第46話 この温もりを失わないように…
「……」
突然、俺の胸に頭を預けてきた初音に戸惑いながらも…恐る恐る、頭を撫でる。
「ん…」
初音が嫌がる所か、更に頭をぐりぐり…と押し付けてくる事に、内心ホッ…としつつ、頭を撫で続ける。
それから、どれくらい経っただろうか…。
「ねぇ…」
「ん?」
「明日…だったよね? 仮の交際が終わるの」
「…そうだな」
この1ヶ月…初音には、俺の色んな所を見せた。
家でのだらしない姿はもちろんの事、一緒に食事に行くときは、奢る事はなく…いつも割り勘だった。
俺が奢る時と言えば、誕生日やクリスマスといった、特別な日だけ。他にあるとすれば…自分が飲み物を買う時に、ついでに初音の分を買う時ぐらいだろう。
缶コーヒーの話だが…。
それと、俺は料理だってしないし、基本は朝食は取らない。昼にガッツリ食べ…夕食は、おにぎり1個と味噌汁ぐらいだ。
それを聞いた初音は、『朝食は食べないと駄目じゃない! いいわ、朝食は無理だけど、晩御飯は今度作りに行ってあげる!!』などと…言っていた。
少なくとも…俺の日常的に行なっている、悪い所は全て、初音に見せたはず。
最初は、初音に諦めさせようと、していたはずなんだけどな…。
今では、初音がもし、『やっぱり付き合うのはやめとく』と言われると思うと、怖くてたまらない。
ははは…俺…初音に、ガチ恋してるじゃないか。
もう…俺が初音から、離れたく、離したくないんだ。
それならーー
男の俺から、ちゃんと言葉で伝えないと駄目だよな?
今だけでいい。自分に自信を持って、動いて口を動かすんだ。
彼女をーー初音を離さない為に。
いつの間にか、胸から顔を離していた初音を抱き寄せる。安曇の急な行動に、一瞬体を強張らせるが…自分を抱きしめているのが、誰なのか思い出し、自らも両腕を彼の背中に回した。
「なぁ初音…俺さ…、自分が思っていた以上に、お前の事が好きみたいだ。こんな俺だけど…いつか、お前に相応しい男になってみせる。
だから…俺と…結婚を前提に付き合ってくれないか?」
結婚を前提には重いと思われるかもしれない。それでも…初音には、中途半端な気持ちで付き合いたくない。
「全く…遅いわよ」
「ごめん」
「私ね…安曇と、あの女が話しているのを聞いてたの。
あの女に取られるんじゃないかって…怖かった。
でも安曇は裏切らずに、私を選んだくれた。それが本当に嬉しかった。
だから…ね。私が離れないように、安曇のその手でいつまでも離さないでよね」
「大丈夫だ。離すつもりはないから」
この温もりを失わないように…俺の1番大事な人を失わないように、一生隣にいる。
そう心に誓いながら…お互いに温もりを求めるように、抱きしめ続けるのだった。
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まだ終わりじゃないよ!! 後3話? くらい続きます!
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