​───幼馴染。プチ喧嘩…

 ルカが弁当を作ってくれる様になって1ヶ月近くが経過した。

最近では俺のリクエストも受け入れてくれて正直凄い助かっている…本人に言うと調子に乗るから言わないけど。


「毎回悪いな…そうだ、今度お礼がしたいんだが」

「別にいいですよ、私が好きでやってるんですから!」

「貰いっぱなしは俺の気が収まらない。何かして欲しいこととかあるか?」

「じゃあ…私の家来てくれませんか?」


 ルカの家──つまり風花の家ということになる。

あの一件以来ルカを迎えに行ってはいるが玄関より先に入る事はなかった。


「分かった」

「ありがとうございます!では、今週の土曜日に来てくださいね!」

 子供みたいにはしゃぎやがって…喜怒哀楽がハッキリしてる分見ていて面白いけどな。


「土曜日な、了解」



 2人が約束してから数日が経ち冬馬は今日も机に突っ伏して惰眠を貪る。


「ねぇ…冬馬」

「……風花か」

「ルカから聞いたけど…うちに来るって本当なの?」

「その予定だけど行っちゃまずいか?」

「そういうわけじゃないけど……気まずいんじゃないの?」

「振られた相手なのに家に来るのはちょっとどうかと思って…」

「……別に。風花に会いに行くわけじゃないんだ」

「俺はルカと約束したんだよ。もし嫌ならルカを俺の家に招くでもいい」

「思春期の男女を男の部屋にはいどーぞって送り出す姉がいる?」

「…じゃあどうして欲しいんだ」


「ハッキリ言わなきゃ分からないのかな……こういうのって普通察するもんでしょ」


「来ないで、迷惑なの」

「そうか。気を悪くさせて悪いな……」


 ここで反論すれば喧嘩になるのは目に見えている。

相手の意見を呑んで頷いておくのが最適解だ。

けど…そんな鵜呑みにできる程俺は心が広くない。


「彼氏に疑われたら嫌だもんな」

「……彼とは別れたよ。浮気されてた」


 地雷踏み抜いた…これってどうフォローすべきなんだろ。


「その彼氏も見る目がないな…風花を捨てるなんてくたばればいいのに」

「悪口言ったばっかなのに…気遣ってくれてるんだね…」

「昔から腐るほど痴話喧嘩してきたからね、今更何言われてもって感じだな」

「はっきり言うのは風花の長所でもあり短所でもあるからな…流石に家に来るなは傷ついた」

「だって……ルカと冬馬が仲良くしてるのなんか嫌だもん…」


 理由が子供だな…今更風花が俺を好きになるなんてないから単純にルカが大事なんだろうな。


「大丈夫だ。何も手は出さない」

「本当なの?」

「幼馴染を信用しろよ……」

「分かった。土曜日うちにおいでよ……言っておくけどルカのためだからね」

「ありがとな」


 それにしても…風花がいながら浮気か……胸糞悪いな。

赤の他人ならドンマイくらいで終わらせるが風花は俺の大事な幼馴染だからな。





**


「お兄ちゃん!いらっしゃいです!」

「私はお菓子とか持っていくので先に部屋に行っていてください!」

「2階の奥の部屋です」

「分かったよ、ありがとう」


 2階に登ると丁度部屋から出てきた風花と鉢合わせる。


「よっ…おはよう。相変わらず起きるのが遅いんだな」

「スッピン見ないで欲しいんだけどな〜…」

「見慣れた顔に今更どうも思わないぞ」

「デリケートってものがないよね…冬馬って」

「あの時のしおらしい風花はどこいったんだよ…」

「だって…傷ついてるかなって思って……」

「風花……つかぬ事を聞くが何で彼氏がいた事を俺に言わなかったんだ?」

「だって彼が内緒にって……」


「その名前って……」

「あぁ!お兄ちゃん何でお姉ちゃんとイチャイチャしてるんですか!」

「してないから!そうだよな、風花?」

 風花は焦っている冬馬を見て悪戯っぽく笑みを浮かべ──


「たったいま…冬馬に襲われそうになってたの…ルカ…お姉ちゃん…汚れちゃった…」

「何ですか!告白失敗したらレ○プですか!?この獣お兄ちゃん!」


「そんな事は断じてしてない!

ルカ、レ○プとか言うな!俺は合意の上じゃなきゃしないから!」

「合意があったらするのね…」

「お兄ちゃん!私を襲っていいですよ!」

「こら!そんな事言っちゃダメ!冬馬も本気にしたら殺すから!」

「してないから!」


「全く…私は下でご飯食べてるから。冬馬、ルカに何かしたら……」

「わ…わかってるから」

「何の話ですか?」

「いや…なんでもない」

「そうですか?じゃあ私の部屋行きましょう!」


「ったく…仲良さそうにしちゃって…」


 もしかしたら…あの子の場所に私が……って終わった事は考えないでおいた方がいいよね。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る