第2話 博多さん

(あたし、気に入らん。あの田崎みゆって奴が気に入らん。あたしの好きな龍崎クンを取りやがって。絶対にくらす、くらしてやるばい…!)


「ねぇ!田崎さん!!あんたなんばしよーと!!!あんたのその態度気に食わんったい!」

「は?」


私は屋上へ上がる階段の上の手摺りに腰掛けて昼休みを邪魔してきた闖入者を見た。あれ誰だっけこの人。確かとなりのクラスのギャル、博多藍(はかたらん)。いや名前の主張激しいじゃん。


「決闘たい決闘、、、!!!あんたしばいてくらして泣かすけんね、、、!!!」

「おっけー」


博多さんはなぜかご立腹の様だけど決闘と聞いて引き下がれないのが田崎流。やったろうじゃん。そういやなんで怒ってるんだろう。なんていうんだっけこういうやつ。やつあたりか。やっつのあたりでやつあたり。


「ルールは簡単たい!先に」

「美味しい鯛の塩焼き作った方が勝ちねー」

「なんばいいよっと!?!?」

「え、料理できないの?」

「で、、、出来るし!!龍崎クンの為に結構練習したし!!」


さてみんな、一話を見てないという人は是非見てきてほしい。私が可愛い妹と鯛の塩焼きを作ってるのでそこで料理を復習しよう。


(え…、魚なんばして捌けばよかと?頭とか取ってよかと…?)


焦ってる博多さんを尻目に私はやるべき事をやる。おさらいしたからね。


そして塩を塗してあとは時間を置くだけという瞬間。事件は起きた。


「料理で勝負とかやめ!うちの剣技でぼてくりこかしたるたい!!!」

「ナイスタイミングじゃん!」


なんの下処理もしてない鯛をまな板に乗せたまま博多さんは西洋風の両手剣を背中の鞘から引き抜き、私の首があったところを一閃。私はその動きを読んでいたので危なげもなく避けた。


鯛に塩を馴染ませる為に必要なこの30分。博多さんがどこまで強いか知らないけど丁度良い時間潰しになりそ。


(どうやって避けたと…!?それ以前にうちの攻撃をどうやって読んだとね!?)


「今のはまぐれやろ!次はそうはいかんよ!!」

「んなら博多さんに見せてあげる、田崎流操刀術虎の型」


一拍ののち踏み込んでくる博多さんの刀を私は下からなぎ払い、右脚を相手の左脚前へ。


「虎皇(こおう)の一閃を奉る」

「…ッ!!!」

「今ここに猛虎の刀、成る!」


虚空に縦長の楕円を描く様に刀を薙ぎ相手の刀を弾きつつ胴に刃を叩き込んで完成。これが虎の型。私が2年前ほどにやっと型に出来た田崎流操刀術のカウンター技。


「…クッ!」

「これ食らってまだ立てるの?え?」


(なんこいつばり強か…!いかん負けとうない…!!あれ使うしか…!!)


「田崎さん…!うちを怒らせた罰たい…!!」

「この雰囲気は…!やば!なんか来る…!!」


博多さんは西洋剣を人差し指の上に立てて空に投げた。そして剣と、博多さんが呼応する。


「これが噂の福岡事変、見せたるばい博多魂!!」


玄界灘と脊振山脈、そして警固断層!!!

博多藍、一世一代の大技!!!

糸島の海鮮、八女の抹茶、祇園は山笠!!!


「えいこーめざしーはーばーたーけよー!それっ!」


博多さん自らも飛び上がって空中で剣を取り回転を掛けながら私目掛けて降ってくる。これは流石に私の未熟な虎じゃ防ぎ切らん…、悔しいけども。


「博多花一匁・脊振山夜景ぇぇ!!!!!」

「鶴刀の一閃を奉るッ!!!」


カッッッッ!!!


カラン。


崩れ落ちたのは博多さん。見事私は彼女の刀を躱し袈裟斬りを当てることに成功した。やったぜ。


「くっ、くやしか…!!!」


そしてぴったり30分。


「博多さん、今回は私の勝ちねー」


審査員はなぜか通りかかった龍崎虚空くん。名前のセンスやばいと思うんだけどどうだろう。


龍崎くんはなんの調理もされてない博多さんの鯛と私の香ばしい匂いを放つ鯛を見て今回の結果を出した。


「うん、藍ちゃんの勝ち」

「え?うそ?ほんと!?えへへ、うれしかー」


まぁそんな気がしたので良いとしよう。博多さんと龍崎くんが帰っていくのを見ながら私は空を見上げる。


「あぁ、もうすぐ冬だなぁ」


《続く》

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