第5話

「あんたこそ頭、おかしいんじゃない」


女。ひろきが見たと言う女のことか。


少なくとも会話の内容は、俺とひろきと全く同じだ。


二人は言いあっていたが、互いに諦めたのかそのうちに静かになった。



次の日に学校に行くと、今度はさやとみさきが口論していた。さやが言う。


「だからあそこに気味の悪い女がいたのよ。間違いなく」


「そんな女なんて、いなかったわよ」


さやが見たと言い、みさきは見てないと言う。


昨日と同じだ。


まいがみさきに変わっただけだ。


まいは二人のやり取りを、少し離れた場所でいかにも面倒くさいと言った顔で見ていた。


さやが「もういい!」と叫び、口論は唐突に終わった。



次の日に、先生がみんなに告げた。


さやが今朝から見当たらなくなったと言うことを。


教室にどよめきが起こった。


ひろきに次いで二人目だからだ。


そのうちにさやが見たと言う女が関係しているのではないかと言う噂がたった。


まいとみさきに話を聞くものが何人かいたが、その度に二人とも「そんな女はいなかった」と反発した。


そこで俺が「ひろきも女を見たと言っていた」と言い出したものだから、騒ぎはさらに大きくなり、学校中に広まった。


俺のところに同じ学校なのに俺が全く知らない連中が、話を聞きに来た。

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