アリの巣

コツ…コツ…コツ…

石造りの狭い廊下は少女たちの小さな足音を反響させた

暗い廊下には沢山の亀裂が入っており、ところによっては壁が崩れ中に入っている鉄の芯が見える

落ちた破片は大小さまざまにある


「わぁ!」

アンジュが瓦礫につまづいき、前のめりに倒れ込む

咄嗟に身を守ろうをランタンを手放し両腕を前に出した

「よっと!」

エルがアンジュのお腹を抱えて倒れないよう支え、宙に浮いたランタンを掴んだ

「ありがとうエル」

「どういたしまして」

アンジュは体制を立て直しエルからランタンを受け取る

「暗いから気をつけてね」

「うん」

アンジュは床を照らし歩き始める

「オリバーがいたら連れてきたかったなぁ」

エルはぼやいた

「確か考古学者を目指していて遺跡には興味があったんだよね」

アンジュの知るオリバーという少年はエルの弟だ

半年前にいなくなっていらい行方知れずだ

「きっとどこかにいるよ!案外近くにいたりしてね!」

アンジュは咄嗟にエルをフォローした

「帰ってきたら、もうこっぴどく叱ってやるんだから!」

エルは右拳を左の手のひらに強く打ち付ける

ビシッという音があたりに反響して広がった

「ふふふ、そうだね」

アンジュは笑いながら言った

エルは表面上怒っているように見せているようだがとっても心配している

「アンジュ半年前のあの日のことありがとうね」

エルの声が再び落ち着いた

「……」

アンジュは黙っていた

「あの日の寒さの中私一人で夜の森は流石に無謀だった」

「エルフっていう特別な生まれに過信していた」

「もしあのときアンジュが一緒にいてくれなかったら私は…」

アンジュはエルの唇に人差し指を当てる

「それ以上は言わないで…悲しい気持ちになっちゃうから」

アンジュは優しく囁いた

その声は不思議と落ちつく

「そうだね」

アリの巣のように張り巡らされた廊下を壁伝いに歩いた二人の足元に光が差し込む

「光…どうして?」

エルは疑問に思った

少なくとも今いる場所は地上から13メートルほどの地下にいるはずなのだから

二人は慎重に光の差し込む部屋を覗いた

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