冷たい雨の降った日
「どこにいるの!?オリバー返事をして!」
1人の少女が大きな声を上げてあたりの森に呼びかける
「…」
しかし返事などは返ってこなかった
冷たい雨がフードからこぼれ落ちる
もう何時間も外にいるのだろう
靴は雨に濡れて、唇が青くなっていた
手に持った心もとなく光るランタンは、まるで今の彼女の心の不安を表しているかのようだった。
「オリバー!お願い、いたら返事をして!」
少女の声は雨と森の葉がまるで拒むように隠した
足跡があった
少女は藁にもすがる思いでその足跡を見つめた
(…)
その足跡は彼女の欲しかった答えではなかった
靴の大きさから彼女の探している人物のものではなかったからだ
両膝をつきうなだれた
体が鉛のように重くなった
疲労が溜まり体力が底をついた
希望だけが彼女を動かしていた原動力だったが、時間が進むにつれて不安が心を蝕んでいった
(どこに行ったのオリバー…)
そのまま彼女は仰向けに倒れた
彼女は空を見上げた
涙が頬を伝いこぼれ落ちる
(雨なんて…大っ嫌いだ!)
厚い雲は空の光を奪い、音を乱し、匂いをかき消した。
疲れて立ち上がることができない彼女に駆け寄る足音が聞こえた
「エル!しっかりしてエル!」
1人の少女が倒れた少女の両肩を揺すり意識を確かめた
エルと呼ばれた少女は雨による疲弊のせいか反応が薄い
空から降り注ぐ雨、必死に呼びかける少女
これがあの日、エルが覚えていた最後の景色だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます