第28話 中庭です!


 エイミーの目に飛び込んできた景色。それは色とりどりの花が咲く場所。まさしく花畑。そして城の中なのに隅々まで温かな日差しが差し込んでいて春の陽気がする。


 エイミーの目がキラキラとしていく。


 そんなエイミーにディヴァインはここがどこなのか説明する。


「ここは、エルデが作った中庭だよ」


「エルデお姉ちゃんが作ったの!?」


「ああ、そうだよ。ーー正確にはエルデの力が爆発して出来た庭だが……」


 ディヴァインが最後にボソボソと言ったことは庭をキラキラとした目で見つめるエイミーには聞こえていないみたいだが……。


 確か、エルデお姉ちゃんは大地と豊穣を司る力を持っているんだっけ?それなら納得だし、流石だね!!


「兄上、もう少し奥に行きましょう」


「そうだな」


 そう言うとディヴァインとノアは花畑の中を歩いて行く。エイミーはディヴァインに抱っこしてもらっているのでキョロキョロと周りを見ている。


 中庭といっても、その広さはもう中庭では無い。すごく、すごーく広い。別の空間と考えた方がしっくりくる。


 少し前でルアルとヴィティも楽しそうに花畑の中を駆けて行く。その姿を見てエイミーも走りたくなった。


 あっ!ルアルもヴィティもはしゃいでる!いいな!私も走りたい!!


 そう思い、ディヴァインに降ろしてと言おうとした時それは突然聞こえた。


「わあ! 小さな女神様だ!」


「新しい女神様だ!」


「小さい! 可愛い!」


「ねえ! 一緒に遊ぼ!」


「お花好き?」


「これあげるー!」


 次々と話しかけてくるのは前世では空想の生物とされていた妖精と言われる存在。身長は15センチ位で人の姿に羽根が生えている。


 突然のファンタジーな生き物に驚くエイミー。


「みんな、突然話しかけたら驚くよ」


「驚いた?」


「驚いた? 驚いた?」


「驚いたってー! きゃー!」


「きゃー!」


 ノアに注意されたが、クスクスと笑い始める妖精達。


 その様子をぽけーっと見ていたエイミーは徐々にテンションが上がって行く。


 わっ、わっ、わっ!本物の妖精さんだ!すごい!すごい!本当に妖精って居るんだ!!


「ねぇ、小さな女神様、お名前は?」


「お名前はー?」


「教えて〜」


「教えて! 教えて!」


「お名前〜♪」


 きゃっきゃっとしながらエイミーに問いかけてくる妖精。よく見れば周りは沢山の妖精でいっぱいだった。


「こんにちは! 私はエイミーです! よろしくね!」


「エイミー様!」


「エイミー様だって!」


「エイミー様ー!」


「エイミー様! よろしくね!」


「よろしくね〜♪」


 エイミーが挨拶をすると、嬉しさを爆発させたかの様に妖精達はエイミーに群がった。


 わわあっ!視界全部妖精さんでいっぱい!


 するとエイミーのことを抱っこしているディヴァインは鬱陶しい様に妖精達手で払っていく。


「鬱陶しい。 エイミーに群がるな」


「ディヴァイン様ひどーい」


「ひど〜い!」


「エイミー様〜、あっちで遊ぼー!」


「遊ぼ! 遊ぼ!」


 エイミーの手を引っ張り連れて行こうとする妖精。


 しかし、しっかりエイミーのことを抱っこしているディヴァインによって阻止されている。


 やっぱり妖精は想像通りで自由なんだね〜。うん?妖精で合っているよね?


 前世の記憶から目の前の存在は妖精であると思っているが、ディーお兄様とノア兄からは何も聞いていない。


「ディーお兄様、この子達は妖精さん?」


「そうだよ、ここに居るのは妖精だ」


「エイミー、ここには居ないけど妖精に近い存在もいるんだよ」


「妖精に近い存在?」


 ノア兄が言うには、妖精は子供のように無邪気で自由。そして皆同じように人の形に羽根が生えている。妖精達を束ねる存在として妖精女王が居る。妖精女王の補佐として数名上位の妖精がいる。


 それから妖精に近い存在として精霊が存在する。


 精霊は妖精とは違い、色々な姿で存在する。人型や動物型、あるいは植物型、様々な型がある。そして、妖精よりも力が強い。階級は、下級、中級、上級、精霊王となる。


 妖精女王や、精霊王は何も1人だけではない。その世界ごとの王が存在する。


 その中でもここ神界の王達は他の世界より別格の力を持つ。


「へぇ〜、なるほど!」


「今度、精霊にも会わせてあげるよ」


 ノア兄がニッコリ笑って精霊と会わせてくれると約束してくれた。その言葉にエイミーはまたワクワクが止まらなくなる。


「ノア兄! 楽しみにしてる!」


「うん、楽しみにしてて!」


 ノア兄と話していると妖精達も入ってくる。


「楽しみに〜♪」


「楽しみに〜楽しみに〜♪」


「何が楽しみ?」


「楽しみ?」


「楽し〜い!」


「「「「「キャハハ!」」」」」

 

 うん、妖精達は自由だね!でも可愛い!


「お前達、女王は居ないのか?」


 ディーお兄様が妖精達にそう問い掛ける。


「女王様!」


「女王様は〜」


「女王様どこー?」


「女王様あっち!」


「あっち! あっち!」


 周りにいっぱいいた妖精達が一斉に移動して行く。多分、妖精女王のところへ案内してくれるのだと思う。


「こっち! こっち!」


「エイミー様! おいで〜」


「早く! 早く!」


「女王様のところへ〜」


「ご案内♪ ご案内♪」


 急かす様に妖精達は案内する。それを物ともせずゆっくりディーお兄様とノア兄はついて行く。少し前にルアルとヴィティも妖精達について行っている。それにルアルとヴィティの背中に何人かの妖精がはしゃぎながら楽しそうに乗っている。


 それにしても妖精女王かぁ〜。どんな感じの妖精さんなんだろう?今いる妖精達と同じ位の大きさ?それとももっと大きい?


 これから会う妖精女王のことについて、色々と興味が湧いてくる。


「エイミー、楽しいか?」


「はい! ディーお兄様、楽しいです!」


「それは良かった」


「エイミー様は楽しい!」


「楽しい!」


「僕らも楽しい!」


「楽しい! 楽しい!」


「みんな楽しい♪」


 私が笑うとすかさず妖精達も話に入ってくる。


 うん、みんな楽しくて良かったよ。


 そんな感じで妖精達とわちゃわちゃしながら移動していると一本の大樹が見えて来た。





 

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