第6話 優衣視点②
「あぁ…精神的に疲れた」
結局、あれから1時間も拘束され…色んな事を質問攻めにされた。
特に恋愛関係。
一瞬、コイツら俺の事を好きなのか? と思ったが…直ぐに考えを否定した。
一瞬でも自惚れた自分に、吐き気が込み上げる。
普通に考えて、イケメンでもなく、金もない俺を好きになるなんて、まず有り得ない。
もし仮に、仮の仮の話だが…あの出来事で俺の事を気になっているとしても、一時的な事だろう。
あれだ、吊り橋効果というやつだろう。
まぁ、今日で俺という人間の事は知っただろうから、もう会うこともないだろう。
少なくとも俺はそう思っていた…。
**********
優衣視点。
「それで? 愛しの彼に再会できた感想をどうぞ! はい!!」
「いや、別に愛しの彼じゃないし」
彼がいなくなった会議室のゴミ箱には、3人分のハンバーガーセットが捨てられていた。
琴音が言ったように、私達は可愛い。画面の中でもアイドルだけど、現実でもアイドルとしてやっていると自負してる。
琴音の性格はあれだけどね。
でも、だからこそ彼の自分には関係ない! みたいな態度が気にいらなかった。
今まで会ってきた男の人達は、私に近づこうとするばかりで、避けたり離れようとする男の人は彼が初めてで、興味を持ったのは事実だけど…好きかと言われると、それはない!
「私はそんな安い女じゃないんだよ!!」
「うお! 急にどうしたぁ!?」
つい、大きな声が出てしまい、空気を変えるように先払いをする。
「いや、何でもない」
「そう? でも結局、優衣お決まりの人見知りが発症して、あんまり話せなかったね〜」
「それは仕方ないじゃん! 私はそんな直ぐに誰とも仲良くなれる陽キャじゃないだからさぁ!!」
「そうだねぇ〜優衣ちゃんは懐いてくれたら、こ〜んなに可愛いのにねぇ、うりうりうり〜」
「ほっぺすりすりするなぁ〜!!」
何度も何度も擦り付けてくる、琴音の顔を手でどかし…少し熱くなった頬に手をあて、ついジト目で見てしまった。
その結果…。
「うへへへへ〜優衣たんは可愛いの〜可愛いの〜」
「ひっつくな〜! 暑苦しい!」
抱きついてきた琴音を引き剥がし、正気を戻す為、鼻息の荒い琴音の頭を叩いた。
結構強めに叩いたせいか、頭を暫く押さえ…ふと顔を上げた。
「優衣ちゃんは今日配信するの?」
「うん、そのつもり。最近は案件とか、彼を探すので忙しくて配信出来てなかったから」
初めての案件だから、完璧な形で成功させたいから、準備は万全にしておきたい。
ダンスの振り付けも頑張るぞ!!
両手を握りしめている、優衣に琴音は、こっそりと写真を撮った。
(うへへへへ…燃えている優衣ちゃんは珍しいですなぁ〜この写真も、私のコレクションに加えよ〜と)
「さっ! そうと決まれば今日はもう帰るね! 琴音! 今日はありがとう〜! また連絡するね!!」
「はいは〜い」
手を振りながら、会議室の部屋から去って行く優衣を見送り…扉が閉まると、手をゆっくりと下ろした。
「フフフフフ…優衣ちゃんの初恋になるかもしれない男が登場か〜、かなり気難しそうだったな〜まず、絶対に彼は動かないだろうねぇ…そうなると」
琴音は人差し指をクルクルと回し始め…暫くすると止まった。
「フフフ〜優衣ちゃんの為に、私が動きますかぁ〜その過程で、彼が私に惚れてしまったらごめんね? でもそんな男なら優衣ちゃん相応しくないもんね? ああ〜優衣ちゃん…もっと、色んな表情を私に、み・せ・て?」
琴音は恐ろしい程の笑みを浮かべ…会議室からスキップで出て行った、と…清掃スタッフは後日語った…。
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