仮想世界の星空アイドルとブラックサテライト

@Admiral293

プロローグ

「俺は今、何のために生きているのか。」

こんな問いをされたら黙ってしまうだろう。

昔は笑顔で溢れた表情も今となっては仮面を被ったように閉ざしてしまっている。

「いつも残業、いつも終電。ただただ変わり映えも無く辛い今を抜け出す勇気をください。」と何度と何も無いであろう空に願ったことか。だが、それは今叶おうとしているのだ。

いつも乗る列車で、日暮里駅9番線より発着する京浜東北線0:05発磯子行。ATOSが鳴り銀の車体とライトブルーのラインが見えた。

いつもの光景ではあるが1つ違った。それは俺の勇気だ。気がつくと足が前に動きだした。突然動きだした足に戸惑いつつも止めようとはしなかった。

「これで今を抜け出せる。」その一心だった。


しかしその一心はすぐに消え去る。


―ダメです!―


突然、女の子に腕を引っ張られた。女の子が引っ張った腕は体に逆方向の力を加え、ホームの方へと戻した。


その女の子は「良かった……。助けられた……。」と安堵している。

だが、俺は何のために勇気を出して踏み出したのか。これでまた逆戻りじゃないか。などと色んな感情が頭の中でぐるぐるし始めた。

「あの、何があったかわからないですが……その、何かいいことがあるはずです。なのでもう少し生きてみませんか!?」と星柄のキャスケットを被った女の子は言った。

その一言でハッとした。「あ、あの……」と声をかけようとしたがその女の子は消えていた。時計は0:15を指している。だが、腕の痛みは残っていた。


「あれはなんだったのか。夢なのか現実なのか。」

俺は分からなくなってしまった。だがただ1つ。またあの子に出会える気がしたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮想世界の星空アイドルとブラックサテライト @Admiral293

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る