第9話

 出発準備を整え。と言っても全部ギルベルトが整えてくれっちゃったから。

 何が起こったのか分からない手際で着せられた服を、今ようやく確認してるんだけども……。

 リボンが多くない?いろんなとこにリボンが付いてる。

 ギルベルト服のチョイス間違ってるよ。急いで買ってきて揃えてくれたから、たまたま紛れちゃったんだな……。うっかりさんなのか?まぁ仕方ない着れればいっか。


 そんなギルベルトは

 「食堂に注文していた食料を取りに行ってくるね」


 と僕全体をじっと見てから頭にチュッっとして、口元を手で隠しながら部屋を出ていった。

 笑ったのか!自分のチョイスの問題だよ!


 (グハッ。想像を遥かに超える仕上がりだ!そのリボン解くのも、もちろん俺にさせてね)

 なんて事を想像し、にやける顔を不自然にならない様に隠したつもりの仕草だった。




 ギルベルトが部屋を出て行ってすぐに、キンコーン。キンコーン。と何やら音が聞こえ始めた。え?どこから?何の音?キョロキョロ部屋を見渡して、ピカピカと光っている物が目に入った。

 (あっこれいつもギルベルトが腕にしてるやつだ)

 とりあえず手に取ったら


 「おっはようございまーっす!」


 と、やたらテンションの高い声がして、発した当人であろう人物の姿が部屋の中に映し出された。

 へ?

 おもいっきりのぽかーんだ。なに?これなに?え?だれ?


 「あら?隊長?わぁお。かわい子ちゃんに繋がっちゃった、えっへへーラッキー!キミ名前は?黒目、黒髪なんて、はじめてお目にかかるよ。口、開きっぱなしだよハハッ。かっわいいなぁ。ねぇねぇ名前教えてくれなぁい?ボクの名前はぁ……」


 「さあ。出発しよう!」


 ギルベルトの出現により、今度は、ぽかーんとギルベルトを見る事になる。


 部屋に戻って来たギルベルトに、映像の人物から隠すかの様に一瞬でガバッと抱っこされ、頭を胸に軽く押し付けられている。

 (危険人物だったのか?やだこわい)


「おっ隊長おはよっすー!ちょっとーそのかわい子ちゃん誰っすかー?隠さないでくださいよーぜひー紹介して貰いたいっすけどー」


 むぐっ。頭を押さえる手が強くなった。


 「朝っぱらから喧しい。何の用だ」


 「用ってかー確認?昨日の連絡で何だか気になることを言ってたとかでーボクがみんなを代表してー連絡した所でー」


 「ふん。どうせ賭けに負けて押し付けられただけだろうが」


 「わぁお。バレてたー。そんでーそんでー本当に見つかったんっすか?番ちゃん」


 「あぁ。当然だ。だから帰国するのだからな」


 「わぁお。帰ったら隊みんなでお祝いしなきゃー!どれだけこの春を待ち侘びてきた事か!よかったっすねー!長かったっすねー!おめでとうございますっすー!ちなみにーさっきのかわい子ちゃんがー?」


 「ああそうだ」


 「くぅー!こりゃあ一大事だ!みんなに知らせるっすー!あ!隊長お気を付けて御帰還くださいっすーんじゃ!」


 「おい!ランバーあまり騒ぐな……よ」


 パシュ。突然話が終わらされ、一瞬で静寂が戻る。


 とりあえず終わったのかな……。知り合いだったみたいだ、それにしても、とてもにぎやかな人だった。


 「うるさいヤツが急にビックリさせたね。申し訳ない。さあ出発しようか」


 そのままのポジションで頭をなでなで、ほっぺにチュッチュ。

 僕。コクっ。


 あれ?これテンプレになりつつある?

 

 




 


 


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