第27話 目覚め


 「ん…グア!」


 眼が覚めると共に、酷い頭痛が襲いかかり…頭を押さえた。


 頭が凄く痛ぇ…。


 しかも…。


 俺は、ぐるりと周りを見渡すと…知らない場所と知らないベットで眠っていた事に気がついた。


 確か、昨日は…赤谷と飲みに行って、それから……駄目だ。覚えてない。


 (見た感じホテルじゃないよな…?)


 そもそも、赤谷と一緒に飲んでいたし…アイツと一緒なら、俺の家に運んでくれると思うんだが、いったいどうゆうことだ?


 まさか、誘拐か…?


 いや、それならベットに寝かせる必要もないし…拘束していないのもおかしい。


 それにこのベット…少し良い匂いがする。


 まだ、眠気が残っていた事もあり…布団に顔を沈めていると、ドアが大きく開いた。


 「いい加減に起きな…さ…なッ! 何をしてるのよ!!」


 「は…? ハァ!?」


 布団に顔を沈めている所を、バッチリと初音に見られ…焦って顔を離し、ベットから飛び降りた。


 え? え? どゆこと!? 何でコイツ初音がここにいるんだ!?


 いや、本当に訳が分からない!!


 理解が追いつかず、頭を悩ませていると…いきなり初音に腕を掴まれた。


 「ちょっとこっちに来なさい!」


 「お、おい! グッ…」


 つい、大きな声を出してしまい…頭痛が酷くなりながらも、初音に引っ張られるまま、ついていくと、リビングにつき、テーブルの上には2人分の朝食…白米 味噌汁 サラダ 鮭 海苔が置かれていた。


 「そこでじっ…と、待ってなさい!」


 椅子に指を差しながら、キッチンに入って行く後ろ姿を見届け、言われた通り椅子に座った。


 眼を閉じ、頭痛に堪えていると…コトリ。と小さく音がし、眼を開けると水が入ったコップが置かれていた。


 「水を飲めば、少しはマシになるでしょ」


 暫く眼の前におかれた水を飲むか迷ったが…結局、このままでは話も聞ける状態ではない為、水を飲み込んだ。


 そうすると…頭痛が、少し和らいだ気がした。


 コップを置くと、向かいの椅子が引かれ…初音が座った。


 「まずは、朝食を食べるわよ! せっかく用意したんだから、残したら許さないんだから!!」


 「分かったから、大声を出さないでくれ…」


 本当に頭に響いて、余裕がないんだからな…。


 「そう、分かっているのならいいのよ」


 自分の箸を取り、サラダから食べ始める初音を見て、自分も置かれていた箸を取り…味噌汁が入ったお椀を持ち上げ、口に含んだ。


 …普通に美味いな。


 お腹が空いていた事もあり、次々と口に運んでいくと…何やら初音が「ふぅ〜ん」と言いながら、見つめていた。


 「食べづらいんだが?」


 「いいじゃない、用意したのは私なんだから」


 「…」


 そう言われれば、何も言えず…俺は居心地ご悪い中、素早く食べ終えた。


 「そんなに、急いで食べる程美味しかったのね」


 「…」


 何でだろう、ただ朝飯を食べただけなのに、凄く疲れた。


 しかも何でコイツ初音は、こんなに普通でいられるんだ…?


 最後にあった時は、俺が散々酷いことを言って、もう会うことはないと思っていたんだが…。


 あ…そうか。そうだよな。


 


 そうか…。そうか…。納得した。


 これが俺が望んでいた結果の筈だ。


 それでも、胸がこんなに苦しくなるのは、惚れた弱みなんだろう。


 …これ以上ここにいたら、駄目だな。


 「俺帰るわ。荷物どこ?」


 周りを見渡すと、ハンガーに掛かっていた、自分のコートが眼に入り…取ろうと、椅子から立ち上がると、後ろから肩を思いっきり押さえられ、立ち上がることが出来なかった。


 「は?」


 え? どうゆうこと?


 訳が分からず、後ろを見ると…ニッコリと笑った初音が、肩を押さえながら口を開いた。


 「絶対に逃さないって言ったわよね?」


 もしかして、昨日の俺…何かした?

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