第29話 妖精女王と大樹の不思議
一本の大樹に近づいて行くにつれ、その大きさに驚く。
いや、この大きさは中庭にあるものじゃ無いよ……。もう世界樹って言われた方が納得するよ。ここ、本当に中庭?って疑問に思うよ。
そんな事を思っていると妖精達が元気に飛び回る。
「着いたー!」
「着いた〜」
「着いた! 着いた!」
「女王様のとこ!」
「女王様ー! 女王様ー!」
そう言うと私達の周りを飛んでいた沢山の妖精達の半分くらいが大樹に向かって『女王様ー!』と叫びながら飛んで言った。
妖精達、それは女王も引く位うるさいよ?それになんかあったかと思うはずだよ……。まあ、ノア兄の説明で子供で自由が特徴だって聞いたけどさぁ。
「これならすぐに出てくるね!」
「ノア兄……」
ノア兄は爽やかスマイルだ。
「そうだな、待たされはしないだろう」
「ディーお兄様……」
ディーお兄様も何も気にしてはいない。むしろ待たされなくて済むと思っている。
これが普通なのね。
エイミーはそう思うと納得した。
すると、大樹の中から1人の女の人が現れた。 その後ろをぞろぞろついてくる何人かの男女。その大きさは普通の大人の人。しかし、その背中には妖精達と同じく羽根が生えている。
「ようこそ、お越し下さいました。ディヴァイン様、ノア様、そして新しい女神様」
「ああ。久しいな、レンヌ」
「レンヌ、久しぶり!」
「お久しぶりでございます」
ディーお兄様とノア兄は妖精女王に会ったことがあるみたいだ。
その間に私は妖精女王のことを見る。
ペリドットの様な色に腰よりも長い髪。瞳の色は琥珀色。
その琥珀色の瞳が私のことを映す。
「初めまして、新しい小さな女神様。わたくしは妖精女王のレンヌと申します。以後お見知り置きを……」
ニッコリと笑顔で言う妖精女王改め、レンヌ。
「初めまして! 私はエイミーです! よろしくお願いします!」
「ふふっ、こちらこそよろしくお願い致します。それとエイミー様、わたくし達に敬語は必要ございません」
あー、そっか!私ももう一応神様だもんね。
「そっか……。 分かった!」
「はい」
レンヌはエイミーの答えに満足した様だ。
「ここではなんですので、中の方へご案内致します」
「そうだな、お邪魔しよう」
そう言って、レンヌとレンヌについて来た妖精達を含めて大樹の中へと案内してくれた。
一体どうやって中に入るのかな?入り口みたいなのは見当たらないけど……。
ディーお兄様とノア兄は一度来たことがあるのか迷うことなくレンヌのあとへとついて行く。
ディヴァインに抱っこされているエイミーも強制的について行っている訳だが……。
「僕らもついて行く〜!」
「私も〜」
「僕も〜」
「僕も! 僕も!」
「ついて行くー!」
妖精達もみんなついてくるみたいだ。
わらわらとみんなで大移動。そんな光景になんだか笑えて来る。
クスクスと笑っているとディーお兄様に穏やかに笑われた。
そんな私のことは気にせずに妖精達はきゃっきゃっとはしゃぎながら大樹へ向かう。
私はその間にディーお兄様に疑問に思ったことを聞いてみる。
「ディーお兄様、あの中にはどうやって入るの?」
「ああ、大樹の中へは普通に通り抜けるぞ」
「……通り抜ける??」
うん?頭の中ははてなマークでいっぱい。
「兄上、エイミーが混乱しているよ」
「そうだな……。これは見た方が分かると思うのだが」
通り抜けるってことは……。
「あっ! ほらエイミー、先に行った妖精達が大樹の中へ入っていくよ」
ノア兄に言われ、悩んでいた意識を大樹の方へと向ける。
すると、大樹の中に吸い込まれる様に中へ入って行った。まるで大樹がそこに無いかの様に……。
えっ!?あっ!そういうことね!まさしくファンタジーだね〜。
次々と何処からでも大樹の中へ入っていく妖精達を見ている。
うーん、これなら誰でも入れちゃうね〜。
そんなことを心の中で思っていると不意に聞こえた。
「いや〜それが大丈夫なんだよねー」
でも、壁がないのと同じじゃん。
「ああ、そういう風に思うかも知れないけど、僕の許可が無いと入れない様になっているんだ〜」
へぇ〜。……僕の許可??というか私誰と話しているの?
ばっと声が聞こえた方に視線を向ける。
するといつの間かディーお兄様の隣に知らない男の人がいる。
「誰!?」
私の驚いた声にディーお兄様とノア兄、レンヌ達も驚いた。
「あはは〜」
「おい、エイミーを驚かすな。デラフト」
「突然出て来るのはやめて欲しいよね」
「相変わらずですね、デラフト」
ディーお兄様とノア兄、レンヌはこの男の人を知っている様だ。
みんなが分かっているから悪い人では無いと思うけど、一体何者なのよ!
ジーッと私は見る。ここに居るから妖精かなとも思うけどそうではない様な気がする。褐色の肌にパーマがかかっている様な深い緑の髪。瞳の色も深い緑の色をしている。
それにまたしても美形。やっぱり神界には美形しか居ないのかもしれない……。
そんなことを思っているとまたしてもデラフトと呼ばれる男はエイミーに話しかけてくる。
「いや〜ありがとう。カッコいいって褒めてくれて」
いや、美形だな〜と思ったけどカッコいいとは言ってない。
「でも、照れるな〜」
ちょっと待って!この人私の心の中を読んでる!?
思わずディーお兄様にしがみつくエイミー。そして訴える。
「ディーお兄様! この人心の中を読んでる!」
「あはははっ!」
「おい! デラフト揶揄うな!」
ディヴァインの怒りの冷気がデラフト襲う。
「わわっ! すみませんって! 新しい女神様がこんなに小さいとは思わなかったから、つい揶揄いたくなっちゃって」
てへっとするデラフト。そんなデラフトを冷たい目で見るディヴァインとノア。
そんな視線に耐えられなくなったのか慌ててエイミーに謝る。
「ごめんよ! 小さな女神様! 僕は心が読めるんじゃ無くて、何となく適当にこう思っているだろうな〜で話してたんだ。小さな女神には当たっていたみたいだけどね!」
最後にバチッとウィンクをするデラフト。
そしてエイミーは思った。
この人、テキトーな人だ。それに誰なんだよ!
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