第36話 国選依頼と一時加入メンバー
「……で、腹は決まったかよ」
「ああ、この
あの後、冒険者ギルドに引き返した俺は依頼票をベンウッドに差し出した。
俺が戻ってくることがわかっていたかのように、依頼カウンターにふんぞり返っているのを見ると、ここでずっと待っていたらしい。
まったく、他の冒険者がびびってるじゃないか。
「お前の夢を利用するようですまんな」
「まったくだ。でも、感謝してる。それで、他のパーティの
これも準備していたらしい、紙束が三つカウンターの前に投げ出される。
「役に立たんよ、これでは。特に『サンダーパイク』のはひどい。地下三階までしか進められていない上に、書式も報告内容もめちゃくちゃだ。配信だって見られたもんじゃない」
配信に関しては俺も知っている。
おそらく、都合の悪い部分をカットしているのだろうが、あれでは都合の悪いことを隠してるのが丸わかりだ。
「俺はやめとけって忠告したんだがな」
「後がないのさ、あいつらは。今は
「がた落ち?
「今回の
「俺の知ったことじゃない」
バカな幼馴染の浅慮に溜息を吐き出して、俺は別の話題を切り出す。
「そうだ、ベンウッド。
普通、パーティというのはおよそ5~6人で構成される。それより少なかったり多かったりすることもあるが、安全性と報酬のバランスがとれるのはその人数だ。
これまで四人でやってこれたのは
特に『クローバー』には斥候系の
多少無理をすれば俺が
やはり専門のメンバーが欲しい。
これについては、三人に了解をとった。
『四人で』とは言ったものの、それは『欠けることなくみんなで』という意味であり、人数が増える分には気にしないとのこと。
柔軟なことで助かる。
「それについてはママルから話があるってよ」
そう笑ったベンウッドが俺の背後を指さす。
「こんにちは、ユークさん」
背後には一人の女冒険者を連れたママルさんが笑顔で立っていた。
「『
「あ、はい」
ベンウッドに渡そうと持っていた『
「あの……?」
「こちらが
見た目は俺より少し下……マリナと同じくらい。
髪の毛と同じこげ茶色のピンと立った耳がなかなか愛らしい容貌で……服装からして、斥候職だろう。
「ママルさん?」
「ネネ、ご挨拶なさい」
「よ、よろしくお願いします」
どうにも元気がないというか、怯えてるというか。
「彼女は?」
「知人の子なんですけれど、ちょっと故郷でオイタが過ぎまして……。数年前から預かって性根を叩きなおしていたんです」
そりゃかわいそうに。
ママルさんに性根とやらを叩かれたら、きっと直る前に千切れてなくなるかしてしまうだろう。
「いま、失礼なことを考えませんでしたか?」
「まさか。それで……ネネさんは、希望ということでいいんですか?」
「全身全霊でがんばるっす」
「……」
なんだか事情がありそうだが……ママルさんの紹介であるなら、きっと腕は確かなのだろう。
「じゃ、こっちに。他のメンバーと顔合わせをして、それから
「行ってきなさい、ネネ。ユークさんに失礼のないようになさいね」
「はっ……はいっす!」
緊張した様子のネネを連れて、マリナ達が待つテーブルに向かう。
そこでは、必死に
「みんな、
「よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げるネネ。
ママルさんがそばに居ないせいか、少し緊張が解けたのかもしれない。
あの人がそばに居ると、ベンウッドすら落ち着かなさげにするからな。
「やった! 女の子だ!」
「よろしくお願いしますね」
「ねこみみ……!」
三者三様の反応だが、面接はいいのか。
まあ、俺がすればいいか……。
「ネネさん、座ってくれ。それで軽い自己紹介を。君のジョブと
「私はネネ・シルフィンドール……見ての通り
「元?」
「【天啓の覚書】を使ったっす」
なるほど。
実際、『戦士』から『騎士』に職能を変化させた奴も知っているし、そういう事もあるか。
「
「ええと……俺達は近日中に『
「……はいっす。それで地獄の日々から解放してもらえると聞いたっす」
その件について、詳しく聞くべきだろうか。
いや、今はいいか……。
「絶対にお役に立つので雇ってほしいっす!」
切羽詰まった様子のネネの気迫に押されつつ、俺達は斥候役の
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