糸と珠

琥珀が帰りしばらくの間気持ちを整えようとぼーとしていた。正直言って本当に謝れたのだろうか。今でも琥珀の声が耳にへばりついている。忘れたいのに。ため息が出てしまう。

「どうしかしましたか。」

その声に思わずびっくりしてしまう。

「もう嫌ですね。そんなに驚いて。らしくない顔をしていますがどうかしましたか。」

日芳理さんはそう聞いてくる。何か私情を話すのが悪いと罪悪感が湧いてきてしまう。

「こんな事聞かせても悪いから。」

思わずため息が出てきた。情けない自分に。

「何でこうなったんだ。」

それは自分でも理由がよく分かっていた…ただ嘆きたかった。できる事なら過去からやり直したい。

「…大希さん。お二人のに珠が出来たのでは無いのでしょうか。色々と人は事情があって誰にでも良くあることなんです。だから大希さんは琥珀さんを傷つけた事をずっと引きずっている。…優しいんですね。」

「…いや違うどちらかと言えば…僕は我がままだ。だから今も考えている。自分が楽になるため。」

そう現実を受け止めてさらに気持ちは落ち込んだ。…何ですれ違いが出来始めに色々とやれる事があっただろう。何故そのままにしていた。僕は失望した。

「過ぎたことをいつまでも思っててもですよ。さてと昨日の答え出ましたか。もし良ければ聞かせて下さいください。」

「今はちょっと心が乱れているからね。それにさ色々あるんだよ。」

今は琥珀の事を考えてしまっているからそんな事を考えている暇はなかった。

「…むう。まあ何度でも言いますよ。だって私は諦めが悪いのが取り柄なんですから。」

ふと笑ってしまう。久しぶりに笑った様に思えた。

「それは短所じゃ。」

「あー今小馬鹿にしましたね。まあ貴方が笑ってくれれば私は嬉しいです。良かった。」

「じゃあこれで。」

「私もご同行します。…なんか楽しそうですし。」

来るなと言ったがなんだかんだでついて来る。……僕に一つの不安があった。


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