第6話
俺は「ひろきは見たと言ったが、おれはなにも見なかった」と答えた。
それでもしつこく聞いてくるやつもいたが、なにも見ていないのだからなにも答えられない。
そのうちに、ひろきが見た女とさやが見た女が同じ容貌の気味の悪い女であること、女がいつも廃家の前に立っていたことが明確になった。
そこで今度は、あの廃家はいったいなんなんだ、という話題で盛り上がった。
何年も廃家だが、これまで心霊スポットという扱いはされてこなかったのだが。
「あそこで殺人事件が起こったんだぜ」
とか言い出すやつもいたが、廃家の近所から通ってきている同級生によると、そんな話はぜんぜん聞いたことがないと言う。
どうやら最後に住んでいた人が病院で亡くなった後、誰も住む者がいなくなっただけみたいで、あの家で死んだものは誰もいないようだ。
「それじゃあひろきとさやは、どこに行ったんだ?」
と聞いた者がいたが、それは誰一人答えることができなかった。
あれからしばらくたったが、ひろきもさやも見つからないままだ。
同じ学校の同級生が二人続けていなくなったため、二人の関連性を考える人もいたが、二人はただの同級生というだけで、仲が良かったわけではなく、ほとんど話をしたこともないというのがみんなの共通した認識だった。
そして不気味な女のほうはそれ以上に話題に上がり、幽霊だの宇宙人だの、そもそもそんな女は最初からいなかっただのいろんな話が飛び交ったが、ただそれだけだ。
女がなんだったのかを明確にできる者は誰もいなかった。
そのうちに夏休みとなり、話題が途絶えた。
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