───夏休み①。実はやりたい事がありまして…


 1学期が終わり俺たち高校生は念願の夏休みを迎える。

今年の予定は何も無し!

家で漫画読んでゲームして宿題して寝る……暇イズGOD──のはずだった。


「お兄ちゃん!起きてください!」

「何でルカが俺の部屋にいるの?母上は?うちの門番は?」

「笑顔で通してくれました!ちなみにミオちゃんも公認です!」

「まだ7時だぞ…ラジオ体操から帰って二度寝する時間じゃねえか」

「ふっふーん!私はラジオ体操を終えてきました!見てくださいこのスタンプ!」

「本当テンション高いなー。俺もしかしておじさんなの?」

「では今からおじさんって呼びますか?」

「やめて!心は若くいたいの!」


「実はお兄ちゃんをあるお誘いに来たのですが…!」

「ラジオ体操ならお断りだぞ?」

「違いますよ!えと…あの……」

 珍しくもじもじとして言葉を詰まらせているな。

そんなに大事な事なのか…?まさか、風花と喧嘩して家出してきたとか!?


「私とプールに行ってください!」

「………え?」

「最近できた流れるプールに行きたいんです!お姉ちゃんは水着が入らないから嫌って言われました!」

「成長期恐ろしいな…。それで俺を誘ったってことか」

「水着姿のシックスパックが拝みたいからです!」

「人並みにトレーニングはしてるけど、期待されると困るんだが!?」

「しょうがないですね!対価に私の水着を見ても良いですよ?」

「ルカの…水着…」

「あっ…!絶対お姉ちゃんと比べましたよね!?貧乳はステータスなんですから!」

「希少価値なんですから!天鱗レベルですよ!」

「百歩譲ってドラグライトだろ!そんな希少だったら世の中全員巨乳だわ!」

「普段から世話になってるし、プールだっけ?行くか」

「やったぁぁ!お兄ちゃん大好きです!」

「こら、軽々しく好きとか言っちゃいけません」

 天然の男垂らしの才能あるんじゃないか?

私…○○君のそういうところ好きだよ?とか言っちゃうタイプの人間だろ!


「むぅ…お兄ちゃんだけなのに…」

「何か言ったか?」

「べっつにー!何も言ってませんよ!」

「プールいつ頃行こうか」

「来週の今日とかどうですか?ミオちゃん誘ってもいいですよ!」

「分かったぞ!伝えておこうじゃないか!」

「あからさまに態度変わりましたね…なんだか悔しいです!」


**



 約束した日から1週間…トレーニングはいつも以上に負荷をかけて最高の状態に持ってきた。

これなら失望されることはないだろ!勝負だマリク!

「お兄ちゃん1週間部屋で息荒くして何してたのかな?」

「トレーニングだ!」

「ふぅん…一体何のトレーニングなんだろうね」

「意味深な言い方をするな!俺の磨き上げた身体に惚れるなよ?」

「お兄ちゃんキッモ…」

「ミオさん待ってください…ドン引きされると心が折れるから!お願いします!」

「ミオ荷物持つの疲れちゃったなー」

「お持ちいたします!お嬢様」

「お二人ともお待たせ致しました!」

 白のワンピースに麦わら帽子を浅く被り漫画のワンシーンの様な清楚な格好をしてルカが現れた。


「お兄ちゃん鼻の下伸ばしてキモいよ?」

「そんな事はない!大丈夫だ俺たちも今来たところだからな」

「早速行きましょう!」

 ルカはスキップをしながら受付へと向かう。

新しい施設なだけあって大勢の人で賑わっており老若男女問わず活気で溢れていた。

 受付を済ませると俺たちは水着に着替えるためにそれぞれ更衣室に向かう。


「のぞいちゃダメですよ?」

「誰が覗くか!」

「ったく…ルカの破天荒には永遠と振り回される気がしてならないぞ…」

 若干気を重くしながら俺も男子更衣室に向かい指定されたロッカーへと足を運ぶ。

 左右にはボディビルダーかと思うほど大きな筋肉をポージングして見せ合ってる兄貴達がいたのは気のせいだと信じたい。


**


「ミオちゃん!その水着可愛いですね!」

「去年のが入らなくなっちゃってね。仕方なくビキニになっちゃったよ」

「ミオはルカちゃんのも可愛いと思うよ?」

「分かりますか!?一生懸命選んだんです!これでお兄ちゃんも堕ちますね!」

「ルカちゃんはお兄ちゃんが好きなの?」

「えへへ…お兄ちゃんは特別ですから…」

 恥ずかしそうに頭をかきながらルカは答える。

「特別ですから」この言葉の意味をミオは深く考えないようにしようと思うのだった。


「お兄ちゃん!こっちですよー!」

「2人とも水着が良く似合ってるじゃないか!」

「どうです?惚れちゃいましたか?」

 ルカは前屈みになり一生懸命谷間を作る。女慣れしている男ならば笑って誤魔化せるだろう──だが冬馬は童貞である。

 普段とは違い肌の見える面積が大きく足の根元からスラッと生足が伸びているこの状況だけでドキドキしているのをバレないようにするので必死なのだ。


「お…俺を甘く見るな!悩殺するなんて1年早いわ!」

「じゃあ来年は堕ちてくれるんですね!言質取りましたから!」

「2人ともイチャイチャしないで早くいこ?人が集まってきてミオが恥ずかしいよ…」

「そ…そうだな!悪い」

「私たちどう見えたんですかねー?」


「…どうだろうな」

 何に見えたとはハッキリと言葉にせず回答を濁らす。

ただの友達か…それともカップルか…両手に花のゴミに見えたかは定かではない

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