第19話

 びっくりした!すごくびっくりした。


 そんなこんなで、今は大人しくギルベルトの隣に居る。正直ちょっと怖かった。ちょっとだけね!


 あんなに可愛かったけど、あれは『モコイ』と言って毒を持っているらしい。弱い子どもなんかに近づいてきて噛み付いて、血を吸うんだって。毒があって解毒しないと、弱いものだと死んでしまうんだってさ……。怖いよ。危なかったよ。


 ギルベルトは僕を全然怒らなかった、僕が「大丈夫だよ」って言っても聞いてくれなくて、全身くまなく確認されて、ようやく無事を確認し終わったら、今度は謝られた。

 「ちゃんと危険な物を教えておくべきだった、ごめんね。何も無くて本当に良かった」


 って何度も謝られて、チュッチュが止まらなくて、ギルベルトが泣いちゃうんじゃないかって言う位、僕の事を抱きしめて離さないから、僕も、あのギザギザの口を思い出して、また少しだけ怖くなっちゃって、ちょっとだけ泣いちゃったかも……。


 ギルベルトに心配をかけないように、ちゃんと考えて行動しなきゃな。


 僕の方こそごめんなさい!本当にごめんね。




 肝が冷えた……。ジェネシスがハニーの側に付いていたが故に、大事には至らなかったが。

 それはそうと、見た目ですっかり失念しそうになるが、ハニーは流石にやはり男なのだな。ハッハッハッ。木を登っていたぞ!

 

 水遊びをしているハニーの姿を、ずっと凝視してしまうだろうと分かりきっている為、ハニーの着替えを用意したりと、ハニーに気を向けながらあれやこれやしていたら、ふと水音が聞こえなくなり湖へと目を向けた。

 ハニーが一本の木へとゆっくり近づいて行く所だった、モコイだ!

 

 モコイは、赤子や子ども、弱い生き物にしか近づいて行かない。俺やジェネシスの側に居れば、間違いなく近づいては来ない、大人の姿をみると逃げて行く様な弱い生き物だが、厄介な事に毒を持っているのだ。

 うっかり失念していた。俺とした事がハニーを危険な目に合わせてしまう!


 嬉々として木を登るハニーの元へ走った。危なかった、間一髪だった。


 ジェネシスがハニーの側で、モコイに目を光らせていたが故に、モコイに悪さをさせること無くジェネシスに喰われて事が終わった。


 そして俺の腕の中にハニーが戻って来てくれた。良かった。何事も無くて本当に良かった。


 それにしても、モコイがハニーの前に姿を表したとなると、それ程までにハニーが弱い存在なのか。それとも、モコイをも魅了してしまうのか……。


 定かではないが、常々目は離せないと言うことだな。


 あぁ。それにしても、ハニーは思いもよらない事をしてくれる!案外溌剌たる性格である事が分かったな!新たな発見だ!

 

 本当になんと可憐なハニーなのだろうか。

 

 危険な目には合わせたくない。しかし活動的な面を潰したくはない。

 

 悩ましいハニーだ。ずっとこうして抱きしめていたいのに。それではハニーが退屈してしまうだろう。あぁ。何とも悩ましい。




 それから、ギルベルトを手伝いながら隣に居たら、ガタガタと音が聞こえて来た。さりげなくギルベルトが僕を隠してローブを着せた。

 大きな荷車をヴォールク二匹が引いて湖の方へ向かって来た。

 

 ドラニクル国で商店をやっているというおじいさんとおじさんだった。家族で店を経営していて、買い付けの帰りだって。

 ギルベルトも知り合いみたい。


 沢山仕入れて来たんだな。荷車が重そうにギシギシ言ってる。

 


 良い人そうだった。僕も、今度お店に行ってみたいな。どんな物が売ってるんだろう。


 今日はこの場所で一緒に宿泊だ。







 


 

 


 

 

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