004 勇者、助かる。

あまり時間をかけられないのでな、そう呟くと、スキャンダルは杖に魔力を込める。男の力量を察し、最大量の魔力を。


スキャンダルの杖は素人でもわかるほど禍々しい魔力を帯びているのだが、男は全く動じない。ひょうひょうとした態度を維持している。武器も手に取らない。あくびまじりスキャンダルを見つめていた。しかし明らかな殺気を放っている。


「悪いが消えてもらうぞっ!傲慢な炎アロガンス・フレイムっ!」


山一つ消し飛ばすような炎が場を包み込む。男は炎の中心にいる。周りの地形を変えるような灼熱である。


「うん。焚火は危ないよ。」


その声が、スキャンダルが聞く最後の音となった。


「お師匠、村長さんが…。なにかありましたか?」


パタパタと走ってきたぬいぐるみを抱える少女が、燃えている草を見て、尋ねる。


「いや、ちょっと焚火をしている人を見つけてね。危ないから消したところなんだ。それより、村長さんがどうかしたのかい?」


男は少女に尋ねると、少女は思い出したように用件を伝えていた。


「何っ!スキャンダルからの通信が途絶えたじゃと!あやつ、裏切りよったか。」


部下からの報告に、テラーが怒りに任せて魔法を展開する。スキャンダルを探そうと、探索魔法を使うが、反応がない。


「くうっ!こざかしい真似をしよって、隠蔽魔法かっ!」


探索魔法は、対象の魔力を感知することのできる魔法であり、テラーの使うそれは、全世界をカバーするほど強大である。しかし隠蔽もなにも本当に反応がなくなっているだけなのだが、テラーをはじめ部下の誰一人、そのことに気づくことはなかった。


「追ってを差し向けよ!地の果てまでも追い詰めるのじゃ!」


絶対に達成できない命令が下された。哀れにも、それに従う部下であった。

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