───報告。姉妹の絆…


「ただいま」

「お姉ちゃんお帰りなさい!」

「疲れたわ。冬休みに模試させるなんて最悪よ」

「ルカも来年やるんだから気抜いちゃダメよ」

「いやぁぁ!聞きたくないー!」

「私なんて来年受験よ?先のことを考えるだけで気が重いわ」

「は…!?私お姉ちゃんとあと一年しかいられないの!?」

「そうなるわね。私だけじゃなくて冬馬ともよ?」

「私、今からお兄ちゃんに会ってくる!水瀬ルカ!出撃します!」

「迷惑になるからいかないのー。それより、ルカに大事な話があるんだけど大丈夫?」

「お話?聞くきく!」

 ルカには絶対に話しておかなくちゃね。結果的に私が憎まれても仕方ないことだもの。


**


 風花はルカを自室に呼び出し、二人分のココアを淹れて部屋へと向かう。

「はい、ココアよ」

「温かいね!お姉ちゃんありがとう!」

「火傷しないように気をつけるのよ」

「はーい!」

 ルカはマグカップを口に近づけるとフーフーと湯気に息を吹きかけて冷ます。

「あつっ…!」

「もう、言ったばかりなのに」

「えへへ…やっちゃった」

「あのねルカ。大事話って言うのはね…」

「私、冬馬に告白したの」


「え…?そ…そうなんだ!お兄ちゃんに…」

「おめでとう!お姉ちゃんに越されたらなにも言えないや…えへへ」

「違うの!私ね…振られたの」

「どうして…どうして私に気持ち隠してたの!」

「ごめんなさい。でも、私が冬馬を好きってルカが知ってたなら…ルカはどうしてた?」

「そ、それは…」

「私に遠慮していたんじゃない?」

 ルカは無言のまま首を縦に振る。

「そんなことして私と冬馬が付き合ったらルカはどうなるの?」

「私は平気だよ…お姉ちゃんが笑って過ごしてるならそれがルカにとっての幸せだもん!」

「自己犠牲からは何の幸せも生まないわ。どうしてそこまでして…」

「私はお姉ちゃんとお兄ちゃん、二人とも大好きなの!私のせいで二人のどっちかが悲しい思いするくらいなら!」

「幼馴染の妹で良かったの!」

 そうだった…ルカは悲しいくらいに優しい子だった。冬馬が私を好きな時もそれをいち早く気付いて自分の気持ちを押し殺して立派な「幼馴染の妹」を演じていたんだったわ。

 ハリボテの笑顔を崩さず、決して悟られないように…。


「ルカ、あなたの優しさは紛れもない長所よ。けれど自分の気持ちに嘘をついた見て見ぬふりをするのは優しさじゃなくて我慢よ」

「抜け駆けして冬馬に告白したのは私が悪いわ。ルカの気持ちを知りながら…」

「ルカとは対等である為にはこれしか無かったの。その結果、冬馬は私を選ばなかった」

「お姉ちゃん…私どうしたらいいの?」

「簡単なことよ。自分の気持ちに従えば良いのよ」

「私もルカと一緒よ。冬馬とルカの両方が好きなの。だからこそ対等な位置にいたかった」


「お姉ちゃんはお兄ちゃんが好きなんじゃ…!」

「もういいのよ。私は冬馬に告白して振られたの」

「これ以上、あなたを苦しめるものは無いわ」

 幼い頃から私の隣にはいつも冬馬がいた。歳も同じで一時期はこのまま結婚するのかもとか少女マンガみたいな事も想像してたわ。

 

「私は冬馬のヒロインにはなれなかったみたい」

「お姉ちゃんはね、ルカに笑って生きて欲しいの。あいつって鈍感だしうるさいし…たくさんルカに迷惑かけると思うわ」

「その時は私に遠慮なく相談して。夜が明けるまで話聞くから」

「お姉ちゃんはどうするの?」

「私は新しい恋でも見つけるわよ。いつまでもクヨクヨしてたら笑われちゃうもの」

「本当にいいのかな…私。お兄ちゃんを好きで良いのかな」

「その気持ちは本物なんだから。大切にしなくちゃダメよ」

「お姉ちゃん…ありがとう…」

「ほら、じゃあ喧嘩はおしまいね。おいで」

 風花は両手を広げルカにハグを求める。二人は喧嘩すると仲直りにハグをする事が昔からの決まりになっているのだ。

「うん!お姉ちゃん、大好きだよ!」

「私もよ。ルカ、大好きよ」



**


「妹よ」

「どうしたのお兄ちゃん…」

「風花を振ってしまった兄はどうすれば良いだろうか…この先とか」

「そんなこと…」

「そんなこととはなんだ!重要な事だろ!」

「お兄ちゃん、何年風花ちゃんと一緒にいるの?」

「今年で17年目だな」

「17年間も一緒にいて風花ちゃんのこと分かってるでしょ?」

「お兄ちゃんに振られたくらいで挫けたりはしないと思うよ。悲しむだろうけど、風花ちゃんは大丈夫だとミオは思うな」

「俺に振られたくらいって…俺の価値が下がるな…。ミオの言う通りかもしれないな」

「良くも悪くもハッキリしてるのが風花のいい所だしな!俺がウジウジしてたら風花にキモいって言われそうだし」

「お兄ちゃんが気付かなかったらミオがキモいって言ってたよ?」

「ミオに言われるのはダメージが桁違いだからやめてくれ…お兄ちゃん死んじゃうから!」



「ミオ、冬休み終わったらすぐに受験あるんだよね。不安だな…」

「珍しく弱気だな。ミオの学力なら余裕だろ?」

「受かるだけならね。ミオ首席で入りたいと思ってるから」

「お…おぉ!我が妹ながら最高だ!」

「それでね?ミオもたまには神様にお願いしたいなーって思うんだけど一緒に行ってくれる人いないかな」

「ミオ!ここに…ここにいるぞ!」

「もちろん。風花ちゃんとルカちゃんも誘っておいてね?」


「よし!来年は四人で初詣に行くぞ!」

「一番高いお守り買ってね!」

「う…善処する…」

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