───決行。仲直り大作戦…!


「水瀬ルカちゃん…だよね?」

「そうですけど…先輩は?」

「放課後少しだけ話があるから教室で待っていてくれないかな?」

「俺は小湊。放課後待ってるから!」


「ルカちゃんお待たせ!」

「お話ってなんですか?」

「俺…ルカちゃんに一目惚れしちゃったんだよね。良ければ付き合ってくれないかな?」

「ごめんなさい……私好きな人がいるので」

「そっか…!残念だけど仕方ないな。スッキリしたよ。ルカちゃんの恋…実るといいね」

「相手は鵜崎だろ?」

「な…何でそれを!?」

「毎日のように教室に来れば分かるよ。ま、それで一目惚れしたんだけど」

「なんかごめんなさい…」

「謝らないでよ。俺はむしろ2人を応援してるんだから!頑張ってね」

「それじゃっ…!」

 小湊は激励の言葉とともに教室からさっていく。

さわやかな人でした……いかにも青春を謳歌してますって感じの!


**


「大体こんな感じね。小湊くんから聞いた話は」

「あいつ…ルカの事好きだったのか!?」

「それをたまたま見かけたルカのクラスの子が花崎さんに言ったって所じゃないかしら?」

「小湊が腹いせに言った可能性もあるだろ?」

「彼が好きな女の子を虐める様には見えないけどね」

「あまり信用ならないが…女子の風花目線でそういうなら…まぁ」

「とにかく小湊くんに手伝ってもらうんだから愛想良くしなさいよ?」

「…はい」

 この時点で冬馬の中では小湊は恋敵として成立しているのだった。

あれだけ可愛ければモテるのは分かる…だがよりにもよってうちのクラスの奴とは……しかもイケメン!

俺って本当にこのままでいいのか…?


「ってわけで協力してほしいんだが…」

「へぇ…ルカちゃんがね」

「花崎って子の気持ちは知ってたよ。俺の部活のマネやってたからね」

「俺のせいでルカちゃんが虐められたって捉えても間違いないからね」

「俺で良ければ協力させてくれ。仮にも好きだった子だからな」

「小湊…!ありがとな」

「今度学食奢ってね?」

「そのくらい安いもんだぜ!」

「それかルカちゃんとデートセッティングしてくれてもいいんだよ?」

「絶対に断る!お兄ちゃんが許しません」

「ははっ…!その顔が見たかったんだよ。鵜崎って自分の思っている以上にルカちゃんが…」

「なんだよ…」

「これ以上は自分で気づかないとね。ちなみにルカちゃんとのデートは冗談だから本気にしないでね」

「この腹黒イケメンが…!」

「とんでもない!さわやかイケメンにしてくれよ」

「イケメンを否定しない辺りムカつくわ」

「中身が空っぽだから外くらいは褒めてあげないとね」



**


「えぇ!?花崎さんラブレターもらったの?」

「今朝下駄箱にね。ベタな展開よね」

「相手は誰?」

「差出人不明なのよ。放課後屋上に来てくださいって…ますますベタね」

「相手がイケメンだったら付き合っちゃう?」

「まさか!私は小湊先輩一筋なの!」


<お兄ちゃんへ>

作戦の第一段階は成功したようです。


byルカ


「ルカからメールだ。どうやら成功のようだ」

「とにかく一安心ね」

「小湊くん。頼むわね」

「任せてよ!」


**


「屋上って…放課後寒いわね。早く来ないかしら手紙の差出人」

「待たせたな。花崎」

「あんたは……ルカの!」

「まんまと罠にかかりやがって。放課後の屋上だ…助けなんて誰も来ないぜ?」

「あんた……私に何する気よ!近づくな」

「ルカに散々な事してくれたな?もちろん…分かってるよな?」

 俺はジリジリと距離を詰める。花崎は後退りしながら俺と一定の距離を取ろうとするが鉄格子に当たり追い詰められる形になった。

 復讐者の役って興味あったけど…中々胸糞悪いな。

ましてや女の子相手にこれは我ながら最低だ。


「い…いやっ…!誰か助けてよ!」

「おっと…無駄だぜ?」

「鵜崎待て!花崎に何するつもりだ」

 計画通り…良いタイミングだぜ。小湊。

「小湊先輩!」

 小湊は花崎の前に立ち塞がり俺をじっと見つめる。

「こいつが…私のことを!」

「鵜崎…何するつもりだったんだ?」

「別に?ルカの一件の仕返しだ」

「先輩!あいつ狂ってますよ!助けてください…!」

 花崎は完全に悲劇のヒロイン面だ。自分で考えた作戦だがここまで上手くいくと笑いそうだ。

本当俺ってクズ…。

「先輩!やっちゃってください……え?先輩?」

「俺がいつ助けるって言った?鵜崎に何をするか聞いただけだよ」

「嘘ですよね…?だって…私!」

「いや…助けてよ。もうしないから……!お願いだから助けてください!」

 花崎の顔からは涙が滴り頬に伝う涙でメイクが剥がれている。


「ふぅ…もういいだろ?鵜崎」

「上出来だ。すまんな小湊」

「花崎……ルカはもっと辛かったぞ。この苦しみがどれだけ続いてたと思う?」

「だって……私、水瀬が先輩を弄んでたって聞いて…」

「違うよ。俺がルカちゃんに告白したんだ」

「嘘……私の聞いてた話と違う!」

「誰から聞いたんだ…?そんな悪質な嘘」

「友達の友達図手に…私がその事を聞いたのはだいぶ先だもん!」

「だから先輩を弄んで…許せなくて…!信じてください!虐めてたのは認めます…けど嘘じゃないです」

「鵜崎、俺には彼女が嘘をついてる様には見えないな」

「確かにな。だとしたら黒幕がいるって事か」

「噂ってのは独り歩きして大きくなるからな。最悪のタイミングで聞いてしまったわけか」

「彼女も充分被害者だ。許されない事をしたけど…それを決めるのはルカちゃんだろ?」

「そうだな」

「花崎。怖い思いさせてごめんな……流石にやりすぎた」

「バカ……水瀬との事が無かったら先生に言ってたんだから」

「うっ…本当にすまない」


「ルカ!」

「は…はい!今行きます!」

「うそ…水瀬今の全部聞いてたの!?これってあんたが私に復讐するために……!」

「待て待て!それを考えたのは俺だ!ルカはむしろ仲直りして仲良くなりたいって!」

「それ…ほんと?」

「嘘なんて言わないです!花崎さんにされたのは辛かったです」

「私が悪かったの。聞いた話を鵜呑みにして全部水瀬のせいにして……失恋したのもあったから周りが見えなくなって…」

「花崎さん!私はへっちゃらですから!明日からはしないでくれますか?」


「も…もうしないわよ!本当にごめんなさい…」

「いいですよ!その代わり、明日からは私とも仲良くしてくださいね!」

「で…でも!私は水瀬をいじめてて…」

「大丈夫です。私には今の花崎さんが過ちを繰り返すとは思えませんから!」

「あんた…優しすぎよ…」

「えへへ…ありがとうございます」

「皮肉なのに喜ばないでよ」

 ルカは立ち上がった花崎の前に手を差し出す。


「仲直りの握手です!ふっふっふ…私と契約していい子になるのです!」

「なにそれ…変なの…。ありがと」

 花崎は涙ぐみながらもルカと握手を交わす。

「でも水瀬のお兄さん…怖かったわ」

「勘違いするなよ?俺はルカの兄貴じゃない」

「でもお兄ちゃんって…」

「お兄ちゃんは私の許嫁です!」

「嘘をつくなぁ!ただの幼馴染だろうが!」

「要はロリコンってこと?」

「鵜崎……お前犯罪者になるには早すぎるぞ?」

「待て待て!一つしか変わらないだろ!」

「お兄ちゃんったらあの日私と寝たじゃないですか!」

「言い方に誤解が生じるわ!間違ってないけど誤解だ!」


「俺がルカちゃんに惚れてる間お前ってやつは…!」

「小湊誤解だって!その拳を下ろせ!」

「1週間学食奢りでー」

「財布が終わった……」

 終わりよければ全て良しとは言うけれども、完全に俺が変態扱いされて終わってるよな。

失ったのは財布の運命、得たものは変態の称号って最悪じゃねえか!

 

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