​───妹×妹。ここもまた幼馴染で…

「お兄ちゃん!私の作り立ての手料理食べたくないですか?」

「行きたいのも山々なんだが、ちょっと…」

「なんでですか!私と用事どっちが大事なんですか!」

「俺が食べに行くと妹が1人で食べる事になる。それが可哀想だろ」

「じゃあ私がお兄ちゃんの家に行きます!まずは外堀から埋めるのも悪くないですよね」

「やめろ!家族攻略ルートは望んでない!」


 俺はその日家に帰るとルカが家に来たがっていることを妹に伝える事にした。


「ってな訳でうちで飯食わせてやりたいんだが…1人分増えても大丈夫か?」

「構わないよ」

「そ…そうか!ミオもルカに会うの久々なんじゃないのか?」

「そうだね。きちんと会うのは久しぶりだよ」

「早速報告してくるわ!ごちそうさま」

 冬馬はスマホを片手にLINEを開きルカに報告をする。

思った通りルカは大喜びで返信が変なスタンプと共に帰ってきた。



**


「3年ぶりのお兄ちゃんのお家です!お邪魔しまーす!」

「いらっしゃい、何もないところだがくつろいでくれ」

「ミオちゃんお久しぶりです!大きくなっちゃってお姉ちゃんは寂しいです」

「痛い、痛いから…薄い胸をくっつけないで」

「ちなみにミオはルカちゃんより大きいよ」

「私だって脱げばすごいんですから!好きな人に揉まれると大きくなるそうですね…お兄ちゃん!レッツ挑戦です」


「お兄ちゃん…?鼻の下伸ばして気持ち悪いよ」

「年下の胸に興奮するほど俺は断固として落ちぶれていない!」

「年下の魅力教えてあげますよ。私、魔性の女ですから」

「ルカちゃんそんなに揉んで欲しかったらルカが揉むよ」

「ミオちゃん手をワキワキさせながらこっち来ないでください!ギリギリCカップは四捨五入でAですよ」

「Bが50以上なら100で超巨乳だよ?」

「お兄ちゃんは大きいほうが好きだもんね」

「そうなんですか!?本当のこと言ってください」

 こんな負けイベントの攻略方法は知らないぞ。あたり一面地雷が敷き詰められているし…


「強いて言えば小さい方かな。強いて言えば!」

「感度がいいほうがいいんだね…変態お兄ちゃん二度と近づかないで」

「ミオ?お兄ちゃん泣いちゃうぞ…心が折れる音が聞こえるんだが」

「では遠慮なしに触ってください!さぁさぁ!」


「キャミソールを卒業したら触ってやるよ」

「キャミって何で知ってるんですか!私の洗濯物がそんなに好きですか!」

「ルカちゃん…私のお下がりいる?」

「いらないです!私は黒のレースがフリフリのブラつけてるので」

「背伸びしすぎだドアホ」


 ルカとミオ──完全に歳が反対に見える2人…比較的大人しく落ち着いているミオとは反対に常に明るく元気な下ネタ製造機のルカはピョンピョンとうさぎの様に家を跳ねている。


「いつまでもバカしてないで飯食うぞ!」

「そうです!そっちがメインでした!」



**

「お兄ちゃんできたよ」

「いつもより豪華な気が…」

「お兄ちゃん家のご飯っていつも豪華なんですか?」

「そんなことは…」

「そうだよ、お兄ちゃんには美味しいもの食べて欲しいから!」

「流石です!私も負けてられませんよ」

「そうだ!今度は2人で私の家のご飯来てください!」

「美味しすぎてほっぺが落ちますよ!落としたほっぺは私が回収するので!」

「比喩表現が現実に起こったらやばいだろ…でもルカの飯が美味いのは本当だからな」


「褒めすぎですよー!もう結婚しましょう!」

「断る。ルカに手出したら俺の命が幾つあっても足りないぞ」


 万が一ルカに何かあったら俺が風花に殺されるだろう。

ルカの冗談まじりのアプローチがどこまで本気なのか分からないけど……今後のことを考えるとあしらっておくのが最善策だと思う。

もし、本気ならその想いに応える義務があるしな。


グルルルル

「お腹なっちゃいました…お恥ずかしいです」

「綺麗な腹の音だな、初めて聴いたぞ」

「こんな日常の音を聴かれてしまうなんて…責任取って私を貰ってください!」

「意地でも俺をくどこうとするな。ほら…さっさと座れ」


『いただきます』

 3人は手を合わせると食事に取り掛かる。

メニューはオムライスに蟹の身のサラダ、スープにはポトフが作られていた。


「ミオも受験なんだから俺に任せてもいいんだぞ?」

「ミオは好きでやってるの。気にしないでね」

 ミオ以外の味覚えたらお兄ちゃん…どこへでも行っちゃいそうだし。

餌付けしとかないといざ!って時に困るもんね。

「ミオちゃん!とっても美味しいです!」

「そ…そうかな?ありがとう」

「今度私にもトロトロ卵のオムライスの作り方教えてください!」

「時間があったらいつでもいいよ」

 ミオの方が年下なのにルカちゃんはミオよりも何歳も年下に感じるなー。

人懐っこいこの笑顔には裏表なさそうで…疑ってた自分がバカに思えてくる。


「ルカ、ケチャップ付いてるぞ」

「付いてないですから!子供じゃありませんよ」

 冬馬はヒョイっと顔につくケチャップを拭き取るとルカに見せる。

「じゃあこれはなんだ?」

「血です!私の血液が飛び出してきたんです!」

「そっちの方が怖いから!認めろよ!」


**

「ミオちゃん!今日はごちそうさまでした!今度は2人でうちに来てくださいね」

「大した物出せなくてごめんね。是非そうさせてもらおうかな…風花お姉ちゃんにも会いたいし」

「気をつけて帰れよ…って歩いて30秒もかからないけど」

「ありがとうございます!お兄ちゃんまた明日です!」

 ブンブンと大きく手を振って玄関を出るルカを2人は子供を見る眼差しで見送るのだった。


「お兄ちゃん…ミオが彼氏できたらどうする?」

「えっ……間違いなく俺泣く自信ある」

 この兄もまたシスコンを拗らせているのは言うまでもないだろう。

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