003 勇者、狙われる。

悪の侵攻は、勇者の誕生により士気が高まった国防軍によって、かなり抑えられている。勇者が冒険を始めるのは14歳からなので、あと10年近く耐えなければいけないわけだが、今までの数十年に比べれば、なんてことはない。


「くうっ!せっかく前勇者のあざを消し去り、我が世の到来と思うておったのに。」


テラーは悔しがり、テーブルをたたく。その音に呼び出されるかのように、一人の女性が姿を現した。


「テラー様、お呼びで。」


女性の名前はスキャンダル。テラー率いる悪の軍団でナンバー5を務める猛者である。


「前回と同様じゃ!勇者の少年からあざを消し去るのじゃ!」


仰せのままに、そう呟くと、スキャンダルは姿を消した。スキャンダルは小さな村々を走り抜け、バナナの村へ向かっている。


「うわっ!」


目の前に現れた何かにぶつかり、スキャンダルは吹き飛ばされる。ただ吹き飛ばされただけなのに、HPの半分を削られた。


「何だ!」


警戒するスキャンダルをよそに、一人の男性がこちらへ歩いてくる。スキャンダルは魔法の準備をするが、男性は頭を掻きながら話しかけてきた。


「やあ、お嬢さん。すまない、ケガはなかったかい。実はこんな山奥に人がいるとは思わなくて、スキルの練習をしていたんだ。ほら、最近物騒だろ。」


ひょうひょうとした態度で話しかける男。しかしその目には明らかな警戒心が宿っている。


「先を急ぐのでな、失礼する。」


スキャンダルが慌ててその場を離れようとするが、男が呼び止める。


「待ちなよ。悪のお嬢さん。僕と遊んでいかないかい?」

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