エルフの少女

ラグドール

猫の中では割と太いシルエットが特徴的な体つきをしており

全身は白い毛に覆われているが顔と耳は小麦色ほどの茶色をしている

おとなしい性格のものが多く、その人形(ラグドール)のように愛くるしい見た目から愛好家の多い品種だ

アンジュの愛猫ペルセウスもそのラグドールだ

特徴的な猫なので見分けることは容易な方だ

しかし、広大な森の中で一匹の猫を探すのは容易なことではない


「エル…どう?何かわかりそう?」

アンジュはエルに尋ねる

「少し待っててね」

エルはそういうと両目を強く閉じた

目に周りの血管が太く浮き上がり血流のながれが集中する

そして

瞼を強く大きく広げた

大きく開いた瞳孔は隠された痕跡を炙り出した

林道を歩いた何人かの人間の足跡

生き物が通ってできた草の分け目

鳥が止まった際についた枝の傷が目に入ってくる


その中でエルは一箇所、気になるところを見つけた

木の根本に真新しい傷があった

引っ掻いたような傷は猫科の動物が爪を研いだものだ

「アンジュこれを見て」

エルは見つけた痕跡をアンジュに知らせた

「これって…」

アンジュが痕跡を見る

「まだペルセウスと決まったわけじゃないけど、少なくとも猫がさっきまでここにはいた」

エルはアンジュを元気付けた

さっきまで手がかりひとつなく困っていた表情が少しやわらいだ

「その…この後どこに行ったかはわかるの?」

アンジュはエルに尋ねた

「しっかり見える!小さくて可愛らしい肉球の跡が」

エルには柔らかい土の上にわずかにかかった、圧力のあとがはっきりと見えていた

「エルフってそんなことまでわかるの?」

アンジュはエルの瞳を覗いた

黒く大きく広がった瞳孔は魂を吸い込まれてしまいそうなくらい深かった

「まぁね」

エルはアンジュの手を取った

「どうやら道のないところを歩いたみたいだから気をつけないとね」

エルはアンジュの手を引き森の奥に向かった




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