第11話 党首は雷の精霊!?

 俺たちはコイルの町に着くと党首が呼んでいるとのことで兵士の後に続いた。


しばらく進むと大きな建物があった。中にはいると兵士が機械のプレートを操作すると扉が開いた。


「中に入ったら上向きの矢印のボタンをおしてくれ。ここの最上階に党首はいる。ではご武運を」


「ま、待ってくれ。ご武運って何?」


 兵士に聞こうとしたら扉が閉まってしまった。不安になりながらも乗り物が上昇していった。


「それにしてもこんな便利な乗り物があるんだな」


「これはエレベーターっていう乗り物らしいですわ」


 俺の疑問にヴァイオレットが答えてくれた。


「ざっくり言いますと電気の力で好きなフロアで止まれるようですわ」


「へ~、あんた、色んなことを知ってるわね」


「あなたが馬鹿なだけです」


「な、何ですって~!!」


 また二人の言い合いが始まったが時間がないのでサファイアに助け船を出した。


「へ~、ってことは俺もバカってことだな、ヴァイオレット?」


「え、そ、そ、そんなこと言ってませんわ!」


「ヴァイオレットの慌て振りなんて珍しい物をみれるなんて響也、ナイスよ!」


 ヴァイオレットが顔を真っ赤にして、うぬぬっと唸っている。


 へ~、ヴァイオレットにもこんな一面があるんだな。サファイアに負けず可愛いじゃないか


「響也、い、今何て・・・・・・」


 もしかして心の声が聞こえるのか?


 俺は、


誤魔化すように言った。


「二人とも最上階に着いたようだぞ」


 ヴァイオレットは何か言いたそうな顔で、サファイアは怪訝な顔で女の感がといっていたがきかなかったことにした。


 扉が開くとフロアの向こうに豪華絢爛な扉が現れた。


「ん、誰かいるわね?」


サファイアの言うとおりスーツをビシッとキメた美女が立っていた。


「あなたが、党首かしら?」


「違います。私は秘書でございます」


 俺はある違和感に襲われていた。


 この秘書の気配、最近感じたような・・・・・・


「響也、どうかしたのですか?」


 ヴァイオレットに問いかけられ、考えるのをいったんやめた。


「いや、何でもないよ。党首に会うので緊張してるのかな」


「・・・・・・あなたの感じてることは直ぐに分かりますわ」


「それはどういう・・・・・・」


 俺は問いかけようとしたが、ヴァイオレットはサファイアのところに行ってしまった。


 秘書が扉をノックし


「党首様、お客様が来ました」


「入ってください!」


 秘書が扉を開け入るとソファーがあり、奥には垂れ幕があった。


「よく来てくださいました」


 垂れ幕の向こうから聞こえてきたようだ。


 この声の主がヴァイオレットの言ってた雷の精霊だろうか?


 その疑問は直ぐ解消されることになった。


「ティオ、あなたはそんな丁寧な口調じゃないしょう。忠告です。基の口調に戻さないと直ぐにボロが出ますわよ!」


 ヴァイオレットが言うと


「・・・・・・ちぇ、もうちょっと楽しませてよ。ヴァイオレットも空気読んでよね。だから闇属性なんじゃないの?」


「・・・・・・言いたいことはそれだけですか?では、あなたが二度と逆らえないように教育的指導ですわ」


「そんな事したら城に報告するからね」


「おい、ヴァイオレット落ち着け!そんな事しに来たわけじゃないだろ!」


「響也の言うとおりですわね。大人げなかったですわね」


「あの子、いいこと言うじゃない。気に入ったわ」


「ちょっ、サファイア、火に油を注ぐ様なことを言うな」


 ほら、見ろ。今までないような顔でこっちを睨んでるじゃないか


 ・・・・・・正直怖い


 俺は気を取り直すことにした。


「なぁヴァイオレット、あの子が雷の精霊か?」


「その通りですわ」


 その姿を見ると髪は黄色で短髪、背も小さく活発な子供みたいだった。


「キミ、何か失礼なことを考えてない?」


 その問いにドキッとしたが、サファイアも隣でビグッとなっていたから同じことを考えていたようだった。


「まぁ、いいや。僕は雷の精霊でヴァイオレットの友達さ。君達の大体のことは理解してるよ。僕と後ろに使えてる秘書は幻惑の魔法も効かないしね」


 そういや、ヴァイオレットは精霊か力がある物には聞かないって言ってたな


 そしてあることに気づいた。


「そうか・・・・・・俺達の後をつけてきてる気配があったがそこの秘書の仕業だな」


 しばらくして二人は笑っていた。


「さすがでございます。これでも腕には自信があったのですが・・・・・・」


「そうか、やっぱり気づいてたんだね。ヴァイオレットの言ったとおりだ」


「ヴァイオレットの?」


 俺はヴァイオレットの方を見た。


 ティオは話を続ける。


「君たちのことはヴァイオレットから聞いててね、人となりを知りたくて秘書に調査させてたんだ」


「ヴァイオレット、いつから」


「あなた方が私のもとにくる前からですわ」


 ヴァイオレットは自慢気にサファイアを見ていた。


「ぐぬぬぬ・・・・・・何かムカつく」


「安心していいよ。二人きりの時は、よくサファイアのことを楽しそうに喋ってたからね」


「へ~!」


 ヴァイオレットは顔を真っ赤にして


「余計なことを言わないでくださいまし!」


 アハハっとティオは笑って


「いいよ、君達に力を貸すよ。本当は試験みたいのをやろうと思ったんだけどつけてるのをばれてる地点でクリアしたようなものだからね」


「本当か?でもここの党首だったらおいそれと抜けられないんじゃ?」


「大丈夫!僕のひしょかんは有能だからね。たのんだよアリーゼ?」


 秘書官の名前がアリーゼと分かった。


「お任せください。ティオ」


 咄嗟に自分の上官を名前で呼んでるけど大丈夫なのかな


「じゃぁ、早速行こうかと言いたいんだけど、どうやら追っ手がそこまで来てるらしいんだよね」


「それ、やばいんじゃないの。この町の誰かが通報したんじゃないんでしょうね?」


「・・・・・・一度は聞き流すけど次はないからね」


 温厚そうだったティオの回りで電気がほとばしっている。


「私の親友のことを疑うのはこの口ですか?」


 ヴァイオレットがサファイアの口を抓っている。


「イタタタ・・・・・・ふぁにするのよ。痛いてば、謝るからごめんなさい!」


 サファイアが素直に謝っている。


「ティオ。どうか許してちょうだいね。この馬鹿は躾ておくから」


「俺からも頼むよ」


「別にいいよ。それよりここの地下道を通って町の外のキャンプ地まで行くからついて来て」


 俺達はティオの後をついて行くのだった。

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