第2話 解決?

 「もしもし、警察ですか?」


 「「「え?」」」


 俺の声と警察というワードが聞こえたのか、変態3人が振り返り…俺をパチパチと何度も瞬きをしながら見ていた。


 この変態3人は状況が理解できていないんだな。と予想出来たが…そんなのしらねぇ。


 「ええ、ええ、そうです。

女性に向かって土下座をし、踏んで下さいと言う変態です」


 淡々と警察に話す俺に焦ったのか、肥満体型の男が大声で近寄ってた。


 「ちょちょちょ!! 何してるんだ君ー!!」


 「場所は渋谷のーーーでーーーレストランの近くにある路地裏です。はい」


 「や、ヤバイんじゃない!? 言ってる事は間違ってないんだし!」


 「で、でもせっかく梅1.00ホーチュンスちゃんかもしれない人に会えたのに…」


 は? こんな所にホーチュンスがいるわけないだろ。妄想は外に出すんじゃねぇよ…


 肥満体型は眼をぐるぐると回し、平均的な体型の眼鏡をかけた1人は今にも逃げ出しそうにし…帽子を被った1人は名残惜しそうに、女性の方を何度もチラチラっと見ていた。


 「犯人の特徴は1人肥満体型で、青いジャンバーでーーー」


 「うわわわわわ!! 早く行こう!!」


 「ぅぅううう…ラビィットちゃん…」


 「おおおお、おい! 引っ張るなよ!! もう会えないかもしれーーーー」


 太っている男は、肥満体型の割に眼鏡をかけた男に引っ張られて俺達の視界から消えた。


 「あっ…今いなくなりました。はい、はい。すみません、お願いします」


 警察は念の為、近くを周回するとの事だった。


 俺は携帯を顔から離し、ズボンのポケットに入れた。


 (さて、問題はこの後なんだよな…)


 変態3人が消えて、心なしかホッ…と安心したように見えた。


 その反応を見て、俺はつい余計な事を言ってしまう。


 「安心するのは早い。助けに入った人の印象をよくする為や、繋がりを持つ為にあの3人を使ったのかもしれない。助けに入った奴でも信用はしない方がいいんじゃないか?」


 そう言うと、女性はジッ…と見て、立ち上がった。


 「どうも」


 お礼など特に期待してなかった俺は、そんな無愛想の反応も気にせず、問いかけた。


 「車持ちの信用できる人は呼べる?」


 「では、さようなら」


 スタスタと俺の横を通り、道に出ようとする女性に思わずため息を吐いた。


 (せっかく助けに入ったのに、また危ない目にあったら俺の行動の意味がないだろ…)


 「まだ、変態3人が諦めずにその辺にいるかもしれないんだぞ?」


 そう言うと、女性の足はピタリと止まり…振り向いた。


 ついさっきの事を思い出したのか、よく見れば足が小刻みに震えだした。


 我ながら嫌な事を言うと、自覚しながらも俺は1つの提案をした。


 「近くのセ◯ンイレブンに、座るスペースがあるから、そこで信用出来る人を呼んだらどうだ? そこまでは俺も一緒に行くし、1人よりはマシなんじゃないか?」


 女性が少し迷って、頷いたのを確認し…俺は路地裏から出た。


 ちょいちょい、後ろを確認しつつセ◯ンイレブンに着くと俺は女性から離れた。


 (ここまできたら、最後まで確認するか)


 俺はセ◯ンからココアを片手に外に出た。


 コーヒーやカフェオレにしなかったのは、もう遅い時間だからだ。


 窓から女性がどこかに電話しているのが見えた。


 恐らく信用できる人に向かいにきてもらうのだろう。



 それから20分ぐらいだろうか…?


 セ◯ンの駐車場に1台の赤い車が止まり、中から赤い髪のクール系な女性が降りて、セ◯ンの中に入り…黒髪ショートの女性に抱きついた。


 黒髪ショートの女性の笑みから察するに、きっとあの女性が信用できる人なのだろう。


 (んじゃ、俺はもういらないな)


 ここで見つかったら、変な疑いを持たれるかもしれないからな。


 堂々と見守っていいのはイケメンだけだ。


 よく聞くだろ? ただしイケメンに限る…と。


 俺はセ◯ンから離れ、Twitterを確認すると…梅1.00ホーチュンスの今日の配信があるトラブルで中止になったらしい。


 俺はイヤホンを片耳に付けて、近くの駅まで冷たい夜空の下を歩いていった。

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