第5話

 「ギルベルト……さん」


 「さん。なんてつけないで、ただギルベルトとよんで欲しいな」


  いつの間にかベッドに腰をかけている。あれ?距離が近く無いかな?

 今度は恭しく手を掬い上げられ手の甲にチュッとされた。


 「まだ少し熱があるな、何か食べられそうかな?用意してあるんだ。食べられるだけ食べたらまた休むといい、高熱で3日も魘されていたんだよ、身体はまだ辛いはずだ。」


 世話をするのが当たり前の様に、おでこに手を当て、頬にキスをし、背中にクッションを挟み、頭のてっぺんにキスをし……。

 何かする度にキスを当然のように挟んでくる。知らない人の筈なのに全然嫌じゃない。不思議な人だな。涙は知らないうちに止まっていた。

 

 ぼーっとしていたら、器用にあれこれ準備をしてくれている間の動きを、ずっと目で追ってしまっていたみたいだ。

 フワッと笑われてしまった。また頭にチュッとされた。優しく頭をぽんぽんされ


 「さあ!何が食べられそうかな?食べたいのを言ってくれる?まずは水分を取ったほうが良いね」


 痒い所に手が届く、をまさに体現したもてなしで、唯一やった事と言ったら口をパカッと開けて、モグモグごっくん。だけだった。何でこうなったんだっけ?


 


 (さぁ、これからだぞ。先程はあまりの愛くるしさに我を忘れたが、もう大丈夫だ同じ過ちは犯さないさ。可愛がって可愛がって、可愛がり尽くす!!そして全てを委ねさせる!これだ!!聞きたい事は沢山あるが、まずは自分という人間に害の無いことを分かって貰わねば!全て身を任せてくれ!!)


 

 

 ギルベルトの策略に、まんまと流された結果の出来事だったのであった。


 




 

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