第10話 暗躍する者たち

 時は、遡る。


響也たちが深淵の森をでた頃、一人の男が城内を歩いていた。


「くそっ!響也の奴があそこまで力をつけてるなんて。次会ったときは俺の手で決着をつけてやる!」


「フフ、無様ね、アレキサンダー」


「全くだ。それでも我ら四天王の一人で現騎士団長か!!」


「!? お前たちはシルフィードにゴンザレス、戻っていたのか?」


 そこにいたのはエルフの美女と筋肉質な大男だった。


「聞いたわよ。あの響也が裏切って聖剣まで取られたらしいじゃないの。あなた達は中がとても良かったから手心でも加えたのかしら・・・・・・もし、やりずらいようなら私が手伝ってあげようかしら?」


「いや、結構だ。次会ったときは油断も邁進もしない」


「そう、ならいいわ」


その時ゴンザレスが口を開いた。


「無駄話はそこまでにしておけ。それよりも王が呼んでいるぞ」


「それを早く言え!じょぁもう行くからな」


 アレキサンダーが歩き出すと


「さっきの話のようにもし何かあったら私達を呼ぶのよ~。どこにいても駆けづけるからね~」


 シルフィードが手を振りながら言っていた。


 俺は恩をきると言って王室に急いだ。




 王室をノックし、


「アレキサンダーですが・・・・・・」


「・・・・・・きたか。入れ!」


「ハッ、失礼します」


 中にはいると王が書類に目を通してるところだった。


「もう、終わるから娘の相手でもしててくれるか?」


「娘ですか?」


 目線を彷徨わせてると隣室から人影が現れた。


「これは姫殿下、いらっしゃたのですか?」


「何ですか?私がいたら悪いのですか?・・・・・・それに私のことはエリーゼと名前で呼んで下さいと言ってるじゃないですか?」


「そう言うわけにはいきません!」


「ハッ~相変わらずですね。響也は呼んでくれたのに」


「あいつがおかしいのです。それにあいつは今はお尋ね者です。姫殿下が無闇に名前を口にするものではありません」


 姫殿下が呆れたように溜め息をつくと


「分かりました!私の第一目標はあなたに名前を呼んでもらうことにします。覚悟してくださいね、アレキサンダー」


「・・・・・・お手柔らかにお願いします」


「話は終わったか?」


 その声に振り向くと王様が仕事を終えていた。


「お父様、すみません。久し振りにアレキサンダーとお話できたのがうれしくて」


「よいよい。お前の嬉しそうな顔が見れたことが嬉しくてな」


「まぁ、お父様たら~」


 姫殿下は頬に手を当てながら嬉しそうにしていた。


「それで、王よ。話とは?」


「ああ、そうだったな。話とは逆賊響也のことだ」


「すみません。此度の失態は如何様な罰でも」


 王様は手で話を遮り


「真面目すぎるのはお前の悪い癖だぞ、アレキサンダー」


「これは自分の性分なので」


 王様は呆れたようにため息を出し、


「まあよい。話を続けるぞ。響也はお前と戦った後、深淵の森で新たな聖剣ヴァイオレットを手に入れたようなのだ」


「ヴァイオレットと言うのは闇の精霊のことでしょうか?」


「よく知っているな」


「以前響也のやつと精霊について・・・・・・いえ、何でもありません」


「そ、そうか。話を続けるぞ」


 王様は怪訝に思いながらも話を続けることにした。


「そこでお前には電脳都市に言ってもらいたいのだ」


「電脳都市にですか?」


「そうだ。そこには雷の精霊がいるらしい。響也にこれ以上精霊を奪われないようにしれもらいたいのだ。手段は問わん。万が一精霊をとられていた場合は構わん。精霊ごと響也を倒してくれ!」


 王様のお願いにアレキサンダーは暫し考えてから


「分かりました。せめて俺の手で響也を倒します」


「そうか、引き受けてくれるか。それでこそ四天王の一人というものだ。今回はエリーゼも連れてってもらいたい」


「姫殿下をですか?」


「不服そうですね。それに私のことはエリーゼとお呼びくださいといったはずですけど?」


「そう言うわけには・・・・・・」


 姫殿下は膨れっ面になったと思ったら「もういいです」とへそを曲げていた。


「まぁ、そういってくれるな。これでもエリーゼは聖剣と渡り合えるほどの力を


持っているのだ」


「姫殿下がですか!?」


私は驚かずにはいられなかった。


「ああ、そうだ。エリーゼは聖剣と対をなす魔剣の力を持っているのだ」


「何ですと!魔剣は魔王とごく一部の魔族にしか使えないはずでは?」


「その通りだ。だが、今はその説明をしている時間はない。直ちに響也を討伐する準備が出来次第出発してくれ」


「分かりました。直ちに。では姫殿・・・・・・いや、エリーゼ、準備が整い次第城門でお待ちしております」


「は、はい。では後ほど、アレキサンダー」


 そうしてアレキサンダーが部屋を出て行くのを見送ると二人の雰囲気が変わった。


「・・・・・・相変わらず気づいてなさそうだな、エリーゼ」


「どうやらその通りですねお父様。とっくにこの城は魔族の物になってるとも知らずに忠義を尽くして見方のはずの響也を倒してくれるらしい」


「お父様、いえ、魔王様」


「よせ、城の中ではお父様でよい。我が娘よ。・・・・・・まぁ、このことを知らないのはアレキサンダーと城の下っ端の兵士ぐらいだがな」


 魔王がほくそ笑んでいる。


「まぁ~お父様ったら。ということは今回私がアレキサンダーと一緒に行くのは?」


「察しがいいな。さっきも言ったとおりこのことを知らないのはアレキサンダーとごくわずかだけだ。他の四天王も協力的だしな。おまえに頼みたいことはアレキサンダーのお目付役だ。私が魔王であることは炎の精霊サファイアのはばれている。おそらく響也にも話してる可能性が高い。アレキサンダーが響也と戦ってるうちにそのことに気付く可能性もある。そこでお前なのだ。魔剣であるお前は最も近いところにいるだろう。最悪の場合記憶もいじれるからな・・・・・・


おっと、長く話しすぎたな。もう行け。アレキサンダーも準備が終わって待っているはずだ。頼んだぞ、エリーゼ!」


「分かりましたわ。ではお父様、行って参ります」


 エリーゼは踵をかえして王室を後にして響也討伐の任に赴くのだった。

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