───旅行②。幼馴染の気持ち…
「お兄ちゃんと一緒です!私の負けです!」
「悪いわねルカ。はずれくじ押し付けて」
「ごめんねルカちゃん」
「自分で言い出した事だけど口に出して言われると傷つくよ?ホイミは?ホイミ」
「パパスに頼みなさい?あの人無限に治してくれるわよ」
「ヘンリー許さないからな…」
俺とルカは部屋の鍵を使い中へ入ると落ち着いた雰囲気の大きな和室が鎮座していた。
「お兄ちゃんの部屋じゃないのが惜しいですが初めての共同作業ですよ!」
「間違えてもそんな事はない!初手でエグゾディア揃えたら何でも言うこと聞いてやる」
「デュエルの準備はできてますよ!」
デュエルディスクをごそごそとリュックから取り出すと腕につけてやる気満々の様子。
感覚で言うと道端でいきなりバトル挑んでくるポケモントレーナーだな!
「デュエルは夜やるとして!みんなが待ってるからロビーに行くぞ!」
俺たちは荷物を置きに来ただけなのにデュエルするとか…本物のデュエリストかよ!
デュエルディスクカッコいいから俺も買おっかな。小学生の時買ってもらえなかったもん。
ルカを引きずりながらロビーへと向かう。
「受付さんにお願いがあるので先に行っていてください!」
「すいません!204号室の部屋なのですが…」
不備でもあったのかな?──なんて可愛い考えをしていた俺を後々恨むことになるのはまた別の話。
「遅いわよ!あんた達なんで私服なの?」
「ナンデミンナユアミナノ…オレキイテナイ」
「お兄ちゃんにLINEしたよ。見てないのが悪いよ」
「ルカちゃんを甘く見ないでください!お兄ちゃんこれを!」
「さすルカ!気遣いできる子は好きだぞ!」
「えへへ…口説かれちゃいました!これは責任をとってもらうしか…!」
「お兄ちゃんのバカ…」
「母さん達はどうした?」
「大人組は先に行ったわよ。私たちとは別行動だって」
「早速しゅっぱーつです!」
ルカの掛け声と共に俺たち4人は宿を後にする。
美肌効果が──肩こりが──とか色々と女性陣に付き合うことになるのは目に見えている。
「どれから行く…?」
「制覇よ!」
「異議なしです!」
「俺に拒否権は?」
『ない!』
AIにももう少し人権あるのにな…俺今日からペッパー君って呼んでほしいレベル。
あの早口言葉聞いた時はビビったよな…うん!
「見てください!あの温泉!滋養強壮に効果があるみたいです!」
「あっちにはテレビで見たことのある温泉がありますよ!」
「落ち着け落ち着け!温泉は逃げないぞ」
「温くなっちゃいます!私は熱々の温泉に入ってお兄ちゃんにのぞいて欲しいんです!」
「冬馬ぁ?」
「わ…わかってるから!絶対しない!」
「残念です…!じゃあ!」
ルカはピタリと俺より右腕に絡みついてくる。サラサラの髪の毛が腕の近くで揺れてくすぐったい。
「ルカ何してるのよ!」
「ミオもする」
ルカの様子を見ていたミオが俺の左腕にくっつき両腕が使えない状況になってしまった。
同じシャンプー使ってるのにいい匂いするんだけど?俺だけシャンプー別の使わされてる気がしてならない。
「風花はどうする?」
「調子に乗らないでよ!私はあんたなんか…」
「冗談だよ。ごめんな」
「早く行くわよ!」
「見てくださいお兄ちゃん!私の湯網姿可愛いですか?」
「唐突すぎるだろ…!文句なしに可愛いけど!」
「どうして赤くなってるんですかー?」
悪戯っぽく微笑むルカは小悪魔じゃなくて悪魔そのものだろ。
わざとらしく肌の露出を増やして俺の目のやり場を撹乱してくる。
「女子がそんなに肌を出すもんじゃないぞ」
俺ははだけたルカの湯網を直しながら俺が着ていた大きめの半天をかける。
「他の人に見られる事がジェラシーだったりしますか?」
「うるせぇ……嫌なんだよ」
「ふふっ…お兄ちゃん可愛いですね!私の子供にしちゃいたいくらいです!」
「休日も休まらなさそうなんだが?」
「安心してください!夜はルカちゃんが隣で寝てあげますよ!」
「抱きしめられすぎて背骨が折れそう」
「私をゴリラが何かと勘違いしてません!?」
**
その後俺たちは集合時間の6時まで色々な湯を堪能したり、温泉まんじゅうを食べたりと快適な1日を過ごした。
初めて足湯をしてみたけどゆっくりと温まる感覚が癖になりそうだったな!
絶対また来よう…!
夜ご飯は懐石料理が贅沢に出され、味もさることながら見た目も十分に楽しめた。
見てよし!食べてよし!料理長…俺はあんたに惚れたぜ!
「んー!お腹いっぱいです!私初めて湯葉食べました!」
「あのビロビロな俺は苦手だったぞ」
「苦手なら食べたかったです…うぅ…私の湯葉ちゃん!」
「そんなにうまかったか?」
「はい!不思議な感じがして面白いです!」
「また来ようか?」
「今度は2人きりがいいです!チラッ」
「効果音を口で言うな!機会があったら2人でな」
「今の聞きましたか!録音しておけば良かったです…!」
「早くお部屋に行きましょう!お兄ちゃんに貰いたいものがあるんです!」
グイグイと俺の腕を引っ張りながら部屋へと戻ると──そこには恐ろしい光景が広がっていた。
「見てください!受付さんに頼んだんですよ!」
大きな布団が一枚和室の真ん中に広げられていた。
枕は2つなのは何でだろうか……
「ルカちゃん何で布団が一枚なのかな?」
「それは2人で寝るためです!」
「ルカちゃん?何で枕が2つなのかな?」
「お兄ちゃんとくっついて寝るためです!」
「最後に俺の布団はどこかな?」
「お願いして撤去してもらいました!」
コード青…使徒です。
この子は何で間違いを起こさせる様な仕掛けをするのかな!?
俺が全く意識していないとでも思ってるの?とにかく冷静になれ…ルカが風邪を引いた時一緒に寝たじゃないか。
「俺床で寝るわ」
「えぇ!それじゃ折角のお布団が!」
「仕方ないだろ?間違いを起こすわけにはいかない」
「ならば…お兄ちゃん!私とデュエルです!」
「俺に勝つなんて10年早いわ!」
──5分後──
「何故だ!初手からエグゾディアが揃うなんて!」
「これが運命力ですよ!さぁ諦めて私と寝ましょうお兄ちゃん!」
「くそ…青眼を披露する事なくまさかの1ターンキルなんて…」
「約束は約束だからな!一緒に寝るよ!」
「今のはしっかり録音しましたから!」
「ルカ…おそろしい子…!」
ブブッ
「風花から?珍しいな…」
「ルカ、ちょっと行ってくるね」
「気をつけて行ってきてくださいねあなた!」
「誰があなたじゃい!」
**
ロビーのソファは向かうと風花が1人で座っていた。
「どうしたんだ?改めて呼び出すなんて」
「私ね…この旅行で伝えたい事があるの!」
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