第22話 いきなりばれた正体と精霊の在処

 俺達が盗賊を倒して村人達からお礼を言われ、成り行きで倒しただけでお礼を言われるほどのことでもないと思っていると、先ほどから視線を感じていた。そっちの方をみると屈強な男と目があった。


「なあ、あの男と誰か知り合いか?」


 俺が尋ねると


「さぁ、知らないわよ」


「私もですわね」


「僕も」


 精霊たちも身に覚えがないようだ。


「あの人、響也さんの方を見てませんか?」


「まさか、ヴァイオレットの魔法で姿が変わってるんだし」


「前も言いましたように認識阻害の魔法をかけてるだけですから、魔法への抵抗力が強いとあまり効き目がないかもしれませんわ」


 ヴァイオレットが補足説明をしてくれたとき、屈強な男が近づいてきた。


「あの~、何か?」


「お前、響也だな」


 村人達がそれを聞いて、手配書のとかいって後ずさっている。


 俺は内心ドキッとしたが顔には出さず誤魔化すことにした。


「あの~、人違いでは?」


 それを聞いた屈強な男はサファイア達に視線を一瞬向け戻すと言った。


「いいや、間違いない。魔法で誤魔化そうがそいつが出すどくどくのにおいみたいなのは変わってないしな」


『みんな、臨戦態勢をとってくれ』


 念話でみんなに伝えたときに屈強な男が動いた。


(くるか。ここでやると村人達を巻き込んでしまう。やはりスキを見て逃げるか)


 屈強な男の様子を見てると両手を挙げた。


「まぁ、待て! 俺にお前らをどうこうするつもりはない」


「じゃぁ、どういうつもりだ?」


 俺が屈強な男に質問すると手のひらをおでこにやり


「ハ~、俺の事を覚えてないなんて泣けてくるじゃねえか、響也」


 俺はこのしゃべり方に覚えがあったので過去を振り向いてみた。


「お前、もしかして俺が騎士団長をやってたときにいつも模擬試合を挑んできたダストじゃないか」


「やっと思い出してくれたか。挑んではいつも返り討ちにあってたからな。いちいち待かした奴の顔をおぼえてないてか」


 俺は頭をかきながら


「あ~、悪いな。お前はアレキサンダーの部隊だったから、アレキサンダーをおいていい加減な俺が騎士団長なのが気にくわないのかと思ってたから・・・・・・それに、あの頃とはだいぶ体つきが違うから気づかなかったよ」


 俺はダストの体つきを見て言った。


「だいぶ鍛えたようだな。あの頃とは比べものにならないほど筋肉が付いてパワーもありそうだ」


「ちょ、ちょっと、悠長に話してる場合じゃないでしょ。アレキサンダーのところにいたなら敵でしょ。厄介なことになる前に逃げるわよ」


 サファイアに手を引っ張られ、強引に話が中断されようとしたとき、


「まぁ、待て。俺は敵じゃないよ。騎士もとっくにやめたしな。今じゃこの村の用心棒だ。お前たちのことは隊長から聞いて代々のことはわかってるつもりだ」


 サファイアは足を止め振り向いた。


「はぁ~!! 何でアレキサンダーがそんなことをいうのよ。やっぱりあんたたち繋がってるんじゃないの」


 サファイアの言うことはもっともだ。俺もダストの動きを注意深く見てると


「あれ、隊長、響也ならわかっってくれるみたいなことを言ってたのに通じてないよ」


 ダストは頭を抱えて蹲った。


「ねぇ、大丈夫?」


 サファイアが心配そうに顔を覗き込もうとしたら、ダストが急に立ち上がった。


「ウヒャー!!! 吃驚するじゃない」


「ウヒャーだって、サファイアのあんな驚き方見えただけでも儲けものだよ」


「そうね、後でこのネタで暫くからかって遊べますわ」


 後ろでヴァイオレット達が言ってるのが聞こえたのか、耳を真っ赤にしながら


「あいつら、覚えてなさいよ」


と、唇を尖らせて言っていた。


「隊長がなにも言ってないなら何か考えがあるんだろう。見た感じだとあと見つけてない精霊は二人まできたようだが、居場所は俺にも皆目見当がつかん。だが、そのうちの一人は響也のよく知ってるやつだ」


「誰だ、そいつは」


「それは、お前の目で確かめろ。でもあいつのことだ。近くにいるかもしれんぞ。お前をほおてくれるようなやつじゃないんでな」


「それってまさか・・・・・・」


 ダストは俺の問いに答えずに横を通り抜け手を振りながら


「もうそんなに時間がない。とりあえず城に迎え。あいつのことだ。必ずお前の力になりに来るよ」


 そう言って、村の中に去っていった。


 そして、俺たちは言われたとおりにしろに向かっていくのだった。

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精霊戦記 ~すべての精霊を集めて天下無双する~ tai-bo @taisetu

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