第4話

ひろきがそう言うので俺は「見えない」と答えた。


ひろきはしばらく何も言わなかったが、やがて口を開いた。


「また突然いなくなった」


俺は「そうか」と返した。


それ以上言うことはない。



次の日、学校に行くと、先生から話があった。


どうも今朝から、ひろきがいなくなってしまったそうだ。


親も警察も捜しているとのことだ。


なにか知っていることがあれば言ってくれと言っていたが、それに返答をするものは誰もいなかった。


俺はひろきが見たと言う女のことが頭に浮かんだが、それをどう伝えたらよいのかまるで思いつかず、結局なにも言わなかった。



数日経ったが、ひろきはいまだに見つからない。


そんなある日、学校へ行くと教室の中が騒がしかった。


同級生のさやとまいが口論しているのだ。


いつもは登下校を一緒にするほどの仲なのに。


二人の周りを数人が取り囲んでいる。


なんだろうと思い、近づいて聴いてみた。さやが言った。


「だから、変な女がいたって言ってるでしょう。さっきから同じこと何度も言わせないでよ。」


まいが返す。


「いや、女なんていなかったわよ」


「あんた、目がおかしいんじゃない」

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