる】



豹王「なにが、大丈夫だ?」


獅子「豹王…」


豹王「国王に向かってなんだその態度は…。豹王様だろう?今すぐ罰せられたいか?!」


獅子「申し訳ございません…豹王様…。どうか見逃してはくれませんか?」


豹王「だめだ。その食肉は先祖返り《イレギュラー》の可能性がある。危険な芽は早めに摘まねば…寝首をかかれることになるからなぁ」


熊「…そろそろお時間です。貴方様のお体では、この雪原では、耐えられません」


豹王「ちっ…、忌々しい気候め。こんな場所さっさと出るぞ!!…というわけだ、さあ、その食肉を置いて立ち去れ。今なら、獅子、同じ王族のよしみで、お前だけは許してやろう」


獅子「…断る、彼女は…ニーナは私が守る」


豹王「はぁ、残念だ。だったら、お前を殺してでも奪うしかねぇよなあ?」


熊「王族同士の戦闘は、どちらがより強いのか、己の肉体で示して頂きます。いわば、一対一の決闘。」


27「決闘?!…そんな」


豹王「ごちゃごちゃうるせえぞ熊!別に、お前から殺してもいいんだぞ!」


熊「失礼いたしました」


獅子「…その決闘、受けよう」


27「そんな、ライオネル?!」


獅子「大丈夫、私は、必ず勝つから」


27「ライオネル…」


熊「勝敗は、どちらかが負けを認めるか、戦闘不能に陥った場合のみとさせていただきます」


獅子「あぁ、それでいい」


豹王「前から、お前をぶっとっばしたかったんだ…ちょうどいい!!俺の強さを見せつけてやる!!」


熊「両者向かい合ってください。これは王家に伝わる神聖な儀式…けして規約を違えることは許されません。宜しいですか?」


獅子「かまわない」


豹王「ち、わーったよ!」


熊「その宣言、しかと承りました。貴女は2人の決着が着くのを、そこで見ていてください。」


27「わかり…ました」


熊「……では……始め!」



【獅子と、豹王戦闘】



豹王「先手は譲ってやるよ、前国王様」


獅子「そうか、ならいくぞ!!はぁぁ!!」



【己の牙と爪で戦う二人】



豹王「おいおい。笑わせんなよ!!そんなぬるい攻撃で俺様が倒れるとでも思ったのか?!おらぁ!!」


獅子「ぐあっ…まだまだ!!」


豹王「遅せぇ!!」


獅子「くっ、このっ!!」


豹王「あはははは!これが、最強と謳われた獅子の力か?!弱い…弱すぎる!!」


獅子「はぁ…はぁ…」


27「ライオネル!!」


熊「いけません、神聖な戦いの場へ入ることは規約違反となり、あなた方の負けとなります!」


27「そんな。私は…見ていることしか出来ないの?」


獅子「大丈夫だ、ニーナ!私を信じろ!!」


27「ライオネル…」


豹王「余所見してんじゃねぇよ!」


獅子「ぐぁぁぁっ!!」


豹王「俺達肉食獣はな、肉を喰らわなけりゃ死んじまうんだよ!あははは!そのやせ衰えた身体で、いつまで持つか見物だなぁ!」


獅子「……肉は…喰わぬ」


豹王「ああ、そうだ!その信念のせいで、お前はここで死ぬんだ!そして俺が!お前を超えて、1番になるんだよぉぉぉ!!」


獅子「……変わらぬな」


豹王「うるせぇ!!お前にわかるか?何をするにもお前と比べられ、蔑まれる俺の気持ちが!あの能無し共が!御託ばっかり並べやがって!!俺が国王なんだよ!!お前じゃない…俺が!! 1番偉いんだ!!どいつもこいつも…馬鹿にしやがって…」


獅子「………」


豹王「…おい、なんだよ、その目。あー、良い事を思いついた。お前が負けたら…あの食肉をお前の目の前で殺してやるよ。俺は優しい王様なんだ…どちらかが1人にならないように、2人とも殺してやる」


獅子「そんな事はさせない!!」



【獅子の爪が豹王の腕を切り裂く】



豹王「ぎゃぁあ!!!痛いっ…痛いっ…」


獅子「…っ。その腕では、もう爪は使えまい…」


豹王「ひぃっ!!!や、やめてくれっ…!助けてくれえっ!」


獅子「…っ。…降参しろ。命までは取りたくない…」


豹王「ああ、…わかった……言うとうりに…する……なんて、言うと思ったか?」


獅子「なっ…?!」



【銃を取り出し、獅子に向けて撃つ豹王】



獅子「ぐっ…」


熊「っ…それは規約違反ですよ!!」


豹王「あっはっはっは!ばーーーか!この世は弱肉強食!どんな手を使おうが、生き残ったほうが偉いんだよ!俺様の演技に騙されやがって、ざまあみろ!あははは!」


獅子「ぐぅ…」


ニーナ「ライオネル!!」


豹王「さぁ、フィナーレだ!じゃあな獅子様?その首、切り落としてやる!」


ニーナ「だめぇえええ!」



【突如、豹王の体が貫かれる、そこには熊がいた 】



豹王「あ?…なん…で…ごほっ…お前…」


27「熊さん……?」


熊「貴方は、やりすぎました」


豹王「なんで…だ…よ、俺は国王…だ…ぞっ」


熊「上の者が道をあやまったら、それを止めるのが家臣の役目ですから」


獅子「…熊」


熊「それに、私は王に仕える身」


豹王「だったら!!なぜ…だっ!!」


熊「…私は、貴方を王と認めた事はございません。」



【豹王の身体から腕を引き抜く熊】



豹王「がはっ…」


熊「獅子王様…お逃げください」


獅子「…熊、お前…」


熊「援軍が来る前に、早く!!」


獅子「…すまぬ、熊よ」


熊「…私は王に仕える身ですから」


獅子「行くぞ、ニーナ!」


27「でもっ!!」


熊「いいから早く!行きなさい!!」


27「…っ…」



【走りさるニーナと獅子、それを見届けながら】



熊「さようなら…ニーナ」


豹王「熊…きさま…うらぎったなぁぁぁ!!!」


熊「はっ…しまった!?」



【銃声が響き、心臓付近を貫かれる】



熊「かはっ…」


豹王「ざまあみろ…あはははは!俺を裏切った罰だ!熊、お前だけでも道連れにしてやる…」


熊「ぐっ…このっ」


豹王「あはははは!あばよ、熊…地獄で待ってるぜぇ…」


熊「…ぐっ。私とした事が…油断しましたね。かはっ…」


熊「…ですが、2人を逃すことは出来ました…。お2人とも…どうか、ご無事…で…」



【熊事切れる】



獅子「……っ…」


27「ライオネル?!…大丈夫?」


獅子「ああ…大丈夫だ…くっ」


27「ライオネル!!」


獅子「ニーナ、すまないが…ここから先は君一人で行くんだ」


27「嫌よ…貴方を置いていくなんて…そんな事出来ない!」


獅子「いいかい?ここを真っ直ぐ行けば…隣国につく。この腕輪を門番に見せるといい…そうすれば…ぐっ…」


27「…ライオネル!ライオネル!!」


獅子「どうやら…私はここまでのようだ」


27「嫌よ、そんな事言わないで。そうよ…肉を食べないから体が弱ってるのよね…だったら私を食べればいいわ!お願い今すぐ私を食べて!」


獅子「…それは出来ない」


27「このままじゃ死んじゃう!私はもういいの、私は…もともと食肉なんだから、どうなってもいいの。私を食べたら、傷の回復が早まるかもしれない!だから、私を食べて!!」


獅子「私は…喰わない」


27「ライオネル…お願いだから…食べてよ…」


獅子「すまない、君の願いでも、それだけは聞けないんだ…」


27「…なんでよ!!」


獅子「私は…君を、愛してしまった」


27「ライオネル…?」


獅子「くっ…。その優しい眼差しも、微笑んだ顔も、仕草や…言葉の一つ一つ…。全てが…愛おしいんだ…」


27「…私もよ。貴方の…厳しいところや、細かな所に気を使えるその優しさ。暖かくて、とても大きな存在なの…、私も…貴方を愛してる!」


獅子「そうか…そうか。思いが通じ合うのは…嬉しいものだな」


27「そうよ、せっかくお互いの気持ちが通じあったんだから…死んじゃだめ…お願い…生きて!!」


獅子「…さあ、ニーナ…振り向かずに…行くんだ。君が生きるには、この世界は辛いだろう…。この先、傷つく事が多いかも知れない…、だとしても…私の愛した…この世界を…」


27「……っ 」


獅子「どうか…愛して…く…れ…」


27「ライオネル?…ライオネル!!!ねえ!ねぇってば!!嫌よ…嫌…ひとりにしないで!!…目を開けてよぉ…ライオネル…うわぁぁぁあ!!」



【吹雪が強くなり1面真っ白になる ニーナの泣き叫ぶ声は風に乗り遠くまで響いていた。静かな空間に、ふとあかりが灯る、1人の男性と共にいる、飼い猫が弱々しく声をあげたが、その口からはほとんど声が出ておらず、男性には届いていない。男性の目には涙が溜まっている】



猫「みゃ…お…」


??「ニーナ、大丈夫か?よく頑張ったなぁ…」


猫「みゃ…お」


??「ほら、お前の大好きなちゅーるだぞー、いっぱい食べろよ」


猫「…みゃぁ…お」


??「病気、治してやれなくてごめんな。俺がもっと早く気づいてやれてたら…長生き出来たかもしれないのに…」


猫2「にゃ~お」


??「あぁ、ごめんごめん。そうだよなシルベスタ。…大丈夫だぞニーナ、最後まで俺達が傍にいるからな」


猫M「あぁ…大好きなパパさん…あにさん…。ごめんね、傍に行きたいのに…何でかな?体にね、力が入らないの…。頭、撫でて欲しいのに…動かないの…。でもね、痛くはないんだよ!だからそんな悲しそうな顔しないで?…私、死んじゃうのかな、きっとそうなんだよね。あーあ、もっと2人と一緒に居たかったなぁ…。パパさんにいい子いい子してもらったり、あにさんとボールで遊んだり、一緒にご飯食べたりしたかったのになぁ…、ふぁーあ…何だか、眠くなって来ちゃった。ねえ、パパさん…私ね…もし、生まれ変われるなら、今度は、パパさんと同じ…人間になりたいんだぁ…そしたら…もっとパパさんと…一緒に…いられ…るから…、だから…神様…お願い…ね… 」



【淡いあかりが消え、城の窓から一人の女性が外を眺めている】


27M「遠い昔に夢みた、淡い淡い記憶。夢なのに、どこか暖かい…。ふふ、ライオネル…まるで貴方みたいね…。あの日、貴方が居なくなってから…色々あったのよ?豹王と熊、そして狐は…皆死んだわ…。空いたポストを埋めるために、争いが起こりそうにもなった。でもね、貴方のくれたこの腕輪…これのおかげで、争いも事前に止められたの。ふふふ、ライオネルの事だから、こうなる事も、全て見越していたんでしょう?」



【ドアがノックされ、兎が入ってくる】



兎「失礼致します。ニーナ様、お時間です」


27「あぁ、わかった」


27M「私は今日、貴方の意志を継いで女王となる。この先はイバラの道…。とても険しい道のりだろうけど、約束するわ…ライオネル。貴方の愛した世界は、私が守る。貴方の心と共に。」


27「待たせたな。さあ、行こう…オズワルド」


兎「かしこまりました、女王陛下」



27「エンディング6 貴方の愛した世界」



END

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獣の王様 ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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