02 警官

 こまったなあ。


 目の前をひょこひょこ歩く、女。


 俺のことを、裏家業とかそういう感じの人間だと、思っている。


 確かに人に言えない職種ではあったけど、そんなにやましいものでもない。


 管区所属の特殊警官。職務は、人工血液の開発。この国は医療関連だと特許絡みでがちがちに法律武装されており、新規開発しようにも色々と手続きが煩雑すぎて、手の施しようがない。


 そのため、上の方で警察官の職務とかいうどうでもいい抜け道が用意された。で、警官で医療関連で開発者の心得もあった自分が抜擢された。


 毎日、トマトジュースを血に変える研究をして。着てる物がどんどんトマトジュースと血にまみれていく。


 数週間ろくに寝ずに研究をして、ようやくたどり着いた。トマトジュースが血になる、ばかみたいな研究成果。


 つかれて、家に帰ることもできず。このベンチで寝ていた。いつもここで寝ていたので、警察官立寄所のシールも貼っておいてある。意外と効果があるらしく、夜中このベンチの近くには誰もいない。


 彼女以外は。


 よりによって、さっきまでトマトジュースだった人工血液だらけでベンチに眠りこくっているときに。彼女は来た。


 救急車だけは勘弁してくれと、最後の力ふりしぼっていったら。次の瞬間には彼女の家で一緒に寝ていた。


 それからの関係。


 もう少しで、人工血液のサンプルが完全に安定する。トマトジュースじゃなくて、ケチャップのほうが作りやすいという衝撃の結果が最近出ていた。


 あと少し。


 あと少ししたら、人工血液の研究業務が終わって。普通の警官に戻る。


 そうなったら。


 彼女に、正式に告白しよう。


 でも、どうやって彼女に説明しようかな。


 人工血液のことも、それよりも何よりも、トマトジュースやケチャップを血液に変える研究してましたなんて。言えない。そもそも守秘義務で人工血液のことは言えない。普通の血液ですとか余裕で嘘ぶっこいて人工血液使われてるし。


 まあいいか。


 彼女といられるなら。適当な嘘ぶっこいて、なんとかしよう。

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