───偶然。聞いてしまった真実…
「お兄ちゃん!明日のお弁当は何がいいですか?」
「そうだな…今日はガッツリしていたからあっさり系とか頼めるか?」
「冷やし中華とかどうですか?夏も近いですし先取りです!」
「冷やし中華か…!それで頼めると嬉しいんだが」
「幼妻にお任せですよ!」
「結婚は愚か付き合ってすらないからな!」
「お兄ちゃんは私が料理に細工するとか思わないんですか?」
「細工?例えばどんなだ?」
「媚薬とか!それを食べればたちまちお兄ちゃんもルカちゃんにメロメロです!」
「性欲高まっておかしくなるからやめなさい」
「もしもその時は…チラッ」
「そんな目線を向けるな。風花に殺されるって!」
「もしそうなったら家帰って死ぬほどヌくから」
「お部屋のゴミ箱が溢れてそうですね…」
「やば…!教室にスマホ置いてきた!ルカ先に帰れるか?」
「すぐそこなので大丈夫ですよー。気をつけて行ってきてくださいね!」
空の暗さからして6時前ってところか…学校に残ってるのは部活組くらいだろうな。
とにかく安全第一で急がなければ……。
「良かった。電池は…そりゃあまりないよな」
要件を済ますと俺は颯爽と教室を去る。隣のクラスからは数人の男子生徒の声が聞こえて来る。
いつもならばスルーするのだが俺は一度立ち止まり話に耳を傾ける。
「龍崎、このまえ別れた彼女…本当に良かったのか?」
「あぁ?風花とかいったっけ?顔と身体が良くても別に俺あいつの事好きじゃねーし」
「じゃあ何で付き合ったんだ?」
「次の女が見つかるまでの繋ぎだな。あいつ好きとか言うと本気になって私もだよとか言うんだよ!笑い堪えるの必死だぜ」
ケラケラと笑いながら風花の名前を口する男。
間違いないな…こいつが風花を弄びやがった張本人だ。
龍崎…女遊びが激しい事で有名だったな。風花の好きなタイプってこんな感じじゃ無かったよな。引っかかる事ばかりで考えがまとまらないな。
一泡吹かせてやりたいが風花の問題だ…やめてって言われたらどうすることもできないし、俺の私情で動いて風花に何かあったらそれこそ最悪の結末だ。
**
「お兄ちゃん?いつもより顔色が悪いですよ?」
「少し考え事していてな…昨夜はあまり眠れなかったんだ」
「無理しちゃダメです!お兄ちゃんが倒れたら私も倒れちゃいます!」
「何でだよ!」
「うさぎは寂しいと死んじゃうんです!私うさぎです!ピョンピョン」
「うさぎはピョンピョンなんて鳴かないからな!?」
「でも心はピョンピョンします!」
「チノちゃん…いいよなぁ」
「妹属性は私だけで充分です!」
「俺妹いるんだけど…」
「不覚です……。ならお嫁さん属性を付与します!」
「それなら…まぁいいんじゃないか」
ルカは小さく拳を作りよしっ!っと喜んでいたが、俺には喜ぶ理由がイマイチ分からなかった。
「ルカ寝癖ついてるぞ」
「どこですか!朝直したはずなんですけど…」
制服のポケットから手鏡を取り出しクシクシとハムスターの様に跳ねた髪の毛を治している。
「ルカ!」
「えっ…?」
ルカは鏡に気を取られていたせいか赤信号に気がつかず飛び出しそうになった。
冬馬は咄嗟にルカを自分の方へと引き寄せ間一髪の所で大事を得た。
「危ないだろ!ルカに何かあったらどうするんだ!」
「ご…ごめんなさい…周り見てなくて…」
「身だしなみは大事だ…けど、命は一つしか無いんだから…」
「お兄ちゃん…以後気をつけます」
「それと…この格好…注目受けてて恥ずかしいです」
冬馬は我に帰り周りを見ると確かに通行人の視線が集まっていた。
咄嗟に出た行動だったためかルカを後ろから抱きしめる形になっていた。
「悪い!」
「ちょっと惜しい気もしますが…もう少しギュッてしててもいいんですよ!」
「恥ずかしいから!絶対しないわ」
「ルカだって顔真っ赤じゃないか…」
「そんな…!」
ルカは手鏡で自分の顔を確認すると驚くほど真っ赤になっておりまるで茹でタコの様だった。
ルカは咄嗟に俯き顔を隠す仕草を取る。
「お兄ちゃん!今だけ見ちゃダメです!」
冬馬はそれ以上追求する事はせずにルカの肩を軽く叩き青になった信号を渡るのだった。
**
「相変わらず眠そうね」
「デフォルトだ。2ターンに1回は行動しないまである」
「誰がそんな低スペックを使うのよ!」
「俺を養ってくれる嫁」
「私は絶対お断りよ?」
「おお…ナチュラルに振られたんだが」
「そうだ…風花に聞きたいことがあったんだ」
「珍しいわね。聞いてあげる」
「龍崎のことを教えてくれ」
一か八かの賭けにも似た言葉を冬馬は出すのだった。
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