​───愛妻。いや…付き合ってすらないです

「お兄ちゃん!お昼ですよ起きてください!」

「眠たい……」

「そんな日には屋上ご飯です!早速行きますよ」

 ルカに手を引かれて屋上へと向かうことになる。

夏前の肌に抜ける爽やかな風で眠気も徐々に取れていく。


「俺、購買行かなきゃご飯ないんだけど?」

「ふっふっふ…私を甘く見ましたね?お兄ちゃんのお弁当はルカが作りました!」

「俺が弁当ないって何で知ってるの?」

「だってお姉ちゃんが言ってましたもん」

 姉妹の情報共有恐ろしいわ。何で俺の昼飯の話が出るのかは謎だけど。


 善意で作ってくれたんだ。食べない方が逆に失礼だろう。

渡された弁当を開けると彩りと栄養を考えられたTHE愛妻弁当だった。


「ルカちゃん?何でご飯にハートが書いてあるのかな?」

「お兄ちゃんのお嫁さんになるのが私だからです」

「いや……付き合わないが?」

「そう言ってられるのも今のうちです!男を落とすにはまず胃袋を掴めってお母さんが言ってました!」

「実際お父さんはお母さんに胃袋掴まれて結婚したそうです」

「俺は食にはうるさいぞ…」


 全てルカの手作りだと言うのでとりあえずいただくことにした。

人の料理スキルは卵料理…1番シンプルなものに特に出るらしいからな。

 冬馬は卵焼きに手を伸ばし口へと運ぶ。しっかりと味付けされた卵焼きは絶妙な甘さで後味もスッキリとしていた。


「うまっ…!!」

「そうですよね!?私頑張りましたもん!」

「風花より料理できるんじゃないか?」

「む……女の子と2人の時に他の女の人の名前出すのはタブーですよ」

「いや…お姉ちゃんだろ」

「家族兼恋敵です」

「え?ルカは俺のこと好きなの?」

 俺は冗談半分でルカに聞いてみる。「お兄ちゃん、そんなわけないじゃないですか」

とか言われると思ったが反応は真逆。

 ルカの顔は耳まで真っ赤になり、小さく頷く。


「幼馴染の良いお兄ちゃんとしてだろ?」

「お兄ちゃんのバーカ!鈍感系主人公は嫌いです」

「はぁ!?俺は人の心理に関しては一流を自負するぞ」

「じゃあ私の心を暴いてみてください!」

「本当のお兄ちゃんの様に大好きなんだろ?俺も同じだから」

「あくまでも…恋愛対象外なんですね」

     

「後で惚れても知りませんよ!大歓迎ですけど」

「どうだろうな…」



 幼い頃から冬馬、風花、ルカは3人で遊んできた。2人が高校受験をしているときは自分は遊んでいた。

 何をするにも一歩遅れてスタートしなくてはならない。

私も…お兄ちゃんと勉強したりしたいな…教科書の貸し借りも羨ましい。


 分かっていたけど…お兄ちゃんはお姉ちゃんを好きになっていることくらい。

私はあくまでも幼馴染の妹でメインヒロインにはなれないんだよね。


「ルカ、俺明日から風花と別々で行くことにしたから」

「えぇ!?じゃあ私と登校できませんよ?」

「風花は彼氏と行くのに第三者の俺がいたら嫌がるだろ…」

「じゃあ明日からは私を迎えに来てください!」

「なんでそうなる……」

「お弁当作ってあげたんですからいいじゃないですかー!」

「猫だって恩返ししますよ!」

「分かった、分かったから!時間はいつも通りな」

「これで明日からも一緒に通えますねお兄ちゃん!」

 俺が振られてからいままで以上に懐いている気がする。

きっと同情されているんだよな……情けねえ。


「ごちそうさま」

「わぉ!綺麗に食べてくれましたね!嬉しいです」

「めっっっっっちゃくちゃ美味かった」

「綺麗に食べてくれる人は大好きです!」

「また作ってきてあげましょうか?」

「いいのか!?」

「はい!いいですよ、その代わりに私とこらからもご飯食べてくれますか?」

「あぁ!約束だ」

「えへへ、約束です!」


 俺とルカが約束をすると丁度良いタイミングで午後の授業を知らせる予鈴が鳴った。

ルカを2階まで送ったし俺も教室に戻って机に突っ伏して寝るか…。


「よく寝たな…ってまた放課後になってる」

「早く帰るか…」

 冬馬はリュックを背負い校門へと向かう。校門を抜けた所で丁度ルカと出会った。


「お兄ちゃんも今帰りですか?」

「寝ていたら放課後になっていてな。誰一人として起こしてくれなかった」

「お兄ちゃん…昔から一度寝たら中々起きなかったですもんね……」

「ルカはこんな時間まで何していたんだ?」

「待ち合わせです!」

「友達とか?」

「お兄ちゃんとですよ!」


「ルカ……一方的な待ち合わせは待ち伏せだぞ」

「こんなに可愛い子に待ってもらえるなんて無いですよ?」

「自分で言った。−25点」

「意地悪です…!」

「でも、1人で帰るのは寂しいからな。

ルカ帰ろうか」

「ツンデレなんですから!」

「気が変わった。1人で帰る」


「あぁぁぁ!嘘ですから、待ってください!」

 ルカは冬馬を待つために1時間待っていたのは内緒の話にしておこうと心の中で誓ったのだった。

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