さよなら
もう戻れない事はとっくの昔に知っていた。…しかもこうして一緒にいてくれる日芳理に愛想つかれるのが怖かった。
「怖いんですよね。知ってます。琥珀さんが愛想つかれて去って行ったのがトラウマになってるのですね。」
「怖い。あの雰囲気が。」
「もう大丈夫です。私がトラウマを払ってあげます。だから安心してください私は絶対に愛想をつきません。だって昔からずっと好きだったので。」
日芳理の声はいつも以上に優しく柔らかく聞こえた。そしてなんだか軽くなった。
「そういえば何でそうなったの。」
僕は前からこんなに日芳理に好かれるのが謎だった。あんまり接点がなかったから。
「そうですね。全て終わったらお話しします。 その時まで秘密です。でも今は幸せですね。」
そう言ってまた笑った。
「もうそろそろ…帰るか。」
立ち上がると日芳理はそっぽを向いて腕を掴んだ。
「…えっ。もう帰るのですか。あ、もうこんな時間楽しい時間はあっという間ですね。あわ、ごめんなさいなんか手を掴んで。」
玄関に出て帰る時に日芳理は来て見送りをしてくれた。
「さよなら。」
この言葉は日に日に嫌いになっていた。だって嫌な日を思い出してしまうから。…うんなんだろう。僕は見間違いだと信じ込んだ。…いやあれは間違いない琥珀だ。話しかけてたいと思ったがどう話題を展開すれば良いい。このまま逃げてさっきの二の舞になるのか。…そんなのは嫌だ。だけどこの現実のまま話しかけてもまた溝が入るだろう。…どうすれば良いのだろう……。琥珀が目の前にいると頭が真っ白になってしまう。
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