第14話

 ハニーが、とにかく愛らしい。


 テントの準備をキラキラする目で見ていたり、自分も何かするから言って欲しい。と、俺が作業する隣で、俺の手元をじっと見て、たまに手助けしてくれる。


 幕を留める杭を、隣でコンコンする姿や、手で何度も布団をふかふか繰り返す姿、川で水を汲む時に、手をパシャパシャする姿、焼ける肉をじっと見張る姿。


 二人だけの生活、ワクワクが溢れている!愛しさが止まらない!


 ハニーの存在に全身全霊で感謝だ!



 ハニーは、ジェネシスに乗り慣れていない為、スピードは出さず進んでいるが、ジェネシスも理解しているようで、揺れも少ない。そんな配慮を見せるのも驚きだ。


 ゆっくりの行程故に、予定していた日程よりもかかりそうだが、諸々の準備は、十分過ぎるほど整えたので、まず問題はないだろう。


 ハニーには、ドラニクルに到着するまで快適に過ごしてもらいたい。


 ハニーの中での俺の功績の為にも。


 

 辺りの暗闇がこわいのかい?

大丈夫。心細くなっても、俺が護るよ。心配しないで。


 この腕の中にずっと閉じ込めてしまいたい。全ての危険から遠ざけたい。

 ハニーにはいつも笑っていて欲しい。

 

 俺の番。俺のすべて。




 俺に興味を示してくれたハニーの、俺への評価が喜ばしい物で、ついつい図に乗って話しすぎてしまった。今日は疲れただろう。もう眠ってしまったな。


 起こさないよう寝衣に着替えさせよう。


 全てのリボンをシュルっと解く。白く柔らかな肌が覗く。

俺はもうこの肌の甘さを知ってしまった。


 寝ているのを良い事に、愛らしく彩りを添える、2つの飾りから目が離せない。堪らない。控えめな様子も良いが、どんな様子で花開くのか……。

 

 ハッ!いかんいかん風邪を引かせてしまう。


 グフッ。なんと!用意した寝衣の、薄く柔らかい生地が、ハニーの肌をうっすらと透けさせて……けしからん姿が出来上がった。これもまた想像の遥かに上をいっている。


 俺以外の奴に見られたら危険だ!抱きしめて隠しておかなければ!


 おい!愚息よ、鎮まれ。馬鹿者。まだ今はその時じゃない!




 朝方、ハニーが動いたので、起きたのかと腕をゆるめた。

 油断していた俺は、まともに、あの危険極まりない、ハニーのふにゃっと笑顔をくらってしまった。

 グハッ。起きてはいないのか。

 布団にスリスリしている。


 だが、それから俺の腕を自分の身体に巻き付けるようにして、俺の身体の下へ下へ潜り込もうと擦り寄って来る。

 

 組み敷いてしまっても良いのかい?責任はもちろん取るよ。ハニー


 ゴフッ。正気を保たねば。ふざけた事を考えた己を拳で黙らせた。


 俺の脚の間に、ハニーの細い脚が差し込まれている!


 

 ダメだ、ダメだ!ダメだ!!あの鬼の訓練を思い出せ!!


 ハニーが起きるまでに鎮めろー!

鎮まれ!愚息よ。お前はまったく手のかかる奴だな!!


 あぁぁぁ。なんという恩賞なのだ。ハニーが俺の上で寝始めたでは無いか。


 胸にじんわりと広がる暖かさ。これこそが愛の暖かさだ。胸に愛が広がっていく。


 ありがとうハニー。愛をありがとう。




「ギルベルト、おはよ」


 この日は、すでに朝から、壊れた残念イケメンが出来上がっていたのだった。
























 



 


 

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