綺麗な嘘
しばらくと思考をぐるぐると回して歩いていたらこちらに気がついたようだった。
「どうしたの。今帰り。」
何事もなかったごとくこちらに話しかけた。
「……そうだよ。少しだけ調べ物をしていたらこんなに遅くなった。」
悟られないようにいつもの口調で話す。
「そっか、ねえ仲良くやってるの。日芳理さんと。そうだったら私は…嬉しいよ。」
琥珀はそう言いながら顔を背ける。
「悪かったよ。その色々と。」
さっき言えなかった事を伝えた。これで償えるとは到底思ってはいないがせめてこれだけは言いたかった。
「…もう良いよ。それに私だってよくよく考えれば悪かったしその暴言吐いちゃったし。私自身我がままな部分あったから。」
それからは特には会話がなくただただ帰り道を歩いていた。前までは隣に居てくれるだけで楽しかったが今はもう埋めることが出来ない溝が出来てしまった。琥珀は良いと言ってくれたが内心はこんなに屑の人間を蔑んでいるだろう。…それぐらい今の自分は屑だ。そんな事を考えてあるいていた。
「じゃあね…。大希。」
琥珀は岐路に立ってそういう言った。ここからは方向が別々なのでもうこの空気ともさよならだろう。
「…え。琥珀……なんで泣いてるの。」
琥珀の目尻には沢山の粒があった。
「……え。違うよ。…その。もう嫌。」
と言って帰るべきはずの方向とは逆に走っていった。僕は追いかけるべきなのだろうか……。いやそうなのだろう。僕は考えるのを放棄して探しに行った。
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