第一章 桜と百合の咲き乱れるこの学校で 4
「…さてと。まずは貴方の身体をじっくり見させてもらいましょうかね。男性の身体を見るのは初めてなんです…//」
「ぎゃあああああ!犯されるううううう!」
普通、立ち場が逆なんじゃないかと脳裏をよぎったがすぐに僕は冷静さを失われてしまった。
僕は早く逃げようと…!
「⁈」
「無駄ですよ。貴方の座っているソファにわかりづらいでしょうけどトリモチを準備させていただきました。楽しませていただきますよ」
「ひいいいいい!」
水坂さんは僕の制服のボタンを一つ一つ外していく。
非常にまずい。
このままだと、水坂さんに食べられてしまう(性的な意味で)。
何か逃げ出す方法はないのか⁈
紅茶で滑りをよくしたりは…駄目だ僕と水坂さんの両方が火傷をしてしまう。
「さて、そろそろご対面ですね。…フフフフフ」
「ああああああ!」
もう駄目だ、どうしようもない。
最後のボタンが外され…。
「ただいまー!」
「「⁈」」
よかった、助かるぞ!
ひょっとすると、神はいるのかもしれない。
「あの…!フゴッ⁈」
水坂さんは僕の口の中に、机の上のマカロンを沢山突っ込んだ。
そしてもの凄い早さで僕の服装を元に戻していく。
なるほど、確かに生徒会副会長がこんな行為に及んでいたとなればこの学校は騒ぎになるだろう。
…ふう、一命をとりとめたと言ったところか…。
「…えい!」
「…⁈」
水坂さんは僕の右手を優しくとって、自分の胸に押しつけた。
凄く柔らかいなぁ…じゃない!
水坂さんは素早い動きでポケットからスマホを取り出すと何か携帯を操作して携帯を投げた。
投げた携帯から、パシャリ、と音が鳴る。
「あ。瑠泉先輩、土井君とお茶していたのか」
水坂さんは素早く振り返る。
僕も自分を助けてくれるであろう人を見た。
そこにいたのは、入学式の日に見た巨乳…ではなく、生徒会の人だった。
髪型とかはボーイッシュなのに、その巨大なモノっていうギャップが凄い。
僕はその人に助けを求めようと、口の中のマカロンを噛み砕く。
味を感じている暇がなかった、少し残念。
僕は流し込む為に急いで紅茶をとった。
「ええ、あの件でね。花奏…、いえ生徒会長は大丈夫なの?」
そう言いながら、水坂さんはスマホの画面を僕に見せつけてくる。
その画面には、いかにも僕が水坂さんに襲いかかっているような感じに写っていた。
そして水坂さんは自分の唇に人差し指をあてる。
なんて恐ろしい人だ。
あの一瞬で冷静かつ俊敏にこんなことを思いついて行動するとは。
また、その仕草が可愛いのが複雑だ。
「ええ。無理矢理だとか危険な事はしなさそうだったから放置してきました。コスプレもせずちゃんと制服で行きましたからね」
ここに無理矢理だとか危険な事を僕にした人がいるんですが、助けてくれませんかね?
「緋音(あかね)さんも随分と会長の事が分かるようになってきましたね。少し嬉しいです」
すると緋音さんと呼ばれた人は少しそっぽを向いて言った。
「べ、別に勘違いしないで下さい!あの人を放置しておいたら大変な事になる事が多いからですよ」
「はいはい」
おっと、緋音さんはツンデレなんですね。
可愛いじゃないですか。
「そういえば、土井さん。紹介が遅れました。生徒会書記の火ノ元緋音(ひのもと あかね)です。どうぞ、よろしく」
火ノ元さんは深めに頭を下げた。
なんだこの人、めちゃくちゃいい人じゃないか。
「あ、はい。ご丁寧にどうも」
お互いに少し深めに頭を下げる。
自分の事は生徒会では知られているようなので、言う必要はなさそうだ。
というか、挨拶する時に立ち上がったけど、トリモチがいつの間にかなくなっていて、すんなり立ち上がれた。
僕の身嗜みも完全に元に戻っている。
水坂さん、この人何者だ?
手際の凄さが半端ない。
「それで、瑠泉さん。彼に話したんですか?」
「ええ。生徒会に入ってもらえるかどうか、今聞こうと思ったのよ。そこで丁度貴方が来たわ」
あれ?
他に大切な事を言ってないような気がしますね…。
「それは失礼しました。それで土井さん。生徒会に入ってもらえますか?」
真剣な眼差しでこちらを見てくる火ノ元さん。
「…そ、そうですね」
今の僕に断るという選択肢はない。
万が一それで、水坂さんがあの写真をネットにばら撒いたら僕は社会的に死んでしまう。
僕が悪くなくても、両親に多大な迷惑をかけてしまうだろう。
水坂さんも生徒会を断るだけで、そんな事をしないと信じたいけれども。
かといって、このまま入ると、また襲われてしまう。
ああ、水坂さんの顔が獲物を目の前にした狼みたいになっているよ。
…だったら。
ここでの最善策は…!
「すいません。少しお時間いただけませんか?一応、他の部活も見てみたいですし、あと見学期間も明日と明後日があるはずなんでしっかり考えたいです」
どうだ!
これが僕が導き出した完璧な答えだ…!
これで、水坂先輩は僕を脅すこともできまい。
「そう言われたら仕方ないですね。瑠泉さんもそれでいいですか?」
「ええ、構いませんよ」
よかった、成功した。
助かったよ…。
「では、じっくり考えてくれ。紅茶とお菓子が残っているな。まあ、ゆっくりしていってくれよ土井君。私はこの事を生徒会長に知らせて…」
「いえ!結構です!僕この後用事がありますので!」
このまま居座り続けたら、また水坂さんと二人きりになってしまう。
ここは逃げるのが得策だ。
「失礼しました!」
とりあえず、これからは水坂さんと密室で二人きりになるのはやめておこうと、僕は深く心に刻んだ…。
・・・
生徒会室を出た後、僕は教室に向かっていた。
教室に自分の荷物を置きっぱなしだし、身の危険から早く解放されたい。
早く柊と帰ろう。
僕はポケットからスマホを取り出し、柊に電話をかけた。
部活を回っているだろうから、少ししたらに出るだろう。
柊にこの事件の解決について相談しよう。
「あれ?」
柊は電話に出なかった。
電源が切られている訳ではなさそうだが、何かあったのだろうか?
「……」
僕は渡り廊下を歩きながら考える。
僕がこれからするべき行動は何か。
水坂さんの携帯の写真の完全な削除、もしくは何かしらのマウントをとる。
その二つになるだろう。
後者は不可能に近い。
だから、水坂さんの写真の削除方法を柊と考えよう。
一瞬、もうすでに拡散された可能性も考えたが、悪い人には見えないだろうし、万が一警察が捜査に入るとなると、僕の制服に水坂さんの指紋が出てくるはずだ。
伊達に刑事ドラマを見ていない。
多趣味でよかった…。
「?」
一年二組の教室につくと、僕は何か不審に思った。
放課後になると、いつも扉は開いているのに今日は閉まっている。
扉の向かいの窓の前で女子二人が何か話していた。
「…ん、んんんっ!」
教室の中から小さな呻き声が聞こえた。
ひょっとして、まさかのいじめ⁈
誰かは知らないかもだけど、助けてあげなきゃ!
僕は教室の扉に走り寄ってを勢いよく開いた。
「…柊⁈」
中で縄で拘束された柊が十数人の女子に囲まれていた。
その光景を見ると同時に僕は、勢いよく背中から強い衝撃を受けて、意識を失った。
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