3.オリジナルアニメの「チャレンジャー精神」と、品質

 今期もいくつか存在する「オリジナルアニメ」ですが、これが結構安定感と「尖り」を感じるものが多かったです。


 『星合の空』は一話の中盤からもう既にずしっと重い物を感じますが、それをただ重いだけにしない話のうまさがある気配(でも重くて滅入りそうですが)がありましたし、『歌舞伎町シャーロック』は超凄いという感じではない一方で「何だろうこれ」「これはどうなんだ……受けるのか?少なくとも斬新ではあるが」という感想を覚えました。今のところまあまあ受けは良いようなので、斬新さは良い武器なんだなと再確認しました。『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』もシリアスとコミカルのバランスがいい良作の気配がしました(個人的には一番「化けそう」なのは三つの中ではこれかなぁという感じがします)。


 どれも共通しているのは「安定感がある」ことと「尖り」があることがしっかり両立されている事でしょうか。よくこの二つは両立出来ないと言われていますが、個人的には全くそんなことは無いと思ってます。これらの作品はいずれも独特な世界観を持っていますが、全て「きちんと楽しめる話」を持っています。もっと曖昧な言葉で言うなら「悪い部分でも及第点を超えている」という感じ。


 この辺りは「小説家になろう」出の作品とある意味で対比出来て、オリジナルアニメーションはいわば「放送前のファン」が少ないです。新海誠監督のような「最新作が出るだけでニュースになる」人ならば話は別ですが、基本的には「オリジナルアニメーション」というのはファンが少ない状況からスタートしがちです。

 

 対して「小説家になろう」作品は、書籍化の際に既にファンを多く抱えています(だから確実に売れるというロジック)。スタートの時点でファンが居る作品が売れやすい(これに関しては議論が尽きないところだとは思いますが)とするならば、スタートの時点でファンが少ないのは、まず見てもらい、そして「高評価を貰う」必要があるわけです。


 そのせいなのか、シナリオはきちんとしているものが殆どでした。やっぱり、土台がない事は理解しているんですかね。でも、それを意識すればいい作品が出せるなら、大賞受賞作を良い作品にすることも出来るんじゃないかと思うんですけどね。アニメ業界だけにいい人材が超集中しているということも無いでしょうし。不思議なものです。

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