第2話
放課後、私は昨日のように廊下を歩いていた。だが、その足取りはとても重い、どれくらい重いかと言うと、足に100㎏の重りをつけているかのようだ。
その重い足を引きずりながら昨日痴話喧嘩を目撃した裏庭に向かっている。
昨日池に落ちた男子生徒は、まぁ、最初見たときから分かっていたけど私と同い年でこの国の第一王子でした。池に落ちた殿下はそのまま自力で這い上がり私の顔をバッチリ見てから早足で去っていきました。
この国の第一王子様としがない伯爵令嬢、もう関わることはないだろうと思いを私もその場を後にして家族と楽しい晩餐を頂き今日あったことなど頭から綺麗さっぱり消して幸せな気持ちで床についたのですが朝普段どおり登校すると机の中に一通の封筒が‥‥
そしてまぁ、お分かりだと思いますが呼び出しですよねー、はぁ、帰りたい、一応無視も考えましたよ?理由としては私みたいなしがない伯爵令嬢に殿下からの手紙なんか来るはずありませんもの、どうせいたずらでしょ?それではさようならオホホみたいなやつ、しかーし!!手紙にはちゃっかり来なければ王宮に招待しちゃうよ?みたいな脅し文句があったので仕方なく仕方なーく!!行くことにしたのだ‥‥これだから身分差社会は‥‥
「来たか!!」
私が裏庭に到着すると殿下はすでにベンチに座っており私を見るなり立ち上がった。
相変わらずとても素晴らしい容姿をされていると感心する。昨日の醜態で忘れがちだがこの方はかなり人気がある、整った容姿に勉学や体術、剣術など他を寄せ付けない圧倒的な成績を維持しており、さらにこの学園に通う高位の貴族子息令嬢が在籍している生徒会それも生徒会長、普段から何事にも揺るがず冷静に対処し、その瞳から発する絶対零度の視線で相手を萎縮させることから氷の王子と影で呼ばれている。
その王子様のはずなのだが‥‥
「まぁ、座れ、あ、いや、座ってくれますか?昨日はそ、そのごめんなさい」
と普段なら絶対に見ることのない下向きな態度で言葉を発しながら私を自身の隣へと促して来た
え?隣に座るの?
誰が?私が?
むり、絶対むり!!
でも一国の王子が、普段は冷静沈着で何事も動じず鋭い視線で群がる令嬢達を蹴散らし、氷の王子とまで言われてる人があんな捨てられた子犬のような目で言ってるなんて…くっ!!私が犬好きなのを知っての行動なの!?
「だ、駄目ですか…?」
殿下はなかなか動かない私を見てとうとう目尻涙を溜めながら再度訪ねてきた。
くそ!!
普段澄ましてるクールキャラなのに!!
そんな顔をされたら…
「くっ…か、畏まりました。失礼致します」
観念した私は渋々殿下の座る反対側の縁に腰を下ろした。私が腰を下ろすと先程まで不安でいっぱいだった殿下の顔はまるで咲き誇る向日葵畑のようにぱっと輝いた。
あ、これ、遊んでもらえるとわかった犬の顔だ…
尻尾があったらぶんぶん振ってそう…
はぁ、犬モフりたい
ちなみに我が家は母が動物嫌いな為動物は飼えない。なのでよく学園や行き先で見つけるワンちゃん達と戯れるのが密かな楽しみなのだ。
「あ、改めて!!ぼ、あ、いや、俺の名はアルノルド・アルスードだ、おま、い、いや、君は?」
だが、母が動物嫌いなのは小さい頃に犬に襲われたとかなんとか言っていた。
だから、犬が一番嫌いで私が遊んで来た日などは敏感に察知し、使用人に命じて全身フル洗いするまで家の中に入れてもらえない。
ヒドくない?私乙女だよ?
冬とか寒空の下水をぶっかけられるんだよ?
「お、おい、聞いているのか?」
使用人もさ、前は伯爵令嬢の私に水をぶっかけるのに抵抗があってね?優しく水で流すようにしてたのよ?それがさ〜、いつの間にかバケツをフルスイングしてぶっかけてくるんだよ?おかしくない?いくらお母様(父は母に説得され了承)が許可を出したからって自分が仕えている主人の娘に水ぶっかける?何度も注意されても聞かない私が悪いんだけど…
「あの〜?聞いてますか?もしも〜し?」
つかあんなかわいい生き物をモフらないなんて神が許しても私が許さないから!!
あ〜早く領地に帰りたい…
「お〜い…聞いて?俺の声聞いて〜?」
領地には私が10歳の誕生日に必死にお強請りしたドックハウスがあり、領地に帰ると私はそこで過ごしている。もちろん領地にある屋敷とは離れておりそこでならお母様も何も言わない
はぁ〜早く会いたい〜
「これは、聞いてないね…はは…僕みたいな最低野郎の言葉なんて聞く価値ありませんもね?はは、はぁー…」
「あ、」
空の見上げ領地にいる愛犬達のことを思い出していたらうっかり隣にいた殿下の存在を忘れていた。
見るとベンチから降りて地面に座り雑草を弄くり回すこの国の王子がいた…
えっと…ごめんなさい…
伯爵令嬢の恋愛相談室 伊佐波瑞希 @harukikouhei
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