───旅行①。3分の3の地雷…


 夏休みも中盤を迎えお盆前に差し掛かる。俺たち鵜崎家と水瀬家は毎年合同で旅行出かけることが伝統になっている。

 8人乗りの大型レンタカーを借りて行きは俺の家、帰りは水瀬家が運転する事も決まっている。

親同士が高校からの同級生で必然的に俺達も仲良くなるってことだ。


「お兄ちゃん!ポッキーゲームしませんか?」

「親の言う前でそう言うことを言うんじゃない!」

「いなかったらいいんですね?もう…!奥手なんですから!」

「そこのバカ冬馬静かにしてくれない?耳障りなんだけど」

「俺まだ一言しか喋ってないんだけど…風花さん?」

「お兄ちゃん。きっと風花お姉ちゃんはあれなんだよ」

 ミオに肩を叩かれ察しろと言わんばかりの目線を受ける。

あぁなるほどね…あの日ねあの日。


「違うわよ!そうなら旅行なんてついて来てないわ」

「ミオちゃんの推理が外れましたね!やはり真の名探偵は私と言うことですね!」

「ずばり!お姉ちゃんは私が勝手にお菓子を食べたことに怒っているんですね!」

「ルカ?それは初耳よ?後で2人きりになりましょうか」

「ち…違うよ!お兄ちゃんが夜のために体力貯めておけって!」

「断じてそんな事は言っていない!」

「ルカちゃん最近盛りすぎだよ。女の子ならオブラートに言わなきゃ」

「なるほど…では!203号室で待ってるぜです!」

「そんな口説き文句はじめて聞いたぞ?実は不老不死で世代違うとかないよな?」

「ピッチピチのJKですよ!ちなみに鮮度はお姉ちゃんより高いです!」

「ルカはまだお子ちゃまね…私のような大人の魅力を身につけなきゃね!」

 確かに…鮮度で旗が上がっても惹きつけるものがあるのは風花だよな。

どことは言わないけどね!Bが80近くあるとか知らないから!


「お兄ちゃんに決めてもらおうよ!お兄ちゃんはどっちがいいですか?」

「えぇっ……」

 ルカに転べば変態扱い…風花に転べば浮気扱い。付き合ってないのに浮気扱いされるって日本語がおかしいけど。

ならばここは安全策を取るしかないだろ!

「俺は…ミオかな」

「近親相姦ですか!?許しません私と言うものがありながら!」

「この変態!やっぱり冬馬はいずれやらかすと思ってたわ」

「ミオちゃんも一言いってあげなよ!」

「確かにお兄ちゃん…引くほど気持ち悪いです。ポジティブに考えるなら2人より魅力的なのはミオって事だよね」

「ミオは小さくも大きくもない美乳タイプだからだよ。敗因は極端なことだね」

 ミオは俺を蔑んだ目で見ながら風花とルカに謎の持論を展開し始める。


**


 某有名温泉街に着くとルカが真っ先に外へ出る。

温泉街独特の硫黄の匂いを深呼吸の容量で息を吸って1人でむせている。

「うぇぇ…腐った卵が鼻の中で踊ってます…」

「山じゃないんだからそれをやるのは良くないだろ」

「だって車の中は空気悪かったんですもん…気分は二日酔いです」

 俺はルカの背中をさすりながら話に相槌をうつ。

こいつは本当に二日酔いした時大変そうだな…主にリバースtoリバースの処理が!

「将来はお兄ちゃんに背中よしよししてもらうのでよろしくです!」

「そんな未来はっ……!」

「2人とも早く来ないと置いていくわよー!」

「悪い!今行くわ!」

「ルカ歩けるか?」

「胸の中が気持ち悪いです…」

「ほら…俺の背中に乗れ」

「私重いですよ?42ですよ?」

「いいから早く」

 たじろいでいるルカをおんぶして皆の待つホテルへと足を向ける。

軽すぎて少し心配になるレベルなんだけど…女の子は少し重みを感じるくらいが丁度いいよな。

自分の元にいるって強く感じたいタイプなもので……1人で気持ち悪いな俺。


「ルカ気持ち悪いなら早く言いなさいよ!ほら薬!」

「お姉ちゃんありがとう…これ粉薬じゃん!苦いの嫌ぁぁ」

「冬馬!ルカを抑えて!」

「任せとけ!」

 ルカの両手を抑えている内に風花が口に薬と水を流し込む。

終始顔を歪めているその様子は警戒している猫のようだった。

「口の中に薬が残ってます…まずいです…」

「悪かったって!でも楽になっただろ?」

「それは…否めないですけど……結果オーライなのが許せないです!」

「いい加減玉薬に変えたらどうなの?そうすれば苦い思いしなくて済むわよ」

「うぅ…私固形物を噛まないで飲み込む事が苦手で……昔噛んだら粉薬の何倍も苦くてトラウマになっちゃって…」

 なにそのエピソード可愛いんだけど!?今度からルカが風邪引いたら「お薬飲めたね」のいちご味買ってあげよう。

 見た目はJKでも──訂正。中身がJKでも見た目が幼いしな。

俺が動物園の受付だったら子供料金で入れてあげるレベル。


**


「はいこれ冬馬達の鍵ね」

「母さんありがとう…って鍵が2個しかないんだけど?」

「私たちは大人で4人部屋だから後は冬馬たちが相談して2人ずつに別れてね」

「はいはーい!私お兄ちゃんと同じがいいです!」

「ダメ…お兄ちゃんはミオとでしょ?兄妹だもん」

「ふん…別に冬馬と一緒は嫌だけど同い年の幼馴染のよしみで我慢してあげてもいいわよ」

 はい、ギャルゲーの選択肢です!

・王道幼馴染ルート

・幼妻系妹ルート

・真の妹ルート

どれを選んでも地雷なのは車の中の下りでよく分かったからな!

同じミスを繰り返すほど俺はバカじゃないぜ!


「じゃんけんで負けたやつと一緒で。男と2人は罰ゲームだろ?」

「お兄ちゃんがそう言うならそうかも………早速じゃんけんしよっか」

「絶対に負けるんですから!」


『じゃんけん…!ポンッ…!』








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