───受験。新しい後輩…
「冬休み終わるの早すぎ。寒いんだけど」
「子供は風邪の子ですよ!お兄ちゃん、雪合戦しましょう!」
「無理無理!俺、爬虫類の気持ちが痛いほど分かるもん!」
「去年も雪降ったじゃないですか〜。その時はどうしてたんですか?」
「風花に尻叩かれながら登校してた…」
「なるほど!そうすればいいんですね!お兄ちゃん覚悟ぉ!」
「ぎゃぁぁ!やめろ!何かを失う気がするから!」
冬休みが明け冬馬たち高校生は学校へと登校を始める。
「どう考えても夏が長いのに冬が短いなんておかしいだろ!」
「それは一理あります!私もこたつにいたかったです!にゃ〜」
「こら、そこの二人!遅刻だぞ!」
「やべ……反省文だ…」
「嫌です!優等生のルカちゃんで通ってたのに!」
「つべこべ言わずに放課後生徒指導室に来い!」
最悪だ…反省文なんて書きすぎて書くことないぞ。
もうしませんは通用しないし、仏の顔も三度までとは言うがもう通算20回目くらいだぞ。
こんな信者仏様も嫌がるわ。
「冬馬また遅刻したの?」
「どう考えても8時半までは早すぎるだろ!」
「俺が生徒会長になった暁には登校時間を9時にするからな!」
「あんたにそんな信用あると思う?」
「あー…泣きそう。お姉ちゃん毒舌すぎませんかね」
「冬馬にお姉ちゃん呼びされるとかキモい…早く付き合いなさいよ」
「発展のさせ方がな…」
「はぁ、セックスしないと出られない部屋にでもぶち込めばいいの?」
「服の脱がせ方はおろか、ブラの外し方もわからないんだが!?」
「大丈夫よ。ルカはキャミソールだからシャツと同じよ」
「なるほど…じゃなくて!キッカケが欲しいんだ」
「キッカケ?毎日一緒に登下校と昼を食べてて休日は遊んでるのにまだ欲しいの?」
たしかに第三者から見ればはやく付き合えよ──って思われてもおかしくない。
だかしかし!俺は童貞だし付き合ったこともない!
「はぁ…分かったわよ。私があげるのはあくまでもキッカケだからね!」
「助かる!今度何か奢るわ!」
「駅前のカフェのDXチョコレートパフェでお願いするわ」
聞いたことがある…その存在感はエベレスト、味は底なし沼のように深く、数多の人々を糖尿病に追いやってきた悪魔の食べ物…
「風花!死ぬのはまだ早すぎるぞ!」
「何言ってんの?1時間以内に食べられなかったら15000円だから冬馬のお金で食べるのよ」
「あ…死ぬのは俺の財布の方ね…」
「当たり前でしょ?」
「ルカちゃーん!お姉ちゃんがいじめてくるよー!」
「対価でしょ!いいじゃない…一回は食べてみたかったの!」
「風花…女の子っぽいこと言うんだな!」
「ぐふっ…!」
俺の溝落ちに深く拳がめり込む。こ…これが風花の衝撃のラストブリッドか…。我が生涯いっぺんのくいなし!
「小湊くん。これ運んでおいてくれる?」
「あ…あぁ。無茶するな鵜崎も…」
**
「ミオ!ついに受験だな!」
「緊張する…」
「受験票は持ったか?鉛筆は濃いのだぞ?手袋してけよ、外は寒いから!」
「お母さんみたいだね。なんだか緊張してたのが馬鹿みたいだよ」
「そ、そうか?緊張が解けたならよかった!頑張ってこいよ!」
「うんっ…ミオがんばる!」
兄妹は拳を合わせると妹を見送る。
実は自分の事みたいに緊張してて一睡もできてないなんて言えない。
「大丈夫かな、ミオのやつ」
てか外が騒がしいな…みに行ってみるか。
「ミオちゃん!受験票は持ちましたか?寒くないですか?これ、ホッカイロです!」
「ルカちゃん、ありがとね。お兄ちゃんと同じ反応してるよ」
「な…なんと!?これは運命共同体といっても過言じゃありません!ミオちゃん、私のことをお姉ちゃんと呼んでもいいんですよ!」
「二人が結婚したらそう呼んでもいいよ。じゃあ行ってくるね」
「結婚…うぇへへ」
「あ!行ってらっしゃーい!」
微笑ましいんだか、ルカのやつもミオの事が心配だったんだな。
…てか結婚って言ってた?気が早すぎるぞ!お兄ちゃんはまだ全部が初めてなんだからね!
**
ミオの受験が終わり1週間が経つ。今日は俺の学校で合格発表が張り出される運命の日だ。
「ミオちゃん!私たちが付いてますからね!」
「ミオ落ち着け!お兄ちゃんが付いてるからな!」
「一番震えてるのあなたじゃない…」
「うん。全力で頑張ったから」
14時を迎えると教師たちが玄関前のホワイトボードに大きな紙を貼り出していく。
ミオの番号は201だったな。
「…あった!お兄ちゃん、ミオの番号あったよ!」
「あぁ!やったな!良かった…本当に良かったよ!」
「ミオより先に泣かないでよ…恥ずかしいよ」
「だっでぇ…ミオがぁぁ!」
「これで晴れて私も先輩ですね!ミオちゃんおめでとうございます!」
「ルカちゃん先輩でいいなら呼んであげるよ」
「先輩っ…!なんて甘美な響きなんでしょう!もう一回お願いします!」
「4月まで言わないよ。風花ちゃん二人を一人で相手してたなんて大変だったね」
「本当よ、二人とも手がつけられないくらいに暴走する時があるから」
「聞き捨てならないな!俺は寝てるだけだ!」
「私はお兄ちゃんに会ってるだけです!」
「寝ないの!騒がないの!」
『は…はい』
「ふふ…賑やかになりそうだね。ミオ楽しみになってきたよ」
「ミオに近づくやつは俺が全部倒してやるから安心してくれ!」
「ミオ普通に恋愛したいな〜…なんて」
「お兄ちゃん!?お姉ちゃん!お兄ちゃんが倒れちゃいました!」
「えぇ!?ど…どうしたらいいの!?」
ミオは悪戯っぽく舌を出して冬馬の耳元でそっと囁く。
「冗談だよ。冬馬先輩」
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