悲しみの空洞

大学が終わり帰る途中だった。

「あ、今から帰るんですか。」

そう尋ね出来たのは日芳理さんだった。…正直言って一人で帰りたい。……まだ昨日の出来事が彷彿される。突き放したいがそんな勇気もない。

「今日は一人で帰りたい。」

「そうですか。…でも私が好きなようにしますので。さあ道草して、帰ります。」

そうして好き勝手と称して同じ道を辿る。…心の底からやめて欲しい。だが突き放すこともできない。

数分の沈黙があった。何だろう沈黙が嫌だ。

「……さっきから何で黙ってるんですか。何かありましたね。」

「はーそうだよ。」

僕は何度も聞く日芳理さんに呆れたので仕方なく話す。開き直った。…なんでもう一度思い出さなきゃならんのか。

「ふむむ。なるほどだから今日は一段と元気がなかったんですね。悲しみを飛ばし消せないという感じでしょうか。相変わらずネチネチしてますね。」

日芳理さんは一言が多い。もう心を抉らないで。

「だってさ…ね。仲良くしたかった…それができなくなってしまって…。」

「…要するに空洞が出来てしまったと。じゃあ私が埋めてあげます。」

「……はい。」

少し意味が分からないので聞き返す。

「もうどれだけ鈍感なんですか。私の渾身の比喩表現でしたのに。…さあ答えてもらいますか。もう逃さないですからね。猶予をあげます。大希さんが家に着くまでにはですかね。」

僕は必死に考えた色々な事を…そして答えたく無かったので足を遅くした。何かの間違いで日芳理さん帰らないかな。そんな淡い期待を浮かべた。

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