───真実。隠された理由…
「何で冬馬が龍崎くんのこと…」
「昨日の放課後…たまたまそいつが風花のこと話してるの聞いたんだ」
「風花あんなタイプが好きだったのか?もっと王子様系じゃなかったっけ」
「冬馬には…関係ないでしょ!」
キッと俺を睨みつけてくる。少しでも言葉を誤れば大変なことになるに決まっている。
「昨日のこれを聴いても…か?」
俺は懐からスマホを取り出し昨日の龍崎の会話を録音していたので風花に聴かせる。
嫌そうな顔をしていたが風花は俺からイヤホンを受け取り耳につける。
「なにこれ……なんなのよこれ!」
「龍崎くんがこんな事言うはず…」
実はこの録音は途中で切ったものだ。この後の会話を聴かせれば風花は…。
**
「風花って幼馴染いるらしいじゃん?俺、そういう展開ぶっ壊したくなるくらい嫌いなんだよね」
「甘い言葉の一つや二つ囁いとけば、勝手に股も開くだろーな」
龍崎の口からは常人では考えつかないような卑劣な言葉ばかりがドンドンと出てくる。
俺は湧き上がる怒りをグッと堪えながらスマホの録音を続けた。
「付き合ったことの無い女ほど手玉に取りやすいんだよ!」
A○B?そんなの多分全員抱いたぜとか言うやつだこいつ。
ダメだ…流石にもう抑えられないわ。
俺はスマホの録音を止めると立ち上がり教室に入ろうとする──がドアに手をかけた瞬間龍崎と一緒にいた男が教室から出てきた。
「悪い…今はあいつがいるから入らない方がいい」
「お前…水瀬風花の幼馴染だろ?時々見かけるから分かる」
「そうだ、あんたは誰なんだよ」
「城間[しろま]だ。勘違いするなよ…俺は龍崎の友達でも何でも無い」
「お…おい!待てよっ!」
城間と名乗る男子生徒は俺の言葉には耳を傾けずに屋上の方向へと消えて行った。
**
「だって…龍崎くんは2人の女の子を同時に好きになる俺なんて…って!」
「その録音を聞いてもまだ気づかないのか?」
「どう言う意味よ…」
「遊ばれてたんだよ…風花」
風花は冬馬の頬をフルスイングでビンタする。高い音が教室に響き、一時注目を集めてしまう。
「最っ低!そんなこと言うやつだとは思ってなかった」
風花はあくまでも龍崎を信じるのか…はたまた信じたくないのか──あの音声を。
「余計なことをしすぎた…ごめんな」
俺はそう言い残し風花が去っていく後ろ姿を見ることしかできなかった。
「お兄ちゃん!ご飯…ってそのほっぺどうしたんですか!?」
「ちょっとフルスイングマシンにな」
「会心の一撃ですね…!綺麗な平手打ち、私も習いたいくらいです!」
「素質はあると思うぞ?」
だってお姉ちゃんだもん…フルスイングマシン。
授業中もヒリヒリして痛かったんだよな、頬杖つくと激痛だし。
「冗談はさておき誰にされたんですか?」
「風花」
「お姉ちゃんですか?」
「うん」
「お兄ちゃん何かしたんですか?お姉ちゃんは凶暴ですが無闇矢鱈に人を叩いたりはしないはずです!」
「ちょっと癪に触ることを言ってしまったみたいでな」
「昨日、私と別れた後何かあったんですか?」
なに…この子…勘が鋭すぎて勘だけで刺し殺される勢いなんだけど?
例えるならモンハンの切れ味紫レベル。
「はぁ…俺の負けだ。全部話すけど落ち着いて聞いてくれ」
俺は朝の風花とのやり取りまで事細かくルカに話す。
ふむふむ…と最初は聞いていたが段々とリアクションが大きくなり壊れた機械のようになっていた。
「2人の言いたいことはわかるのですが……お姉ちゃん頑固ですからね〜」
「お兄ちゃんはお姉ちゃんを助けたいって事ですよね!」
「単純に幼馴染が悲しい想いしたんだ…敵討ちって言えば響きがいいけど…完全に俺の私情が絡んでる」
「お兄ちゃん?もしかして自分が振られたのを龍崎さんのせいにしようとしてます?」
「そ…そんなこと!ないぞ?」
ごめんなさい…6割そのせいにしようとしてました。
「大丈夫です!お兄ちゃんを好きになるのなんて世界でも私くらいですから!」
「え…?俺そんなに醜いか?イケメンでは無いにしても普通くらいは…」
「お兄ちゃん諦めましょう!」
「満面の笑みで俺の未来を潰しにかかるな!」
「諦めて水瀬家の人間になりましょーよー!」
ちょっと気を抜くとルカのペースに持ってかれるな。
はじける様な明るさに何度も助けられているし今も暗い雰囲気がなくなったから感謝だな。
「話は戻ってお姉ちゃんの事です!」
「人を叩くのは良く無いと思います!」
「確かにそうだな!もっと言ってやれ!俺が痛いって泣いてたって!」
「なのでお姉ちゃんを帰ったらお説教したいと思います!」
「え…?ルカが怒るの?」
「そうです!そしてお兄ちゃんの話聞く様に促してみます!」
ルカって怒っても「メッ!ですよ!」って言ってそうなイメージなんだが…。
さながら教育番組のお姉さんが言うようなやつ。
「それは助かる。ありがとな」
「なので…ご褒美が欲しいです!」
「……何を?」
「もしできたら私をなでなでしてくれませんか?」
「いいぞ」
「これは意地でもクリアするしかありませんね!がんばりますよ!」
**
「お姉ちゃんお帰り!」
「ただいまー、疲れたわ」
「突然ですがお姉ちゃん!私はお姉ちゃんにお説教したいと思います!」
「………」
「はっ…?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます