第三章 生徒会文化祭準備合宿 5

長いようで短いこの生徒会文化祭準備合宿も今夜で終わり。

明日は帰宅の準備をして、帰ることになっている。

この合宿で青春のイベントみたいなものを殆ど制覇したし、水坂先輩とのいざこざも色々と前に進んだ。

そして何より楽しかった。

そして今日もバーベキューをしている時に、渡木会長が言った。


「皆さんお、疲れ様!」


渡木会長は、手に持ったカクテル(ノンアルコール)の杯を上に上げて乾杯の音頭をする。

この合宿で度々このカクテルを飲むのだが、物凄く美味しい。

側で、バーテンダーのような人が頼むと作ってくれる。

将来、二十歳になったらアルコール入りのカクテルにハマってしまいそうだ。


「どうだっかな皆?楽しかったよね?」


そう楽しそうに聞いてくる渡木会長に僕は言った。

火ノ元先輩と金瀬先輩がもじもじしているのでそう行動したのだ。


「始まりはともかく、とっても楽しかったですよ。こんなに楽しいこと尽くしで面白くなかったなんて言えるはずがないですよ」


「…(こくこく)」


金瀬先輩も少し楽しそうに頷いていた。

僕の言葉に続いて、火ノ元先輩が言う。


「けれど、渡木会長。これは水坂先輩のおかげですからね!我が物顔でそんなことを言うもんじゃないですよ」


「本当ですよ」


水坂先輩はそう言って、カクテルを口に含んだ。

渡木会長は本当に、子供みたいなところがあるなあ。


「まあ、そうだな!ありがとう瑠泉!」


それぞれ、水坂先輩に感謝を伝える。


「いえいえ、私も楽しめましたし、全然いいんですよ」


本当に水坂先輩がいなければこんな体験はできなかった。

これから、何かの形で返していけるだろうか。

そう考えながら、僕達はBBQを楽しんだ。


「さて、そろそろこれをやるか!」


渡木会長が取り出したのは手持ち花火だった。


「いいですね。是非やりましょうか」


「…(こくこく)」


大きな袋に入った手持ち花火をそれぞれ取り出して、BBQの残り火から火をつけて楽しむ。

すすき、スパーク、手筒、絵型、たこおどり、あばれん棒、そして線香花火。

締めには小さな打ち上げ花火も打ち上げた。

それぞれさまざまな色の光を発しては、形を変え、花咲くような美しい姿を見せて、やがて消えていく。

僕はしみじみと思った事を言葉にする。


「こんなに楽しいゴールデンウィークを過ごしてしまったら、きっと夏休みは退屈になってしまいそうですね」


打ち上げられる花火は勢いよく上がって、綺麗に散った。


「そうかもしれませんね」


少し、クスッと水坂先輩は笑った。

水坂先輩も同じ気持ちなのだろうか。


「そんなことはないぞ土井君!」


僕の言葉に反応した渡木会長が言う。


「これを超える夏休みを作るのだよ!夏休み中ずっとみんなで生徒会室に泊まるというのはどうだろうか!」


「それはやめて下さい!」


そんなの僕の理性が保てないよ。

そんなことを言っちゃ駄目だと、今度渡木会長にキチンと話した方がいいかもしれない。


「というか、渡木会長と水坂先輩は受験勉強をしなくていいんですか?」


火ノ元先輩が二人にそう聞いた。

渡木会長と水坂先輩は三年生なので夏休みは勉強が必要なのではないだろうか。


「なんで?推薦余裕で通るだろうし大丈夫じゃないの?」


「ええ、まあそうですね」


あー。

僕が言うのもなんだけど、ここの先輩達も色々規格外なんだよなぁ。


「まあ、それはまた文化祭が終わったら考えましょうよ。今は片付けをしませんか?」


「そうだね!あー楽しかった!」


僕がそう言うと、皆が同意して片付けをしようとする。


「…あ、あの!」


金瀬先輩が今までに聞いた事がないくらいの声で、僕達を引き止める。

そして、少し詰まったようにした後、口を開いた。


「…私、望遠鏡を持ってきているんで、…天体観測をしませんか?」


そう言って、金瀬先輩の側の荷物から、望遠鏡を入れた箱が取り出された。


「おお、凄いですね!」


僕は思わず感心してしまった。

こんな綺麗な夜景を望遠鏡で見れるだなんて。


「流石だよ金瀬ちゃん!是非やろう」


僕達は、望遠鏡を金瀬先輩の指示通りにセットした。


「これでよし」


僕の知る形になった望遠鏡を金瀬先輩は覗く。 

火ノ元先輩は携帯で方角を調べていた。

僕はその姿を見た後、星空を眺めた。

東の空には夏の大三角形が見えていた。


「やっぱ綺麗ですね」


「そうだね」


僕達は順番に望遠鏡から天体を覗いた。

西の空には沢山の天体があり、ベテルギウス、カペラ、カストル、ポルックスなどを僕は確認できた。

冬の大三角形もある。

こんな経験はこれ以降する事ができるだろうか?


「何あれ」


渡木会長の声に僕は空を見た。

なんだか大きな流れ星のようなものが落ちていたのだ。


「あれ、UFOじゃない⁈」


渡木会長が声を上げる。

僕はUFOという単語に体に電流が走って、渡木会長を押しのけて、それを確認した。


「…⁈」


はっきりととわかるくらいにUFOだった。

テレビや創作で見るまんまのUFOを僕が目視した後に、やがて消える。


「…あ、すいません渡木会長」


僕は渡木会長に謝ってもう一度空を見上げる。

僕はアイツの顔を思い浮かべていた。


・・・


ゴールデンウィークが終わって学校が再開する。

学校の中では、ゴールデンウィークの思い出について談笑する人達で廊下は溢れかえっていた。

その人たちの間を通り抜けて僕は自分の教室に向かう。

今朝、柊から返事が返ってきていた。

「大丈夫だったか?」、その言葉から始まっていた。

僕は扉を開く。


「よう流星、久しぶりだな。どうだった?ハーレムのようなゴールデンウィークは?」


「そんな言い方をするんじゃないよ」


僕は席に近いて、自分の席に座る。


「なあ、聞いてもいいか?」


「何を」


「お前はエイリアンなんだよな?」


「そうだな」


「…」


僕は少し思考を巡らせて言う。


「それについていろんな事を教えてくれないか?」


「入学式の日に色々教えたはずだが?」


「そういえばそうだったな…。じゃあ…」


僕は少し息を吐いた。


「お前の故郷とかさ」


柊は僕の言葉を聞いて、こう言った。


「…すまない、それはできない」

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