第44話 本性


 「な、何してるんですか!?」


 額から血が滲み…流れ、ポタポタと床を赤く汚す。


 ああ…フラフラする。


 …でも、おかげて思考がスッキリした。


 俺はズキズキ…と、痛む頭を押さえ金髪ギャルを睨みつけた。


 「服を着ろ、不愉快だ」


 「え…?」


 まるで何を言われたのか、理解出来ず呆然とする金髪ギャルに、苛立ちが募る。


 「お前の無事も確認したし、俺はもう帰るか。じゃあな、もう2度と会うこもないだろう」


 「ま、待ー『待たない』」


 金髪ギャルに投げたコートを拾い、部屋を出ようすると…。


 「待てって言ってんでしょうが!!」


 「あ?」


 苛立ちを隠そうとしない、その声に振り返ると…金髪ギャルが、酷く不機嫌な様子で、俺を睨んでいた。


 「さっきから何なのその態度。お前みたいなブ男は、大人しく私の思い通りに動けばいいのよ!!」


 「それがお前の本性か」


 前から感じていた違和感の正体はこれだったか…。


 まるで、作られた仮面のような性格だったし…今の方がお似合いだ。


 「私の言う通りに動いていれば、いい思いが出来たのに残念だったわね? まぁ…いいわ、今からでもいいから協力しなさい。まさか断るなんて言わないわよね?」


 「ハッ! お前みたいなビッチといい思いなんてこっちからお断りだわ! んで、協力? 馬鹿じゃないの? するわけないだろ?」


 「あらそう。いいのね? 断ればどうなっても知らないわよ?」


 そう言った、金髪ギャルの顔は酷い笑みをしており…何を考えているのか容易に想像できた。


 いいぜ? その自信たっぷりの顔を、絶望に落としてやる。


 「やってみろよ」


 そう言い放つと、金髪ギャルは不愉快そうに右眉を動かし…携帯を、俺に見せるように突き出した。


 その携帯には、110の数字が表示されていた。


 「このボタンを押せば、お前は豚小屋行きよ? これが最後のチャンス。

 私に協力しなさい。そして、初音をドン底に突き落とし…私がVtuberのトップに君臨に立つ!!」


 「ハッ! …くだらねぇ」


 「何ですって?」


 ああ、本当にくだらねぇ…。


 「他人をくだらない罠に嵌めて、トップに立とうとするのがくだらねぇ」


 「お前…!」


 「お前さ…心の中では、もうどう頑張っても初音に勝てないと思ったから、こんな汚い手を使おうと思ったんだよな?」


 「黙れ…」


 「まぁ…そうだよな。

 お前じゃ絶対に初音には勝てない。断言出来る」


 「黙れ…黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!」


 山本は、酷く苛立ったように…頭を掻きむしり、息を大きく吐き出した。


 「お前の気持ちはよ〜く分かった。そんなに豚小屋に行きたいなら、お望み通りしてあげる!!」


 「はーーい! そこまでー!!」


 山本が警察に通報しようとした時! 杠 琴音が大きな音を立てながら…入ってきた。


 そして…その後ろには、初音の姿も。


 「いやぁ、どうやら間に合ったみたいだね。それじゃあ私達も参加させてもらおうかな?」


 悪い笑みを浮かべ、そう言った杠に、まだまだ話は長くなりそうだと、察し…ため息を吐いた。

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